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4.初めての魔物召喚はスライムでした!

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 王宮からの出立からはや1週間が経っていた。

「そ、それでは私はこれで……。……すいやせん」

 ぺこりとバツが悪そうに頭を下げた御者だった。

 フィッツ領の最端まで送られたレアルは、手持ちに少しのパンと寂れたナイフを渡されて荒野に投げ出されたも同然だった。

 さらに、フィッツ領とシルデフィル地区の境には遙か昔に掛けられたという巨大障壁がある。
 ここから先は魔力によって遮られていて、普通の人は出入りできないようになっているらしい。
 それほどに、国としてもシルデフィル地区というのは得体の知れない、不気味な立ち入り禁止区域と言うことだ。

 レアルは、フィッツ領に入った時に手渡された一枚の紙切れを障壁に翳した。

「これを使って、魔力をすり抜けさせろってことだよね。なるほど、父様も徹底してぼくを追いやりたかったんだ」

 紙切れをかざせば、ヒト一人分が通れるほどの穴が空いた。
 おそらく、この魔力のズレでレアルがシルデフィル地区にちゃんと入ったかどうかを確認出来るのだろう。

 レアルがシルデフィル地区から逃げることなど、端から出来はしない。
 地区に入ると同時に障壁は再び閉まり、紙切れは小さく燃え尽きた。

「ここが、外の世界かぁ。誰にも監視されずに外に出たのなんて、いつぶりだろう?」

 地平線までどこまでも続く広い世界。
 枯れた草々やしおれた木が目立つものの、多少は緑生い茂る森のようなものもある。
 そんな森の中には小さな川が見える。
 
「っと、そういえば……ぼく、召喚術師とか言われてたっけ? 王宮の書庫でも一応は確認したけど――」

 思い立って、ぼくは手の平を空に掲げる。

「――《召喚》!」

 頭の中にイメージが勝手に流れ込んでくる。
 今のぼくが召喚できるもの……は、こんな感じかな?

 手の前の空間に、丸い円状の術式が刻まれていく。
 術式が灰色に光ったと思えば、目の前の地面に同程度の質量の丸い術式が浮かび上がる。
 こちらもまた光を帯びて、それが徐々に集まっていき――。

「きゅぅ!」

 ポンッと。集まった光が一つの物体になってレアルの前に降り立った。

『種:魔物
 個体名称:スライム
 性別:無
 ランク:G
 召喚源:シルデフィル地区ヴァルハラ森林前・小川
 召喚地点:シルデフィル地区 魔力障壁付近』
 
 円状術式の周りに現れていく文字は、今レアルが召喚した物体のデータベースだ。

 ずりずりとレアルの足下に擦り寄ってきて、ぷるぷるの身体を押しつけるスライム。

「きゅぅ! きゅーぅ!!」

 妙に慣れた様子のスライムを抱き上げれば、もぞもぞと懐の中に入ろうとしてくる。

「……かわいい」

「きゅーぅ!」

 召喚術師、レアルはこの日初めての魔物召喚に成功した――!
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