最強召喚術師、荒野をゼロから開拓する!~万物召喚チートでサクッと最強の村を創ります~

榊原モンショー

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15.古風な一軒家の時空召喚②

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「ゥガウ! ゥガウガウ!! ガガガガゥ!!」

『アォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 筋肉狼マッスルウルフは突如場に漂い始めた魔法力を警戒するように周りへ声を共鳴させた。

「本当、こっちが悲しくなるほどの魔法力量ね」

 それは、リリシアですら思わず目を疑うほどのものだった。

「召喚術師がハズレ職だなんて言い出したの誰よ。あんなのただの、バケモノ・・・・じゃない」

 レアルの周りを包む魔法力量は、とても一般人のそれを大きく超越していた。
 レアルの魔法力から呼び出されたのは先ほどまでいつでも崩壊しかねないほどの汚らしい一軒家、ではなく。

 かつて綺麗だった頃の家を丸ごと現世に呼び出したかのような――。

「ウガゥッ!」

『ウヴァォォォォォォォォォンッッ!!』

 レアルが新たに円状術式を展開し始めたのを見計らった筋肉狼マッスルウルフが飛びかかろうとするのを、リリシアは何度も剣で払いのけていく。

 ピキッ。

 音を立てて剣にヒビが入る。

「もう少し。もう少しだけ、もちなさい……!」

 度重なる連戦と長旅の疲労で上手く動かなくなりつつある身体に鞭を打って、リリシアは――。

「炎属性魔法力付与エンチャント!」

 剣にありったけの炎属性の魔法力を注ぎ込む。
 勢いのまま、周りの全てを薙ぎ払うほどのリリシアの全力魔法だ。
 剣先から青白い炎が揺らめき、熱で空気が大きく揺れる。

「これでも……!!」

 剣を覆う炎の勢いに任せて、大きく横薙ぎに振るおうとした、その時だった。

「――――…………」

「オンナ、タオス? オオカミ、タオス?」

 森の奥に人影が見えた。

「なっ……ひ、人!?」

 リリシアが振るおうとしていた炎の剣が、大きく空を切った――。
 
●●●

「ガルルガ邸宅、召喚成功!」

 ツタも埃も消え去り、つい先日まで人が住んでいたかと思うほどに生活感のある家が現れた。
 だが、余韻に浸っている時間など微塵もない。

 レアルは瞬時に、用意していた次の魔法力で家全体を大きく包み込む。
 見慣れた通常召喚用の円状術式に、遠隔召喚の特殊術式を組み合わせた混合型だ。

「大丈夫、行けるはずだ。石を召喚した時の要領を思い出せば……!」

 イメージは、アルダン領を出る寸前にシミュレーションした小石の遠隔召喚。
 向こうから召喚対象を呼ぶのではなく、こちらごと指定した召喚地点へ飛ぶ、『転移魔法』の一種。

 ぐわんっ。

 家を囲んだ術式文字列が歪み、現れたばかりの一軒家が眩く光り出す。
 時空召喚よりも早々と完成させた術式に、レアルは素早く乗り込んだ。

「転移準備完了! リリシア!!」

 建て付けのよくなった扉をすぐさま開いた。

 レアルは声を張り上げて、極大の魔法力を筋肉狼マッスルウルフにぶつけようとするリリシアに合図を送る。

『召喚可能係数 規定値を突破
 空間転移召喚 認証
 種:建造物
 個体名称:ガルルガ邸宅
 召喚源:召喚術師レアル発 円状術式上
 召喚地点:《アルダン》領 円状術式上

 転移召喚まで 10秒』

 円状術式上のデータベースに書かれた召喚までの残り時間が表示される。

 ズアァァァァァァッッ!!

 凄まじい熱量が、レアルの背後で解き放たれる。
 だが熱量は空を舞い、筋肉狼マッスルウルフの頭上を掠める程度だ。

「レアル、人がいるわ!」

 リリシアの剣先が示す方向にレアルが目を向ける。
 草むらの中を這うようにしてこちらを伺おうとするのは、一人の少年少女の姿だった。

 ただ少し、人と違う所があった。
 その額からは、一対の小さな白角の存在が確認される。

 リリシアに迫ろうとしていた筋肉狼マッスルウルフの一部が、少年少女の方へと向かう。
 レアルの表情が少しだけ固まった。

「……鬼民きみんだ。彼らなら大丈夫だ。今はとにかく、ぼく達だけでもここから脱出するんだ、急いで!」

「キミン……? 何よ、それ」

 リリシアは怪訝そうに呟く。

『5』

 召喚へのカウントダウンは、刻一刻と迫っていた。

「後でじっくり説明する。だから――!」

『4』

「……! 何だかよく分からないけど……ッ!」

 リリシアは最後の力と言わんばかりに、剣に炎の魔法力を込めた。

『3』

「置き土産よ! 炎属性魔法、煉獄への道標ヘルファイアロード!!」

 リリシアの剣先から、黒い炎が巻き上がる。
 角の生えた少年少女の左右に、黒い炎で象られた道が形成される。

「グォ……ッ!!」

 少年少女に迫ろうとしていた筋肉狼マッスルウルフの足が思わず止まる。

『2』

「今よ、逃げてッ!!」

 リリシアは少年少女に叫んだ。
 筋肉狼マッスルウルフが近寄れないように、だが二人の逃げ道を確保したリリシアの剣は、瞬間――バリンと音を立てて砕け散った。

『1』

 レアルの手に引かれるようにして、リリシアはギリギリの所で家の中に飛び込んだ。

『――転移召喚』

 瞬間、レアルとリリシア――そして彼らが逃げ込んだ家そのものが、その場から消えることになった。






 レアルとリリシアの姿を不思議そうに見守った二人は、いなな筋肉狼マッスルウルフの前にスキップ混じりで現れた。

「カノン、オオカミ、タオス?」

「……タオス」

 取り残された二人は、リリシアが逃げ道として作り出した黒い炎を難なく踏み越えた。

「バンゴハン、オニク。……ケホッ」

 少女は、狩りを始めたのだった――。

 


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