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抱きしめて
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ノワール様は珍しく神殿には寄らずに帰ってしまった。それに心底安堵した。自室に戻ると、アンに手当をしてもらい着替えた。手紙はソラリスに預けようと思う。僕が持っていても上手く扱えない気がするから。盗んだことには後ろめたさを感じたけれど、きっとこれが大切な証拠になるはずだ。
「怪我をされたと聞きました」
ソラリスが部屋に入ってきて、心配げな視線を向けてくれる。
確かに怪我はしたけれど、いつものに比べれば大したことはない。それに、ノワール様の必死な様子を思い出すと、恐怖は浮かんでこなかった。
「平気だよ。それより、調べて欲しいことがあるんだ」
ソラリスの耳元で、ヴァーガンディー様とキャンベル公爵様の関係について調べて欲しいと囁く。誰かに聞かれるとまずいからね。
手紙も手渡すと、しっかりと受け取ってくれた。
「……確かにそれは妙ですね。なにかわかったらすぐに知らせます」
「お願いね。ねえ、もう一つお願いがあるんだ。護衛騎士ではなく、幼馴染のソラリスへのお願い」
ずっと緊張していたせいか、すごく疲れてしまった。だから、癒しが欲しい。大きく腕を広げて、上目遣いにソラリスを見る。
「抱きしめて欲しいんだ」
一瞬驚いた顔をしたソラリスは、すぐに甘い笑を浮かべながら抱きしめ返してくれた。ソラリスの香りに包まれると、辛いことも全部吹っ飛んでしまう。彼がいるから頑張れる。
「ありがとう」
「こんなに可愛いお願いならいつでも叶えてあげるよ」
背中を撫でられて、思わず笑顔になった。まるで綿飴みたいに甘い言葉が、心に浸透していく。大好きって、今すぐ神殿に響くくらい叫んでしまいたくなった。
「怪我をされたと聞きました」
ソラリスが部屋に入ってきて、心配げな視線を向けてくれる。
確かに怪我はしたけれど、いつものに比べれば大したことはない。それに、ノワール様の必死な様子を思い出すと、恐怖は浮かんでこなかった。
「平気だよ。それより、調べて欲しいことがあるんだ」
ソラリスの耳元で、ヴァーガンディー様とキャンベル公爵様の関係について調べて欲しいと囁く。誰かに聞かれるとまずいからね。
手紙も手渡すと、しっかりと受け取ってくれた。
「……確かにそれは妙ですね。なにかわかったらすぐに知らせます」
「お願いね。ねえ、もう一つお願いがあるんだ。護衛騎士ではなく、幼馴染のソラリスへのお願い」
ずっと緊張していたせいか、すごく疲れてしまった。だから、癒しが欲しい。大きく腕を広げて、上目遣いにソラリスを見る。
「抱きしめて欲しいんだ」
一瞬驚いた顔をしたソラリスは、すぐに甘い笑を浮かべながら抱きしめ返してくれた。ソラリスの香りに包まれると、辛いことも全部吹っ飛んでしまう。彼がいるから頑張れる。
「ありがとう」
「こんなに可愛いお願いならいつでも叶えてあげるよ」
背中を撫でられて、思わず笑顔になった。まるで綿飴みたいに甘い言葉が、心に浸透していく。大好きって、今すぐ神殿に響くくらい叫んでしまいたくなった。
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