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5.呼び寄せる声
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「きゅーぅ、きゅーぅっ♪ きゅーぅう♪」
スライムの心地よい鳴き声と共にレアルは荒野を歩いている。
ひとまず向かうは、このスライムが召喚された場所であるヴァルハラ森林前の小川だ。
川に行けば、水がある。
水があれば、何か食べるものくらいはあるだろう。
「きゅーぅ、きゅーぅっ♪ きゅぅ!」
「妙にご機嫌なスライムだなぁ。でも、お前のおかげでぼくもなんだか寂しさがなくなってきてるよ……あはは」
腕の中でもぞもぞ蠢く青色のスライム。
身体をつんつんとレアルがつつくと、かぷりと境界線の分からない口でレアルの指を咥えにいく。
「初めまして、キュウ。それが今日からお前の名前だよ。短い間かもしれないけど、よろしくね」
「……きゅぅ。きゅーーーーーーうっ!!」
「きゅぅっ! きゅぅっ!」と何故か嬉しそうにぽよぽよと腕の上で跳ねるスライム――改め、キュウ。
もしかしたら、あれだけ散々言われた召喚術師だけどこんな風に生活出来るかも知れないのなら、それも悪くないのかも――。
そう楽観的に歩いていた、その時だった。
「きゅぅっ!!」
キュウは突然レアルの腕から飛び降りた。
「……っ! さっそく魔物って、いくらなんでも早すぎるよね!」
レアルの背後に迫っていたのは、3体の小さなゴブリンだった。
「そういえばぼく、魔物見たのこれが初めてだ……」
王宮にいた頃は、とにかく書物を読むことくらいしかやることがなかったレアル。
ゴブリンの存在自体は知っていたが、実際に目の当たりにするとこうまで緊張感が増すものかと少々身が震えた。
「ゲギャギャグャ……ッ」「ゲギャォゥ!」「ゲルルグァ!」
自身の丈ほどもある棍棒を持った3体は、80センチほどの上背なのにレアルには遙かに大きく感じられた。
「さすがに、キュウ一匹だけだと無理があるな。――《召喚》!」
レアルは再び目の前の空間に召喚術式を顕現させた。だが、術式は反応しない。
代わりに明らかに「ダメでした」という文字が浮かび上がる。
『召喚術師レベルが足りません。今召喚出来る魔物が存在しません。
術式キャパシティオーバー。貴方の魔力に耐えきれません。』
「なんでさ!? ……えぇい、キュウ!」
「きゅぅ!?」
レアルはキュウを抱えて、一目散に駆け出した。
「ガルルァ!」「グルァァァァ!」「ゴォッ!」
元々薄い賭けではあったけど、やはり王国の王子として生きていた方が断然安全ではあった。
あったのだが――。
「あんな生活で白髪生えるまで閉じ込められるくらいだったら、こんな所でも生きて、生き抜いて限界まで生き抜いてから死んでやる!」
もう二度と王宮には戻らない。
例えここで死んでしまおうとも、あんな所でずっと体を縮ませて生きていくよりも、遙かにマシだ。
「この世界で、ぼくは誰よりも自由に生きてやる――ッ!!」
「……きゅぅ」
キュウが心配そうにレアルを見上げている。
レアルが目指すは森の奥。枯れ木も多いが、数が多ければ身を隠すことも出来るはずだと、そう踏んでいた、その時だった。
『あなたのような人を、私は1000年待っていました』
腕の中にいるキュウの身体が七色の光に輝きだした。
「……きゅ、きゅう!?」
驚きのあまりレアルがキュウを直視する。
「きゅーぅ♪」
瞬間、キュウの身体は七色の粒子に変わって元いた場所に円状の術式が出現した。
それは先ほどレアルが放った術式とは大きく違うもの。
さらに術式は、レアルの足下にも顕現した。
「……な、何が、起こってるんだ……!?」
レアルの理解も追いつかないままに、その声はレアルを呼び寄せる。
『あなたに、私の全てを託します――』
瞬間、レアルの身体は謎の術式によって、この世から姿を消した。
スライムの心地よい鳴き声と共にレアルは荒野を歩いている。
ひとまず向かうは、このスライムが召喚された場所であるヴァルハラ森林前の小川だ。
川に行けば、水がある。
水があれば、何か食べるものくらいはあるだろう。
「きゅーぅ、きゅーぅっ♪ きゅぅ!」
「妙にご機嫌なスライムだなぁ。でも、お前のおかげでぼくもなんだか寂しさがなくなってきてるよ……あはは」
腕の中でもぞもぞ蠢く青色のスライム。
身体をつんつんとレアルがつつくと、かぷりと境界線の分からない口でレアルの指を咥えにいく。
「初めまして、キュウ。それが今日からお前の名前だよ。短い間かもしれないけど、よろしくね」
「……きゅぅ。きゅーーーーーーうっ!!」
「きゅぅっ! きゅぅっ!」と何故か嬉しそうにぽよぽよと腕の上で跳ねるスライム――改め、キュウ。
もしかしたら、あれだけ散々言われた召喚術師だけどこんな風に生活出来るかも知れないのなら、それも悪くないのかも――。
そう楽観的に歩いていた、その時だった。
「きゅぅっ!!」
キュウは突然レアルの腕から飛び降りた。
「……っ! さっそく魔物って、いくらなんでも早すぎるよね!」
レアルの背後に迫っていたのは、3体の小さなゴブリンだった。
「そういえばぼく、魔物見たのこれが初めてだ……」
王宮にいた頃は、とにかく書物を読むことくらいしかやることがなかったレアル。
ゴブリンの存在自体は知っていたが、実際に目の当たりにするとこうまで緊張感が増すものかと少々身が震えた。
「ゲギャギャグャ……ッ」「ゲギャォゥ!」「ゲルルグァ!」
自身の丈ほどもある棍棒を持った3体は、80センチほどの上背なのにレアルには遙かに大きく感じられた。
「さすがに、キュウ一匹だけだと無理があるな。――《召喚》!」
レアルは再び目の前の空間に召喚術式を顕現させた。だが、術式は反応しない。
代わりに明らかに「ダメでした」という文字が浮かび上がる。
『召喚術師レベルが足りません。今召喚出来る魔物が存在しません。
術式キャパシティオーバー。貴方の魔力に耐えきれません。』
「なんでさ!? ……えぇい、キュウ!」
「きゅぅ!?」
レアルはキュウを抱えて、一目散に駆け出した。
「ガルルァ!」「グルァァァァ!」「ゴォッ!」
元々薄い賭けではあったけど、やはり王国の王子として生きていた方が断然安全ではあった。
あったのだが――。
「あんな生活で白髪生えるまで閉じ込められるくらいだったら、こんな所でも生きて、生き抜いて限界まで生き抜いてから死んでやる!」
もう二度と王宮には戻らない。
例えここで死んでしまおうとも、あんな所でずっと体を縮ませて生きていくよりも、遙かにマシだ。
「この世界で、ぼくは誰よりも自由に生きてやる――ッ!!」
「……きゅぅ」
キュウが心配そうにレアルを見上げている。
レアルが目指すは森の奥。枯れ木も多いが、数が多ければ身を隠すことも出来るはずだと、そう踏んでいた、その時だった。
『あなたのような人を、私は1000年待っていました』
腕の中にいるキュウの身体が七色の光に輝きだした。
「……きゅ、きゅう!?」
驚きのあまりレアルがキュウを直視する。
「きゅーぅ♪」
瞬間、キュウの身体は七色の粒子に変わって元いた場所に円状の術式が出現した。
それは先ほどレアルが放った術式とは大きく違うもの。
さらに術式は、レアルの足下にも顕現した。
「……な、何が、起こってるんだ……!?」
レアルの理解も追いつかないままに、その声はレアルを呼び寄せる。
『あなたに、私の全てを託します――』
瞬間、レアルの身体は謎の術式によって、この世から姿を消した。
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