最強召喚術師、荒野をゼロから開拓する!~万物召喚チートでサクッと最強の村を創ります~

榊原モンショー

文字の大きさ
上 下
15 / 21

15.古風な一軒家の時空召喚②

しおりを挟む
「ゥガウ! ゥガウガウ!! ガガガガゥ!!」

『アォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 筋肉狼マッスルウルフは突如場に漂い始めた魔法力を警戒するように周りへ声を共鳴させた。

「本当、こっちが悲しくなるほどの魔法力量ね」

 それは、リリシアですら思わず目を疑うほどのものだった。

「召喚術師がハズレ職だなんて言い出したの誰よ。あんなのただの、バケモノ・・・・じゃない」

 レアルの周りを包む魔法力量は、とても一般人のそれを大きく超越していた。
 レアルの魔法力から呼び出されたのは先ほどまでいつでも崩壊しかねないほどの汚らしい一軒家、ではなく。

 かつて綺麗だった頃の家を丸ごと現世に呼び出したかのような――。

「ウガゥッ!」

『ウヴァォォォォォォォォォンッッ!!』

 レアルが新たに円状術式を展開し始めたのを見計らった筋肉狼マッスルウルフが飛びかかろうとするのを、リリシアは何度も剣で払いのけていく。

 ピキッ。

 音を立てて剣にヒビが入る。

「もう少し。もう少しだけ、もちなさい……!」

 度重なる連戦と長旅の疲労で上手く動かなくなりつつある身体に鞭を打って、リリシアは――。

「炎属性魔法力付与エンチャント!」

 剣にありったけの炎属性の魔法力を注ぎ込む。
 勢いのまま、周りの全てを薙ぎ払うほどのリリシアの全力魔法だ。
 剣先から青白い炎が揺らめき、熱で空気が大きく揺れる。

「これでも……!!」

 剣を覆う炎の勢いに任せて、大きく横薙ぎに振るおうとした、その時だった。

「――――…………」

「オンナ、タオス? オオカミ、タオス?」

 森の奥に人影が見えた。

「なっ……ひ、人!?」

 リリシアが振るおうとしていた炎の剣が、大きく空を切った――。
 
●●●

「ガルルガ邸宅、召喚成功!」

 ツタも埃も消え去り、つい先日まで人が住んでいたかと思うほどに生活感のある家が現れた。
 だが、余韻に浸っている時間など微塵もない。

 レアルは瞬時に、用意していた次の魔法力で家全体を大きく包み込む。
 見慣れた通常召喚用の円状術式に、遠隔召喚の特殊術式を組み合わせた混合型だ。

「大丈夫、行けるはずだ。石を召喚した時の要領を思い出せば……!」

 イメージは、アルダン領を出る寸前にシミュレーションした小石の遠隔召喚。
 向こうから召喚対象を呼ぶのではなく、こちらごと指定した召喚地点へ飛ぶ、『転移魔法』の一種。

 ぐわんっ。

 家を囲んだ術式文字列が歪み、現れたばかりの一軒家が眩く光り出す。
 時空召喚よりも早々と完成させた術式に、レアルは素早く乗り込んだ。

「転移準備完了! リリシア!!」

 建て付けのよくなった扉をすぐさま開いた。

 レアルは声を張り上げて、極大の魔法力を筋肉狼マッスルウルフにぶつけようとするリリシアに合図を送る。

『召喚可能係数 規定値を突破
 空間転移召喚 認証
 種:建造物
 個体名称:ガルルガ邸宅
 召喚源:召喚術師レアル発 円状術式上
 召喚地点:《アルダン》領 円状術式上

 転移召喚まで 10秒』

 円状術式上のデータベースに書かれた召喚までの残り時間が表示される。

 ズアァァァァァァッッ!!

 凄まじい熱量が、レアルの背後で解き放たれる。
 だが熱量は空を舞い、筋肉狼マッスルウルフの頭上を掠める程度だ。

「レアル、人がいるわ!」

 リリシアの剣先が示す方向にレアルが目を向ける。
 草むらの中を這うようにしてこちらを伺おうとするのは、一人の少年少女の姿だった。

 ただ少し、人と違う所があった。
 その額からは、一対の小さな白角の存在が確認される。

 リリシアに迫ろうとしていた筋肉狼マッスルウルフの一部が、少年少女の方へと向かう。
 レアルの表情が少しだけ固まった。

「……鬼民きみんだ。彼らなら大丈夫だ。今はとにかく、ぼく達だけでもここから脱出するんだ、急いで!」

「キミン……? 何よ、それ」

 リリシアは怪訝そうに呟く。

『5』

 召喚へのカウントダウンは、刻一刻と迫っていた。

「後でじっくり説明する。だから――!」

『4』

「……! 何だかよく分からないけど……ッ!」

 リリシアは最後の力と言わんばかりに、剣に炎の魔法力を込めた。

『3』

「置き土産よ! 炎属性魔法、煉獄への道標ヘルファイアロード!!」

 リリシアの剣先から、黒い炎が巻き上がる。
 角の生えた少年少女の左右に、黒い炎で象られた道が形成される。

「グォ……ッ!!」

 少年少女に迫ろうとしていた筋肉狼マッスルウルフの足が思わず止まる。

『2』

「今よ、逃げてッ!!」

 リリシアは少年少女に叫んだ。
 筋肉狼マッスルウルフが近寄れないように、だが二人の逃げ道を確保したリリシアの剣は、瞬間――バリンと音を立てて砕け散った。

『1』

 レアルの手に引かれるようにして、リリシアはギリギリの所で家の中に飛び込んだ。

『――転移召喚』

 瞬間、レアルとリリシア――そして彼らが逃げ込んだ家そのものが、その場から消えることになった。






 レアルとリリシアの姿を不思議そうに見守った二人は、いなな筋肉狼マッスルウルフの前にスキップ混じりで現れた。

「カノン、オオカミ、タオス?」

「……タオス」

 取り残された二人は、リリシアが逃げ道として作り出した黒い炎を難なく踏み越えた。

「バンゴハン、オニク。……ケホッ」

 少女は、狩りを始めたのだった――。

 


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
恋愛
 世間から見れば、普通に暮らしている伯爵家令嬢ルイーズ。  けれど実際は、愛人の子ルイーズは継母に蔑まれた毎日を送っている。  継母から、されるがままの仕打ち。彼女は育ててもらった恩義もあり、反抗できずにいる。  継母は疎ましいルイーズを娼館へ売るのを心待ちにしているが、それをルイーズに伝えてしまう。  18歳になれば自分は娼館へ売られる。彼女はそうなる前に伯爵家から逃げるつもりだ。  しかし、継母の狙いとは裏腹に、ルイーズは子爵家のモーガンと婚約。  モーガンの本性をルイーズは知らない。  婚約者の狙いでルイーズは、騎士候補生の訓練に参加する。そこで、ルイーズと侯爵家嫡男のエドワードは出会うことになる。  全ての始まりはここから。  この2人、出会う前から互いに因縁があり、会えば常に喧嘩を繰り広げる。 「どうしてエドワードは、わたしと練習するのよ。文句ばっかり言うなら、誰か別の人とやればいいでしょう! もしかして、わたしのことが好きなの?」 「馬鹿っ! 取り柄のないやつを、俺が好きになるわけがないだろう‼ お前、俺のことが分かっているのか? 煩わしいからお前の方が、俺に惚れるなよ」  エドワードは侯爵家嫡男の顔の他に、至上者としての職位がある。それは国の最重要人物たちしか知らないこと。  その2人に、ある出来事で入れ替わりが起きる。それによって互いの距離がグッと縮まる。  一緒にいると互いに居心地が良く、何の気兼ねも要らない2人。  2人で過ごす時間は、あまりにも楽しい…。  それでもエドワードは、ルイーズへの気持ちを自覚しない。  あるきっかけで体が戻る。  常々、陛下から王女との結婚を持ち掛けられているエドワード。  彼の気持ちはルイーズに向かないままで、自分の結婚相手ではないと判断している。  そんななか、ルイーズがいなくなった…。  青ざめるエドワード。もう会えない…。焦ったエドワードは彼女を探しに行く。  エドワードが、ルイーズを見つけ声を掛けるが、彼女の反応は随分とそっけない。  このときのルイーズは、エドワードに打ち明けたくない事情を抱えていた。 「わたし、親戚の家へ行く用事があるので、あの馬車に乗らないと…。エドワード様お世話になりました」 「待てっ! どこにも行くな。ルイーズは俺のそばからいなくなるな」  吹っ切れたエドワード。自分はルイーズが好きだと気付く。  さらに、切れたエドワードは、ルイーズと共に舞踏会で大騒動を起こす!  出会うはずのない2人の、変わり身の恋物語。 ※常用漢字外はひらがな表記やルビを付けています。  読めるのに、どうしてルビ? という漢字があるかもしれませんが、ご了承ください。

処理中です...