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俺の物〜時視点〜
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首を噛んだ日からあいつが学校に来なくなった。
あいつは休みだと毎回のように受ける報告に、強い喪失感を覚えて、イラつきが少しづつ増していった。
八つ当たりするように報告してきたやつを殴り飛ばして、近くにある物を蹴りつける。
そんなことしても奥で燻る感情はちっとも晴れなくて、逆にまたイライラさせられた。
なんで来ない?
なんで居ない?
また消えてしまった。
閉じ込めておけば良かったと暗い感情が蘇ってくる。傍に置いておくだけじゃあいつは縛れないなら、何処かに拘束してしまおうか。
そう思うけど、当の本人は姿を見せないからそれも出来やしない。
あいつの住んでるとこもわからなくて、何処を探せばいいのかすら検討もつかない。
なんで休んでるんだ……。
死んでないよな?
血を流す首を思い出してさーっと血の気が引く。でも、保健医に見せた時はちゃんと呼吸はしていた。大丈夫だと自分に言い聞かせる。
もしかして他の奴と寝てないよな?
そんなことまで勘ぐって、それを想像すると不快な気分が込み上げてきた。また近くにあった物を殴り飛ばす。
あいつのことがなにもわからねえ。
あいつは俺のことならなんでも分かりますみたいな顔して澄ましてるのに、俺はあいつのことなんて何も知らねえし知ろうと思ったこともねえ。
ムカつく……。
俺をこんな気分にさせるあいつにも心底腹が立った。
あんな大した特徴もないような不細工に、踊らされてる自分が酷く滑稽に思えるのに、あいつがいないと俺は海の底に沈められたみたいに呼吸すらままならない気がする。
会いたい。
強く思った。
会ったらなんて言おう……会ったら……そうだ……。
お前のこと大切にしたいって伝えないと。
そう思ったんだ。
あいつをまた見るまではそう思ってたんだ。
どうせ今日も居ねえって思うくせに律儀にあいつを迎えに人を向かわせる。
「あのパシリびびって逃げたんじゃねww」
屋上で集まっている不良の中の一人が結構な大声で他の奴らに言ってるのが聞こえて、俺はイラついてそいつを殴るために近づいた。
「おい」
「な、なんすか?……うわあっ!」
胸ぐらを掴んで腕を振り上げる。
どいつもこいつもイラつく。
「朔間さん連れてきたっすよ」
そのとき、タイミング良く扉が開いて迎えによこしたやつが帰ってきた。
視線を向けると、そこに居るのが当然のようにあいつは扉の前に立っていて、思わず掴んでいたやつの服を離す。
なにもかもがどうでもよくなった。
あいつが目の前に居るってことにしか意識が行かなくて、周りなんて一瞬で見えなくなる。
「なんで来なかった」
「色々忙しくて休んでたから」
そいつはいつもみたいに澄ました顔であっさりとそんなことを口走った。
そんなんで納得できると思ってんのか。
イラついて、そいつの腕を掴んで引きずっていく。
考えてたことも、大切にしたいって言葉も全部吹っ飛んで、こいつにわからせてやらないとってそればかりが脳をチラついた。
俺から離れたら許さねえってわからせねえと駄目だ。
そうじゃないとまた居なくなる。
空き教室にこいつを投げ捨てて、欲望のまま組み敷いた。治りかけの首に噛み付いてまた跡を残すと、こいつが俺のだって証明されたみたいで安心感を覚える。
痛いと抗議するそいつの声を無視して、体をまさぐってはまた噛んで、こいつが他の奴に触れられてないか、変わったところがないかを隅々まで調べる。
そのときに古傷の痕を見つけて、これをつけたやつを本気で殺そうと思った。なのに、そいつはもう死んでる、なんて訳わかんねえこと言いやがるから拍子抜けする。
こいつにはいつもペースを乱される。
なにも思い通りには行かなくて、そんなこいつを俺の思い通りに出来るならそれほど甘美なことはないとすら思えた。
「……時くんもうダメ」
拒否するように開いているシャツを閉じるそいつにイラついた。
そんなことしても煽るだけだって気づかないこいつは本当に馬鹿だと思う。
しかも、こいつはまた俺に嘘をついた。
お前がβ?
そんな見え透いた嘘、俺に通じるわけねえだろ。
「言ったよなお前は俺の物だって」
だから拒否は許さねえ。
「それはわかってるよ」
そんなの口先だけだろ?
現にお前は俺の前から居なくなったじゃねえか。
「わかってねえ」
「……じゃあ、どうしたらいいの……」
そんなの決まってる。
お前は大人しく俺に支配されてればいいんだ。
そうじゃないなら身体に教えてやるだけだ。
お前は俺の物で、俺のオメガで、俺の……
「黙って俺に抱かれてろ」
その先は上手く言葉に出来なくて、出てきたのはそんな大切とは程遠い言葉だけだった。
あいつは休みだと毎回のように受ける報告に、強い喪失感を覚えて、イラつきが少しづつ増していった。
八つ当たりするように報告してきたやつを殴り飛ばして、近くにある物を蹴りつける。
そんなことしても奥で燻る感情はちっとも晴れなくて、逆にまたイライラさせられた。
なんで来ない?
なんで居ない?
また消えてしまった。
閉じ込めておけば良かったと暗い感情が蘇ってくる。傍に置いておくだけじゃあいつは縛れないなら、何処かに拘束してしまおうか。
そう思うけど、当の本人は姿を見せないからそれも出来やしない。
あいつの住んでるとこもわからなくて、何処を探せばいいのかすら検討もつかない。
なんで休んでるんだ……。
死んでないよな?
血を流す首を思い出してさーっと血の気が引く。でも、保健医に見せた時はちゃんと呼吸はしていた。大丈夫だと自分に言い聞かせる。
もしかして他の奴と寝てないよな?
そんなことまで勘ぐって、それを想像すると不快な気分が込み上げてきた。また近くにあった物を殴り飛ばす。
あいつのことがなにもわからねえ。
あいつは俺のことならなんでも分かりますみたいな顔して澄ましてるのに、俺はあいつのことなんて何も知らねえし知ろうと思ったこともねえ。
ムカつく……。
俺をこんな気分にさせるあいつにも心底腹が立った。
あんな大した特徴もないような不細工に、踊らされてる自分が酷く滑稽に思えるのに、あいつがいないと俺は海の底に沈められたみたいに呼吸すらままならない気がする。
会いたい。
強く思った。
会ったらなんて言おう……会ったら……そうだ……。
お前のこと大切にしたいって伝えないと。
そう思ったんだ。
あいつをまた見るまではそう思ってたんだ。
どうせ今日も居ねえって思うくせに律儀にあいつを迎えに人を向かわせる。
「あのパシリびびって逃げたんじゃねww」
屋上で集まっている不良の中の一人が結構な大声で他の奴らに言ってるのが聞こえて、俺はイラついてそいつを殴るために近づいた。
「おい」
「な、なんすか?……うわあっ!」
胸ぐらを掴んで腕を振り上げる。
どいつもこいつもイラつく。
「朔間さん連れてきたっすよ」
そのとき、タイミング良く扉が開いて迎えによこしたやつが帰ってきた。
視線を向けると、そこに居るのが当然のようにあいつは扉の前に立っていて、思わず掴んでいたやつの服を離す。
なにもかもがどうでもよくなった。
あいつが目の前に居るってことにしか意識が行かなくて、周りなんて一瞬で見えなくなる。
「なんで来なかった」
「色々忙しくて休んでたから」
そいつはいつもみたいに澄ました顔であっさりとそんなことを口走った。
そんなんで納得できると思ってんのか。
イラついて、そいつの腕を掴んで引きずっていく。
考えてたことも、大切にしたいって言葉も全部吹っ飛んで、こいつにわからせてやらないとってそればかりが脳をチラついた。
俺から離れたら許さねえってわからせねえと駄目だ。
そうじゃないとまた居なくなる。
空き教室にこいつを投げ捨てて、欲望のまま組み敷いた。治りかけの首に噛み付いてまた跡を残すと、こいつが俺のだって証明されたみたいで安心感を覚える。
痛いと抗議するそいつの声を無視して、体をまさぐってはまた噛んで、こいつが他の奴に触れられてないか、変わったところがないかを隅々まで調べる。
そのときに古傷の痕を見つけて、これをつけたやつを本気で殺そうと思った。なのに、そいつはもう死んでる、なんて訳わかんねえこと言いやがるから拍子抜けする。
こいつにはいつもペースを乱される。
なにも思い通りには行かなくて、そんなこいつを俺の思い通りに出来るならそれほど甘美なことはないとすら思えた。
「……時くんもうダメ」
拒否するように開いているシャツを閉じるそいつにイラついた。
そんなことしても煽るだけだって気づかないこいつは本当に馬鹿だと思う。
しかも、こいつはまた俺に嘘をついた。
お前がβ?
そんな見え透いた嘘、俺に通じるわけねえだろ。
「言ったよなお前は俺の物だって」
だから拒否は許さねえ。
「それはわかってるよ」
そんなの口先だけだろ?
現にお前は俺の前から居なくなったじゃねえか。
「わかってねえ」
「……じゃあ、どうしたらいいの……」
そんなの決まってる。
お前は大人しく俺に支配されてればいいんだ。
そうじゃないなら身体に教えてやるだけだ。
お前は俺の物で、俺のオメガで、俺の……
「黙って俺に抱かれてろ」
その先は上手く言葉に出来なくて、出てきたのはそんな大切とは程遠い言葉だけだった。
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