聖女オメガは護衛騎士アルファの手を離さない

天宮叶

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絡まる指先

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去っていくノワール様を見送ってから会場を出ると、再び馬車へと乗り込む。外はすっかり暗闇に包まれていて、エスコートしてくれるソラリスと手を離すのは少しだけ心細い。
添えていた手に力を込めると、驚いた表情を浮かべたソラリスが僕の表情を伺ってくる。

「あ……その、一緒に乗らない?」

行きは馬で追いかけて来てくれたけれど、本当は隣に居てほしかったんだ。
護衛騎士と聖女の距離感は普通そういうものだ。だから、本当は一緒に馬車に乗るなんて許されない。わかっている。それでも、ソラリスと一緒に寄り添って帰りたい。

「……どうやら聖女様は足をくじかれてしまったようですね。俺が一緒にお乗りして手当をしてもよろしいですか?」
「っ! う、うん」

嬉しくて少しだけ大きな声で返事をしてしまう。

「それでは、失礼します」

手を離したソラリスに突然抱き上げられて、思わず首にしがみついた。そのまま馬車に乗せられて、胸いっぱいに幸せが溢れ出す。馬車の扉が閉まってからも、降ろしてくれる気配はなくて、ドキドキが止まらない。

「真っ赤だ」

鼻の頭を突かれて、ますます体温が上昇する。ソラリスに触れられているだけで、自分の中の欲が溢れだしてくる。馬車の中に充満していくソラリスの匂いに酔いそうだ。

「フェロモンが溢れているね」
「ソラリスのせいだよ」

 大好きな人と触れ合っているんだから仕方ないと思う。
頬を膨らませると、そこにキスが落とされる。フェロモンにあてられているのか、目尻を赤く染めたソラリスが僕の太ももを軽く撫でてきた。触れられた瞬間、そこがすごく熱く感じて甘い声が漏れる。お腹の奥がジリジリして、もっと触れて欲しいと思ってしまう。

「ソラリスちゅーしよう」

 ねだるように首にしがみついて、顔を近づける。少し意地悪な表情を浮かべたソラリスが、後頭部に手を回しながら唇を重ねてくれる。

「おねだりが上手だな」
「んっ、ソラリス、すきっ」

何度もしたはずのキスなのに、数を重ねる度に気持ちよさは増していく。もっとソラリスのことが欲しい。お互いのフェロモンが混ざり合うと、興奮はさらに高まる。
太ももにあった手が背に回されて、布を掻い潜るように地肌に触れてきた。指先が背筋を撫でてきて、全身が跳ねる。触られているだけなのに、どうしてこんなにも気持ちいいんだろう。
きっとソラリスのことが大好きだからだ。ノワール様に触れられても、こんな気持ちには絶対にならない。村で過ごしていた頃から、僕はソラリスだけを見つめていた。ソラリスも同じ気持ちならいいのに。

「ソラリス、好き、すきだよ」
「俺もだ。愛してる」
「っ、嬉しい」

唾液同士を交換しながら、お互いの存在を貪るように確認する。
身体を反転させてソラリスに背後から抱きしめられる体勢になると、後ろから下半身を両手で包まれて前のめりになった。衣装がはだけて、蝶のように舞う。それに合わせるように、馬車の中に喘ぎ声が響いた。
「静かにしないと御者に聞こえてしまうよ」
「あ、んっ、無理だよぉ。ソラリスのいじわるっ」

大きく足を広げさせられて下半身が外気に晒される。恥ずかしい格好をさせられているはずなのに、今はそれすら興奮を煽る材料の一つになっていた。

「ひゃぁ、あんっ、そこダメぇ!」
「もうこんなにトロトロになっている。フィーはエッチだな」

昂ったペニスを大きな手がゆっくりと上下に扱いてくる。指先で亀頭を刺激され、カリ部分を撫でられて腰が浮く。気持ちよくておかしくなってしまいそう。頭の奥が真っ白になって、天国にいるような心地がする。

「きもちいいよぉ……あんっ、んん」

気持ちよさと溶けてしまいそうなほどの多幸感に、口元が緩んで涎が垂れる。先走りが、大きくて男らしいソラリスの手を濡らしていく。それが羞恥心を煽り、フェロモンが更に溢れてきた。
馬車の中でこんなことをしたらいけないとはわかっている。それなのに乱れるのを止められないし、ソラリスの手も止まらない。

「首輪、痛くないか」

擦れた首を労わるように、項の上にキスをされる。その瞬間、全身に電気が走ったような感覚がして、呆気なく白濁が飛び散った。
噛まれたわけでもないのに、胸いっぱいの幸せを感じる。噛んでほしい。なのに実際はたった一つに首輪に遮られて番になることはできない。

「あぅ、やぁっ」
「キスだけでイクなんて……。本当にエロいな」
「だ、だってぇ……うぅ、ソラリスと番になりたいよぉ」

首輪さえなければ今すぐ彼と繋がって、番になれるかもしれないのに。でも、そうなったらノワール様は激昂してソラリスに酷い仕打ちをするのだろう。なによりもそれが一番怖い。
僕のせいでまたソラリスが傷つく姿は見たくないんだ。だから我慢しないといけない。
胸が苦しいよ……。ハラハラと涙が流れ落ちる。その涙を指先が掬い取ってくれた。

「絶対に俺が救い出してやる」
「っ、うん」

抱きしめられると安心できる。太ももを流れる白濁は、ソラリスのために流した欲だ。髪の先から爪先まで、自らのすべてをあげてもいいと思えるのはソラリスだけ。
だからこそ、時々身がすくみそうになるほどに怖くなる。もしもこのまま、逃れられなければ、またソラリスと離れ離れになって、今度こそ一生会えなくなってしまうのではないかと。

「ソラリス、手を握っていてほしい」
「フィーが安心するまでずっと握っておくよ」

指が交差して絡まる。こうしていれば安心できるんだ。ほっと息を吐き出すと、不安が逃げていってくれるような気がした。
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