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時くんは僕の胸倉を掴んだまま何かを確かめるようにじっと僕のことを見つめてくる。
その不躾な視線にすらドキドキしてしまう僕はきっと時くんになら何されても黙って受け入れるんだろうと思う。
じっと時くんの顔を見つめていると彼が先に僕から一瞬だけ視線を外した。
それから掴んでいた胸倉を離すと僕の頭を鷲掴みにした時くんが底冷えのするような低い声で僕に顔を近づけてから囁いた。
「お前今日から俺のパシリな」
「…パシリ?」
それってつまり…え?どういうこと??
言われた言葉が上手く飲み込みなくて混乱している僕に彼は思いっきり舌打ちをしてから近くにあった机を蹴った。
その派手な音にビクリと反応すると彼が心底怠そうに僕に向かって命令してくる。
「何してんだよさっさと飯買ってこい」
「…へ!!?、あっ、う、うん」
突然の理不尽な要求に咄嗟に頷いてあわあわと空き教室から駆け出した僕はとりあえず購買部へと全力疾走する。
パシリだとか、ご飯用のお金は渡されなかったとかそんなのは今はどうでも良くて彼が僕にお願いをしてくれた事がありえないぐらい嬉しいと感じてしまって思わずふへへってキモイ声を出しながらにやけてしまう。
購買部に着くとざっと並べられている商品を確認しておばちゃんに次々に買うものを伝えていく。
お昼も中盤に差し掛かっている今はパンもご飯物もほとんど売り切れていて穴あき状態だけど全然問題はない。
時くんの好きな物は当たり前だけど把握しているし購買部でいつも何を食べるかも分かっている。そのいつも食べる商品が生徒からは全然人気のない、激辛すぎる真カレーパンと激甘ないちごパックジュースだと言うのも勿論知っているから焦りはしない。
おばちゃんにお金を渡してパンとジュースを受け取ると僕はまた全力疾走して空き教室へと向かった。
「お待たせっ…て、、いない」
誰もいない空き教室に拍子抜けして場所を間違えたかとプレートを確認してみるけれどそんなことはない。
そこでふと、思い至って僕はまた廊下を駆け出すと屋上へと向かった。
彼はご飯の時は不良仲間と集まって屋上に居るからきっとそこだと目星をつける。
待つのが嫌で先に行ったのかもしれないなって呑気に思いながら僕は更に屋上へと急いだ。
屋上の扉の前に着くと走ったせいで荒くなった息を整えてから扉を開いた。
ギィっていう鉄の擦れる鈍い音が鳴って、その音に反応して屋上に集まっていた不良さん達が一斉にこっちを見る。
誰あいつって誰かが言ってその声を浴びて更に体が強ばる。ビクつきながら恐る恐る屋上へと足を踏み入れた。
金や緑、派手な髪色の不良さん達の中から僕は直ぐに時くんを見つけて真っ直ぐに時くんの所へと向かう。
「おい、なに朔間さんに近づこうとしてんだあ??」
前の方に座ってた金髪の不良さんに声をかけられて、ドンッと胸を思い切り押されて僕は尻もちを着いた。
「……っ……」
鈍い痛みに顔を歪めると不良さんが更に追い打ちをかけるように僕に向かって足を伸ばしてきて身構える。
「本田うるせえぞ」
その時、彼の声が飛んできてピタリと金髪不良さんが足を止めた。
間一髪蹴り飛ばされそうになっていた僕はほっと胸を撫で下ろして今のうちにと不良さんの横を通り過ぎて時くんの所にたどり着いた。
「これっ、ご飯っ」
「遅せえ」
文句を言うくせにしっかりと僕から袋を受け取った彼は中身を見て微かに驚いた顔になった。
その表情の変化を見逃さなかった僕は写真撮りたいって思わずポケットに手をやって、そういえばスマホは時くんに壊されたことを思い出す。
残念に思いながら、脳内にしっかりと今の表情を焼き付けておく。
「あれっ、時の好きなやつじゃんっ。すっご~い」
時くんの隣に座っていた柴くんが、袋の中身を見ながら眉間に皺を寄せている時くんに気がついて、自分も袋の中を見た。
「時くんの好きな物を把握しておくのは当然のことだから」
笑顔で応えると時くんの眉間の皺が更に増す。
「……きめえ」
忌々しげに袋の中を見つめながら僕の言葉を聞いてそう呟いた時くんはお腹が空くのには抗えないのか渋々袋からカレーパンを取り出して袋を開けた。
もぐもぐと大口を開けてカレーパンを頬張る時くんは僕の存在はもう忘れちゃってるのか放ったらかされて少し困る。
頬をパンパンにしている時くんは何だかリスみたいで可愛くていつまでも見てられるんだけど、不良さん達に異物認定されている僕は周りから注がれる冷たい視線にたえられそうにもない。
正直、時くんのことは全然怖いと思わないけど周りの不良さんは柴くん含めて皆怖い。
時くんをこんなに間近で見れることなんて今を逃したらもう無いかもしれないからしっかりと堪能したいのに不良さん達がそれを許してくれない。
「新しいパシリっすか~!」
突然さっきの金髪不良さんがそんなことを言ってにやにやし始める。
でも時くんはそれが聞こえてないみたいに視線すら彼に向けない。
「おいパシリ、俺の飯も買ってこいよ」
グイッて乱暴に肩を掴まれてよろけた僕はまた床に尻もちを着いて、その時についた手首がズキリと悲鳴をあげた。
「……わ、わかった……」
絡まれるのも面倒で承諾して立ち上がるとまた購買部に行くために時くんに背を向ける。
もっと可愛い時くんを堪能したかったのにこんなのあんまりだっ!って内心悪態をつきつつ前に進もうとした時、おいって呼び止められて僕は動きを止めた。
その不躾な視線にすらドキドキしてしまう僕はきっと時くんになら何されても黙って受け入れるんだろうと思う。
じっと時くんの顔を見つめていると彼が先に僕から一瞬だけ視線を外した。
それから掴んでいた胸倉を離すと僕の頭を鷲掴みにした時くんが底冷えのするような低い声で僕に顔を近づけてから囁いた。
「お前今日から俺のパシリな」
「…パシリ?」
それってつまり…え?どういうこと??
言われた言葉が上手く飲み込みなくて混乱している僕に彼は思いっきり舌打ちをしてから近くにあった机を蹴った。
その派手な音にビクリと反応すると彼が心底怠そうに僕に向かって命令してくる。
「何してんだよさっさと飯買ってこい」
「…へ!!?、あっ、う、うん」
突然の理不尽な要求に咄嗟に頷いてあわあわと空き教室から駆け出した僕はとりあえず購買部へと全力疾走する。
パシリだとか、ご飯用のお金は渡されなかったとかそんなのは今はどうでも良くて彼が僕にお願いをしてくれた事がありえないぐらい嬉しいと感じてしまって思わずふへへってキモイ声を出しながらにやけてしまう。
購買部に着くとざっと並べられている商品を確認しておばちゃんに次々に買うものを伝えていく。
お昼も中盤に差し掛かっている今はパンもご飯物もほとんど売り切れていて穴あき状態だけど全然問題はない。
時くんの好きな物は当たり前だけど把握しているし購買部でいつも何を食べるかも分かっている。そのいつも食べる商品が生徒からは全然人気のない、激辛すぎる真カレーパンと激甘ないちごパックジュースだと言うのも勿論知っているから焦りはしない。
おばちゃんにお金を渡してパンとジュースを受け取ると僕はまた全力疾走して空き教室へと向かった。
「お待たせっ…て、、いない」
誰もいない空き教室に拍子抜けして場所を間違えたかとプレートを確認してみるけれどそんなことはない。
そこでふと、思い至って僕はまた廊下を駆け出すと屋上へと向かった。
彼はご飯の時は不良仲間と集まって屋上に居るからきっとそこだと目星をつける。
待つのが嫌で先に行ったのかもしれないなって呑気に思いながら僕は更に屋上へと急いだ。
屋上の扉の前に着くと走ったせいで荒くなった息を整えてから扉を開いた。
ギィっていう鉄の擦れる鈍い音が鳴って、その音に反応して屋上に集まっていた不良さん達が一斉にこっちを見る。
誰あいつって誰かが言ってその声を浴びて更に体が強ばる。ビクつきながら恐る恐る屋上へと足を踏み入れた。
金や緑、派手な髪色の不良さん達の中から僕は直ぐに時くんを見つけて真っ直ぐに時くんの所へと向かう。
「おい、なに朔間さんに近づこうとしてんだあ??」
前の方に座ってた金髪の不良さんに声をかけられて、ドンッと胸を思い切り押されて僕は尻もちを着いた。
「……っ……」
鈍い痛みに顔を歪めると不良さんが更に追い打ちをかけるように僕に向かって足を伸ばしてきて身構える。
「本田うるせえぞ」
その時、彼の声が飛んできてピタリと金髪不良さんが足を止めた。
間一髪蹴り飛ばされそうになっていた僕はほっと胸を撫で下ろして今のうちにと不良さんの横を通り過ぎて時くんの所にたどり着いた。
「これっ、ご飯っ」
「遅せえ」
文句を言うくせにしっかりと僕から袋を受け取った彼は中身を見て微かに驚いた顔になった。
その表情の変化を見逃さなかった僕は写真撮りたいって思わずポケットに手をやって、そういえばスマホは時くんに壊されたことを思い出す。
残念に思いながら、脳内にしっかりと今の表情を焼き付けておく。
「あれっ、時の好きなやつじゃんっ。すっご~い」
時くんの隣に座っていた柴くんが、袋の中身を見ながら眉間に皺を寄せている時くんに気がついて、自分も袋の中を見た。
「時くんの好きな物を把握しておくのは当然のことだから」
笑顔で応えると時くんの眉間の皺が更に増す。
「……きめえ」
忌々しげに袋の中を見つめながら僕の言葉を聞いてそう呟いた時くんはお腹が空くのには抗えないのか渋々袋からカレーパンを取り出して袋を開けた。
もぐもぐと大口を開けてカレーパンを頬張る時くんは僕の存在はもう忘れちゃってるのか放ったらかされて少し困る。
頬をパンパンにしている時くんは何だかリスみたいで可愛くていつまでも見てられるんだけど、不良さん達に異物認定されている僕は周りから注がれる冷たい視線にたえられそうにもない。
正直、時くんのことは全然怖いと思わないけど周りの不良さんは柴くん含めて皆怖い。
時くんをこんなに間近で見れることなんて今を逃したらもう無いかもしれないからしっかりと堪能したいのに不良さん達がそれを許してくれない。
「新しいパシリっすか~!」
突然さっきの金髪不良さんがそんなことを言ってにやにやし始める。
でも時くんはそれが聞こえてないみたいに視線すら彼に向けない。
「おいパシリ、俺の飯も買ってこいよ」
グイッて乱暴に肩を掴まれてよろけた僕はまた床に尻もちを着いて、その時についた手首がズキリと悲鳴をあげた。
「……わ、わかった……」
絡まれるのも面倒で承諾して立ち上がるとまた購買部に行くために時くんに背を向ける。
もっと可愛い時くんを堪能したかったのにこんなのあんまりだっ!って内心悪態をつきつつ前に進もうとした時、おいって呼び止められて僕は動きを止めた。
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