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頼れよ……
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保健室に連れていかれた僕は、先生の車で直ぐに病院へと向かった。
その間時くんは僕から離れようとしなくて、先生が止めるのも聞かずにずっと寄り添ってくれていた。
「……縫わないといけませんね。見た目程そんなに深くはないので大丈夫ですよ」
「……そう、ですか」
お医者さんの言葉にほっとする。
処置を終えて、待合室に戻ると時くんが僕に足早に近づいてきて容態を聞いてきた。お医者さんに言われたことを伝えるとほっとした表情を浮かべる。
「……帰ろう」
先生に家まで送って貰って僕達は帰宅する。
リビングのソファーに腰掛けると時くんが僕を強く抱き締めてきて、その温もりにポロリと涙が零れ落ちた。
「なんで言わなかった」
「……心配かけると思って……それに……」
その先は言葉が出てこなくて口ごもる。
「……俺がお前のこと見捨てるとでも思ったのか?」
「ちがっ……そうじゃなくて……」
「ならなんなんだよっ!」
時くんの急な大声に肩を跳ねさせると、時くんが苦しそうに眉を寄せているのが目に入った。
切なそうに顔を歪めて、今にも泣いてしまいそうな、そんな悲しい表情。
「俺がお前のこと助けねえわけないだろ……」
「……時くん……」
「なんでお前はそうなんだよ……。いつもいつも澄ました顔しやがってっ!辛いならそう言えばいい!助けて欲しいなら俺に助けを求めろよ!!」
時くんの切実な叫びに僕はどんどん溢れる涙を止められなくなった。
「……好きなやつに手を差し伸べねえわけねえだろ!」
「……え……」
びっくりして顔を上げると、時くんも自分が言った言葉に驚いているのか、困惑した顔で固まっていた。
しばらく僕達は息を忘れたように見つめ合う。
「……今……俺、なんて言った……」
そんな沈黙を破ったのは時くんで、僕はそれにどう答えるのが正解なのか戸惑う。
空耳だったかもしれない。
涙も引っ込んで、僕ははくはくと口を開閉させることしかできない。
「……忘れろ」
時くんはまだ自分の言葉が飲み込めていないのか、困った顔をしてそう言ってきた。
僕も困ったように眉を寄せる。
忘れられるわけないのに……。
それなのに時くんは、さっきの怒りは嘘のように、僕から顔をそらしてそれ以上はなにも喋ろうとはしない。
「……っ、いたっ……!」
「……っ!大丈夫か?」
僕の言葉を聞いて、時くんがそらしていた顔を向けてくれた。
そんな時くんに僕はペロって舌を出して、全然平気って笑ってみせる。
「……お゛い」
「へへ……。だって時くんがなかったことにしようとするから」
ヘラりと笑ってやると、また困った顔をして顔をそらそうとすると。
そんな彼の顔に両手を添えて、そっと僕からキスをした。
怪我した方の手が微かに引き連れたように痛くて、今度は本当に痛いって言ったら時くんが心配そうに包帯の巻かれた手を大きな手で包み込んでくれる。
「……時くん、好きだよ」
「……っ、やめろ」
「好きだってばっ」
「……~~っ」
徐々に顔を赤くしていく時くんが可愛くて赤い頬にまたキスをする。
もしかしたら時くんは、僕が思っている以上に僕のことを大切に思ってくれているのかもしれない。
いつもはなにも言ってくれないけど、きっと沢山心配をかけたんだって思ったら、もっと彼のことを頼ればよかったって反省した。
「……ねえ、心配かけてごめんね」
「……まだ解決してねえだろ」
「うん……」
「……犯人はもうわかってる。だからお前はなにも心配すんな」
ポンって頭に乗せられた手の温かさに頬を緩めた。
「……僕も大体誰かはわかってるよ……」
「……しばらくは家に居ろ」
「……わかった」
時くんの言葉に素直に頷いたら、わしゃわしゃと頭を撫でられて、その気持ちよさにふふって小さく声が漏れた。
時くんの膝の上に頭を乗せて、撫でられながらその心地良さを堪能する。
「時くんはいつから知ってたの?」
「屋上でお前が俺のこと可愛いとかぬかして来やがったときくらいだろ」
「そっか~……」
「大体お前が俺に隠し事できるわけねえだろ」
僕、結構隠し事得意な方なのに、時くんは鋭いんだなって思う。
ふわ~って欠伸をしたら寝ろって目を隠されたから、僕はそれに従って目を閉じた。
時くんにくっついているとぽかぽかな陽気に包まれているような、不思議な感覚になって直ぐに眠たくなる。
まるで原っぱに寝転んでいるようなそんな心地。
「……気持ちいい」
「俺は重い」
「……ならベッド行く」
「そのままでいい」
目を閉じながら冗談を言い合って、そうしていると少しずつ眠気が増していく。
「おやすみ」
そう言って僕は時くんに抱きついて眠りについた。
その間時くんは僕から離れようとしなくて、先生が止めるのも聞かずにずっと寄り添ってくれていた。
「……縫わないといけませんね。見た目程そんなに深くはないので大丈夫ですよ」
「……そう、ですか」
お医者さんの言葉にほっとする。
処置を終えて、待合室に戻ると時くんが僕に足早に近づいてきて容態を聞いてきた。お医者さんに言われたことを伝えるとほっとした表情を浮かべる。
「……帰ろう」
先生に家まで送って貰って僕達は帰宅する。
リビングのソファーに腰掛けると時くんが僕を強く抱き締めてきて、その温もりにポロリと涙が零れ落ちた。
「なんで言わなかった」
「……心配かけると思って……それに……」
その先は言葉が出てこなくて口ごもる。
「……俺がお前のこと見捨てるとでも思ったのか?」
「ちがっ……そうじゃなくて……」
「ならなんなんだよっ!」
時くんの急な大声に肩を跳ねさせると、時くんが苦しそうに眉を寄せているのが目に入った。
切なそうに顔を歪めて、今にも泣いてしまいそうな、そんな悲しい表情。
「俺がお前のこと助けねえわけないだろ……」
「……時くん……」
「なんでお前はそうなんだよ……。いつもいつも澄ました顔しやがってっ!辛いならそう言えばいい!助けて欲しいなら俺に助けを求めろよ!!」
時くんの切実な叫びに僕はどんどん溢れる涙を止められなくなった。
「……好きなやつに手を差し伸べねえわけねえだろ!」
「……え……」
びっくりして顔を上げると、時くんも自分が言った言葉に驚いているのか、困惑した顔で固まっていた。
しばらく僕達は息を忘れたように見つめ合う。
「……今……俺、なんて言った……」
そんな沈黙を破ったのは時くんで、僕はそれにどう答えるのが正解なのか戸惑う。
空耳だったかもしれない。
涙も引っ込んで、僕ははくはくと口を開閉させることしかできない。
「……忘れろ」
時くんはまだ自分の言葉が飲み込めていないのか、困った顔をしてそう言ってきた。
僕も困ったように眉を寄せる。
忘れられるわけないのに……。
それなのに時くんは、さっきの怒りは嘘のように、僕から顔をそらしてそれ以上はなにも喋ろうとはしない。
「……っ、いたっ……!」
「……っ!大丈夫か?」
僕の言葉を聞いて、時くんがそらしていた顔を向けてくれた。
そんな時くんに僕はペロって舌を出して、全然平気って笑ってみせる。
「……お゛い」
「へへ……。だって時くんがなかったことにしようとするから」
ヘラりと笑ってやると、また困った顔をして顔をそらそうとすると。
そんな彼の顔に両手を添えて、そっと僕からキスをした。
怪我した方の手が微かに引き連れたように痛くて、今度は本当に痛いって言ったら時くんが心配そうに包帯の巻かれた手を大きな手で包み込んでくれる。
「……時くん、好きだよ」
「……っ、やめろ」
「好きだってばっ」
「……~~っ」
徐々に顔を赤くしていく時くんが可愛くて赤い頬にまたキスをする。
もしかしたら時くんは、僕が思っている以上に僕のことを大切に思ってくれているのかもしれない。
いつもはなにも言ってくれないけど、きっと沢山心配をかけたんだって思ったら、もっと彼のことを頼ればよかったって反省した。
「……ねえ、心配かけてごめんね」
「……まだ解決してねえだろ」
「うん……」
「……犯人はもうわかってる。だからお前はなにも心配すんな」
ポンって頭に乗せられた手の温かさに頬を緩めた。
「……僕も大体誰かはわかってるよ……」
「……しばらくは家に居ろ」
「……わかった」
時くんの言葉に素直に頷いたら、わしゃわしゃと頭を撫でられて、その気持ちよさにふふって小さく声が漏れた。
時くんの膝の上に頭を乗せて、撫でられながらその心地良さを堪能する。
「時くんはいつから知ってたの?」
「屋上でお前が俺のこと可愛いとかぬかして来やがったときくらいだろ」
「そっか~……」
「大体お前が俺に隠し事できるわけねえだろ」
僕、結構隠し事得意な方なのに、時くんは鋭いんだなって思う。
ふわ~って欠伸をしたら寝ろって目を隠されたから、僕はそれに従って目を閉じた。
時くんにくっついているとぽかぽかな陽気に包まれているような、不思議な感覚になって直ぐに眠たくなる。
まるで原っぱに寝転んでいるようなそんな心地。
「……気持ちいい」
「俺は重い」
「……ならベッド行く」
「そのままでいい」
目を閉じながら冗談を言い合って、そうしていると少しずつ眠気が増していく。
「おやすみ」
そう言って僕は時くんに抱きついて眠りについた。
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