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「これは俺じゃない」
「イズ?」
悲しげな声でつぶやいたイズは真っ直ぐに俺の顔を見つめながら泣きそうに綺麗な微笑みを浮かべる。
「あんたは俺のことを見てくれるって約束してよ」
「また約束かい?」
「叶えてくれるでしょ」
叶えるよって言葉は喉につっかえて出てこない。それよりも君にそんな顔をさせているモノが何なのかを知りたい。
「……ねえ、イズ。俺の愛は君にだけ向けられているんだ。だから、約束なんてしなくてもいいんだよ」
だからそんな辛そうな顔をしないでよ。
「それじゃ、俺が信じられないだろ」
イズの言葉につきりと胸が傷んだけれど、俺はなんでもない振りをして、分かったよって微笑んでみせた。
「そうだイズの日用品を買ってこないといけないね」
話題を変えるために話を振ると、イズがまた手元にあったグッズを袋に放り入れる。
「テキトーに買ってきて」
「そんな!テキトーなんて駄目だよ。イズの好みでそろえてくるからね」
「俺の好みとか知ってんの?」
「当り前じゃないか。イズのことならなんだって知ってるよ」
にこにこと微笑みを浮かべながら即答すれば、イズは心底気持ち悪いものでも見るような眼で俺のことを見てきた。その瞳に見つめられるとゾクゾクしてたまらなく気分が上がってくる。
「なら俺の本名も知ってるわけ?」
「もちろんだよ。世研伊月君」
「……やっぱキモイねあんた」
「あんたじゃなくて護だよ。本田護」
「そう」
イズの柔らかな髪を撫でながら教えてあげると、興味なさげに相槌を打ったイズが視線を手元へと戻す。その冷たい反応にクスリと笑みがこぼれた。
歌手としてのイズはどんな時でも笑顔を絶やさない。明るくて人懐っこくて、天津爛漫なイズらしいポップで元気な曲が売りだ。
けれど今目の前にいる彼はそんなイズとは全くの正反対。
笑わないしぶっきらぼう。口も悪くて、でも整いすぎた顔のせいなのかそれが良いスパイスとして彼に色気を与えている。
どちらの彼も好きだ。子犬のように愛らしいイズも、子猫のように気分屋なイズも、俺にとっては全部ひっくるめて愛してやまない伊月だから。
「何か欲しいものはあるかい」
「特にない」
そう答えたイズの視線が一瞬だけ、飾られているギターへと向けられたのを俺は見逃さなかった。
そういえばこの家に招待した日、珍しくイズは愛用しているギターを持っていなかったことを思い出す。いつもは肌身離さず持っているはずなのに……。
「イズ?」
悲しげな声でつぶやいたイズは真っ直ぐに俺の顔を見つめながら泣きそうに綺麗な微笑みを浮かべる。
「あんたは俺のことを見てくれるって約束してよ」
「また約束かい?」
「叶えてくれるでしょ」
叶えるよって言葉は喉につっかえて出てこない。それよりも君にそんな顔をさせているモノが何なのかを知りたい。
「……ねえ、イズ。俺の愛は君にだけ向けられているんだ。だから、約束なんてしなくてもいいんだよ」
だからそんな辛そうな顔をしないでよ。
「それじゃ、俺が信じられないだろ」
イズの言葉につきりと胸が傷んだけれど、俺はなんでもない振りをして、分かったよって微笑んでみせた。
「そうだイズの日用品を買ってこないといけないね」
話題を変えるために話を振ると、イズがまた手元にあったグッズを袋に放り入れる。
「テキトーに買ってきて」
「そんな!テキトーなんて駄目だよ。イズの好みでそろえてくるからね」
「俺の好みとか知ってんの?」
「当り前じゃないか。イズのことならなんだって知ってるよ」
にこにこと微笑みを浮かべながら即答すれば、イズは心底気持ち悪いものでも見るような眼で俺のことを見てきた。その瞳に見つめられるとゾクゾクしてたまらなく気分が上がってくる。
「なら俺の本名も知ってるわけ?」
「もちろんだよ。世研伊月君」
「……やっぱキモイねあんた」
「あんたじゃなくて護だよ。本田護」
「そう」
イズの柔らかな髪を撫でながら教えてあげると、興味なさげに相槌を打ったイズが視線を手元へと戻す。その冷たい反応にクスリと笑みがこぼれた。
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けれど今目の前にいる彼はそんなイズとは全くの正反対。
笑わないしぶっきらぼう。口も悪くて、でも整いすぎた顔のせいなのかそれが良いスパイスとして彼に色気を与えている。
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