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13.二人で始める家探し③

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「家……! ほら、レアル! これ、家じゃない!?」

 足掛け三日、ようやく見つけた手がかりにいの一番にほっとしたのはリリシアだった。

「1000年前に滅びた文明があった。ってことは、1000年前には普通に『人』が生活してたってことにもなるから探してみてたけど、ようやく見つかった……!」

「でも、見た所この一軒だけみたい。周りにめぼしいものは見つからないわね」

 リリシアはきょろきょろと周りを歩いているが、今ある一軒家以外は見つかる気配もない。

「当分使われてそうにない、か」

 その一軒家は、簡易的な木造建築だった。
 埃とツタに塗れた外装に少し触れれば、灰色の埃が舞い飛んだ。

 がらりと立て付けの悪い扉を開く。
 放置されている水瓶みずがめや、湿気きった薪は朽ちてしまって原型がない。
 ぽたり、ぽたりと雨漏りの様子があり家の一部には水溜まりすら出来ている。

「れ、レアル。これ本当にどうにか出来るの? せっかく見つけた家だけど、やっぱりどうしようも……」

 不安そうにレアルの肩から家の中を覗き込むリリシア。

「どうしたのさリリシア。もしかして、怖かったりするの?」

「し、仕方ないじゃない。魔物は殺せばいいから怖くないけど、こういう不気味なのって、どうしようもなく怖いじゃない……! ここがダメなら、早く次に行こ、ね?」

「いいや、これなら大丈夫そうだよ。手頃にぼく達の住めそうな環境も整ってるしね」

「これのどこがよ!? 古すぎるし、不気味すぎるしで誰も使ってないじゃないの……!」

 信じられないとでも言った様子でレアルの耳元で囁くリリシア。

「だからこそ、だよ。誰も使っていなさそうなものにこそ、今のぼく達が頼るのには最適なんだから」

「えー、もうレアルの考えてることさっぱり分からないわよ……うぅ……。これをアルダン領にそのまま召喚するの? 壊れちゃわないかしら?」

 あまり乗り気でないリリシアに、レアルは言う。

「だから、ここで修繕してから持って行くんだよ。その分魔法力もいるから、ちょっとばかり時間はかかるだろうけどさ」

 言いながらレアルは小さな一軒家の周りを一周し始めた。

「しゅうぜん? 直すの? どうやって」

「小川を再生させたのと一緒だよ。かつて綺麗だった頃の川を現代に召喚したように、かつてまだ使われていた頃のこの家を召喚するんだ」

「ふーん……」

「小川の時は範囲を狭く円状術式を組めば良かったんだけど、今回は範囲も広いし、物量も大きい。時間がかかっちゃいそうだから、こうして歩きながら円状術式たり得る魔法力を注いでるんだ」

 ガサガサと。

 レアルの魔法力が大地に注がれ始めた時に辺りは異様な雰囲気を形成し始めていた。

「要するに、レアルが色々召喚している間に、私がレアルを護り続ければいいってことね」

(ガルルルルルルルル……!)

 森の中から複数のうめき声が上がり始める。

「ぼくはこれから無防備になる。リリシア、君とぼくを護るために、ぼくを護ってほしい」

 レアルの手の平に円状術式が走る。
 不可思議な文字列が一軒家の周りを覆うと同時に、森の中から複数の魔物が現れる。

「承知しましたわ、王子様ッ!!」

 リリシアはからかうように微笑んで、腰から剣を抜刀して一気に魔法力を開放したのだった。
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