LOOK AT ME

天宮叶

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引き出せたもの

3〜時視点〜

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怠くて学校をサボったら、放課後に空からピンク頭と遊んでくると連絡が入った。

それにものすごくイラついて、横にあった近くの棚に置いてあるマグカップを手に取って壁に向かって投げつけた。

パリンッと派手な音が鳴ってそれが粉々に砕け散る。

あのピンク頭と2人きりで遊んでると思うとイラつきが止まらなくて鬼電してやろうかと考えていると、インターホンの音が鳴り響いて俺は動きを止めた。

面倒だと思って居留守をすると、ピンポンピンポンピンポンと連続でチャイムが鳴らされる。

鳴り止まないそれにイラついて殴ってやろうと玄関扉を開けると柴がへらへらした顔で玄関の前に立っていた。

俺は迷うことなく1発頬を殴りつけると、帰れとすげなく追い返す。

「まってまって。痛いし冷たいし、やっぱり怒ってるし、俺泣いちゃうからね。」

「勝手にやってろ。」

無理矢理中に入ってきた柴は自分の家かの如くソファーにゆったりと腰掛けて相変わらずの食えない笑みを浮かべている。

「出てけよ。」

「時の家じゃないじゃん。」

「…チッ。」

舌打ちすると、柴が楽しそうに喉を鳴らして笑うからもう1発殴ってやろうかって考えが浮かんだ。

「わんちゃんに頼まれてわざわざ来てみたら案の定イラついてるじゃん。余裕ない男は嫌われるよ~。」

「うるせえ。」

「ヤキモチばっかり妬いてないでたまには寛容にならないとさっ。友達と遊ぶのさえ制限してたらいつかパシリくん逃げちゃうかもよ。」

柴の言葉に俺はぐっと唇を噛む。

正論すぎて逆にむかついて俺は柴の座ってるソファーを蹴った。

「物に当たらないの。そのマグカップ時が壊したんでしょ。大事なものだったらどうするの?」

「…たかがマグカップに大層な意味なんてねえだろ。」

鼻で笑ってから柴の向かい側のソファーに腰掛ける。

「俺はさ、時がパシリくんにキレようが正直勝手にしてくれって感じなのよ。でもさ、俺、犬派じゃん?」

「…しらねえよ。」

「だから困るわけよ。時がわんちゃんのこと殴ったり蹴ったりするのとかさ。小動物がいじめられてるの無理な人だからさ俺。」

ペラペラ聞いてもねえことを喋る柴に俺は怒りよりも面倒って感情の方が大きくなった。

「…なんもしねえから帰れ。お前が1番俺にとっちゃ害悪だ。」

「酷いなあ。ま、言質は取ったからいいや。約束だよ~、怒っちゃダメだからね。」

そう言って嵐のように去っていった柴に俺はため息を着く。

同じ‪α‬ってこともあってあいつは俺に遠慮なんてしねえし、俺もそうだ。

約束した手前、キレることも出来なくて、中々帰ってこない空を待ちながら俺はボーッとテレビを眺めていた。

空が家に入ってくる足音が聞こえてきて、俺はイラつく心を落ち着かせるために1度深呼吸をした。

顔を見たら何を言うか分からないからテレビ画面を見たまま遅せぇって文句を言う。

そしたら素直に謝罪してきやがったから柴の言葉を思い出して俺はゆっくりと空の方を見た。

慌てて帰ってきたのか髪はぐちゃぐちゃだし息も荒い。

気の利いた事も言えなくて、何とか絞り出して、楽しかったか聞くと空は楽しかったって笑顔で答えてきた。

心底楽しそうに言うもんだからつい頭を撫でてやると嬉しそうに空がはにかむ。

なんでだか心臓がギュッてなって、訳わかんなくて落ち着かせるようにひたすら空のふわふわの髪を撫でた。

そうしていたら、空の鞄に見覚えのない猫のキーホルダーが下がってるのが見えてつい何か聞いた。

ピンク頭に取ってもらったってまた満面の笑みで答えてから、自分もあいつに取ってやったんだと自慢げに言ってくるもんだから俺とはそんなことしたことねえだろってつい思ってイラついた声を上げた。

そんな俺のことなんて怖くないって言うみてえに空が鞄を漁り始めて、こいつはほんとに肝が据わってるって逆に感心する。

空はさっきよりも更に笑みを深めてから不細工な狼のぬいぐるみを俺に見せてきた。

そして、俺に似てるから取ったって蕩けるような笑みで言って自分の分も有るんだと恥ずかしそうに言う。

こんな顔されたらなんも言えなくなるじゃねえか…。

仕方なくその縫いぐるみを受け取ると空はやっぱり楽しげに笑っていた。

こんなに心の底から幸せそうに笑う空は見たことがなくて、この顔を引き出したのがあのピンク頭だと思うとイラつくけど、少し我慢するだけでこれが見れるなら安いもんだってつい思う。

抱きついてきた空を抱き締め返して、こいつってこんなに可愛かったか?って俺らしくないことを思った。
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