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はずれの民泊
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「夜だ」
親フェンリルに逃がされて、ぼくとフェウは森の外れまでやって来ていた。
最初に入ったガルラット森林の入り口とは正反対の方向に出ちゃったけど、今までのぼくは特に何か持っていたわけでもないから特に困ることもないんだよね。
「アーセナル・レッドも解雇になっちゃったし、どうしよう。手持ちは今日の晩ご飯食べられるだけのお金もないや。あはは」
「がるぅ……」
フェウはしばらくの間興奮気味だったけど、あれから少し大人しくなってくれた。
というより、親フェンリルの覇気を見て充てられた後に、親との決別を感じ取ってしまった、ということだろうか。
寂しそうにぼくの指をガジガジと噛んでいるフェウだけど、ぼくはそれを止めることは出来なかった。
「どうしたんだい、にーちゃん。ボロボロじゃないかい! こんな夜遅くまで森に入ってたってことは、他のパーティーと別れちまったのかい?」
とぼとぼと歩いていると、どこからともなくエプロン姿のおばちゃんがお玉を持ってぼくの方に駆け寄ってくれた。
おばちゃんの後ろには古風な木造家が一軒ぽつんと佇んでいた。
煙突からもくもくと出る白い煙は、どこか美味しそうな匂いと共に懐かしさを感じさせてくれた。
「ここは、どこですか?」
見たこともない景色だった。
よく考えたら、冒険者になって拠点を決めてから、それ以外の所なんて見向きもしたことがなかった。
おばちゃんは答える。
「ここは、ガルラット森林の裏側……ヨネルラ村って所だよ。表の方に中くらいの冒険者ギルドが出来てしまってから、随分と寂れてしまってねぇ。今の若い衆はみんな向こうの方に行ってしまったんだろう。あなたも、表の方かい?」
「そうだったんですけどね。ぼくが弱すぎて、パーティーをクビになっちゃったんですよ……。特に帰る場所もなくて、って感じなんですけどね。あはは……」
「がるぅっ」
「いたたたたっ!? フェウ、いたい! いたいよ!?」
腕に抱えたフェウがちょっとだけ噛むのを強くしたみたいで、思わず声が出てしまっていた。
そんな様子を見たおばちゃんは、特に何も言わずに「そうかい。そりゃ大変だったねぇ」
と小さく笑って後ろを指さした。
「ここは元々民泊ギルドだったんだ。表のが出来てからすっかり廃れちまったけど、良かったら来るかい? 晩ご飯と寝床くらいなら、そこのワンちゃん共々面倒見てあげられるよ。話はそれからでもいいだろう?」
「い、いいんですか!? よろしくお願いします!」
「がるぅ!」
「たまにいるんだよ。何かに失敗して、表に居づらくなった冒険者がねぇ。今はゆっくりしていきなさいな」
夜も寒くなるこの時期に野宿を覚悟していたぼくだったけど、優しいおばちゃんがそう言ってくれた。
ぼくはともかく、フェウまで野宿させちゃうわけにはいかないからね。
ご好意に甘えて、今日ばかりはお世話になるとしよう。
フェウは今日初めて尻尾をふりふりと振っていた。
ぼくも、フェウについてまだまだ知らないといけないことばかりだ――。
親フェンリルに逃がされて、ぼくとフェウは森の外れまでやって来ていた。
最初に入ったガルラット森林の入り口とは正反対の方向に出ちゃったけど、今までのぼくは特に何か持っていたわけでもないから特に困ることもないんだよね。
「アーセナル・レッドも解雇になっちゃったし、どうしよう。手持ちは今日の晩ご飯食べられるだけのお金もないや。あはは」
「がるぅ……」
フェウはしばらくの間興奮気味だったけど、あれから少し大人しくなってくれた。
というより、親フェンリルの覇気を見て充てられた後に、親との決別を感じ取ってしまった、ということだろうか。
寂しそうにぼくの指をガジガジと噛んでいるフェウだけど、ぼくはそれを止めることは出来なかった。
「どうしたんだい、にーちゃん。ボロボロじゃないかい! こんな夜遅くまで森に入ってたってことは、他のパーティーと別れちまったのかい?」
とぼとぼと歩いていると、どこからともなくエプロン姿のおばちゃんがお玉を持ってぼくの方に駆け寄ってくれた。
おばちゃんの後ろには古風な木造家が一軒ぽつんと佇んでいた。
煙突からもくもくと出る白い煙は、どこか美味しそうな匂いと共に懐かしさを感じさせてくれた。
「ここは、どこですか?」
見たこともない景色だった。
よく考えたら、冒険者になって拠点を決めてから、それ以外の所なんて見向きもしたことがなかった。
おばちゃんは答える。
「ここは、ガルラット森林の裏側……ヨネルラ村って所だよ。表の方に中くらいの冒険者ギルドが出来てしまってから、随分と寂れてしまってねぇ。今の若い衆はみんな向こうの方に行ってしまったんだろう。あなたも、表の方かい?」
「そうだったんですけどね。ぼくが弱すぎて、パーティーをクビになっちゃったんですよ……。特に帰る場所もなくて、って感じなんですけどね。あはは……」
「がるぅっ」
「いたたたたっ!? フェウ、いたい! いたいよ!?」
腕に抱えたフェウがちょっとだけ噛むのを強くしたみたいで、思わず声が出てしまっていた。
そんな様子を見たおばちゃんは、特に何も言わずに「そうかい。そりゃ大変だったねぇ」
と小さく笑って後ろを指さした。
「ここは元々民泊ギルドだったんだ。表のが出来てからすっかり廃れちまったけど、良かったら来るかい? 晩ご飯と寝床くらいなら、そこのワンちゃん共々面倒見てあげられるよ。話はそれからでもいいだろう?」
「い、いいんですか!? よろしくお願いします!」
「がるぅ!」
「たまにいるんだよ。何かに失敗して、表に居づらくなった冒険者がねぇ。今はゆっくりしていきなさいな」
夜も寒くなるこの時期に野宿を覚悟していたぼくだったけど、優しいおばちゃんがそう言ってくれた。
ぼくはともかく、フェウまで野宿させちゃうわけにはいかないからね。
ご好意に甘えて、今日ばかりはお世話になるとしよう。
フェウは今日初めて尻尾をふりふりと振っていた。
ぼくも、フェウについてまだまだ知らないといけないことばかりだ――。
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