LOOK AT ME

天宮叶

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話を聞きましょう

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学校に着くと何故か光成くんが教室の前の壁に背中を預けて立っていた。

「おはよう。」

「…空…。久しぶりだな。」

なんだか元気がない光成くんが僕の方に歩いてくるといきなり僕に抱きついてきて驚く。
真後ろにいた時くんのこめかみがそれを見てぴくりと動いたけど、落ち着いてってジェスチャーで伝えて、とりあえず光成くんを引き離した。

「どうしたの?」

「…空っ、俺…どうしたらいいか分かんなくて…。」

「何があったの?」

今にも泣き出しそうな光成くんに訊ねると光成くんはたどたどしく状況を説明してくれた。

屋上に3人で向かいながら光成くんの話を聞く。

「柴くんがお見合い?」

「…Ωの女の子だって…家が絡んでる見合いらしくて、3日くらい姿見てないし…番になってたらって思ったら俺…っ。」

屋上に着いた途端ボロボロと泣き出した光成くんは、本当にどうしたらいいのか分からない様子で、僕も久しぶりの学校で状況もよく分からなくて困る。

そこでふと時くんの言葉を思い出した。

「……時くん。」

「あ?」

「もしかして時くんってこのこと知ってた?」

「……言ったろ。あいつならほっといても何とかするって。」

「この事だったの!??」

僕は驚きすぎて何も言えなくなった。

光成くんは泣いていて話も聞けない状態だし、時君は言葉が足りなさ過ぎて多分聞いても意味無い。

「…どうしよう。」

当の本人も学校に来てないみたいだし僕は困り果てて頭を抱えた。

「てか、お前らなんか勘違いしてねえか。」

「時くんちょっと待ってて!」

光成くんがずっと泣いてるもんだから、時くんの話を遮って僕は彼に近づいて、光成くんの背中を撫でながら、どうしたのかを聞いてみる。

「…俺、柴さんに会いたい…。」

「…柴くんの家は知ってる?」

「アパートには居なかった…。実家に帰ってるみたいで…場所知らねえし…。」

光成くんの言葉に僕は再び頭を抱えた。

調べるしかないかなあって頭の中で考えを巡らせながら、時くんが何か言いかけたことを思い出して僕は時くんに話しかける。

「時くん何か言った?」

「あ゛あ?なんも。」

どこか不機嫌そうな時くんは素っ気なく返事をすると僕から視線を逸らして壁に背中を預けて目を閉じた。

完全に寝の体勢に入った彼に僕は苦笑いを浮かべて、とりあえず職員室に行ってみようって光成くんに声をかける。

「…なんで職員室?」

「柴くんのご実家の住所聞けるかもしれないでしょ。」

「…そっか……。でも、俺…怖い。」

「……どうして?」

「もし柴さんに番ができてたら俺…柴さんにみっともなく縋ると思う…。あの人を手放すなんて俺は無理だよ…。」

僕が発情したときに柴くんが言ったことと真逆のことを口にした光成くんに僕は複雑な気持ちで、そうだよねって返事をした。

どっちが正しいなんてわからなくて、どっちが間違ってるって否定はできない。

「…行こう。泣いてる暇なんてないよっ。」

光成くんの手を引いてあげたら彼は頷いて僕に手を引かれたまま歩き始めた。

屋上を出るときに、時くんの方に視線を向けると目を固く閉じたままこっちを見てはくれない。

僕は小さくため息を着くと、光成くんと2人屋上を出た。

「……くだんねえ。」

時くんがそう呟いたとも知らずに。
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