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パーティーにて③
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「立って」
やばいと思った瞬間、耳元で囁かれて誰かに手を引かれた。赤髪が視界に映り、安堵感が胸を覆う。そのまま近くの出入口から外に連れ出される。危機一髪でノワール様にはバレていなかったようで、追いかけられることはなかった。
「はぁ、ソラリスありがとう」
「念の為見張っていてよかった」
「ごめんね。助かったよ」
ソラリスが居てくれて本当によかった。未だに胸が嫌な音を立てている。バレていたらノワール様になにをされてしまったかわからない。落ち着かせるために、胸元を手で軽く叩く。
「それで、なにかいい情報は手に入ったのか?」
「うん。あのね、僕、ヒューズ伯爵様に会いに行こうと思う」
「前王妃様であるクレア様のご実家のか? 会いに行くにしても、勝手に神殿を抜け出すことはできないうえに、ノワール様の婚約者であるフィーの話を聞いてくれるかどうか……」
その通りだ。でも、伯爵に助けを乞う他に方法が浮かばないのも事実だ。それに、ツテがない訳ではない。
「伯爵様に掛け合うための心当たりがあるから、そこをあたってみようと思う」
たしかオスカー様はヒューズ伯爵様と交流があったはずだ。
「……そうか。何度も言うけれど無理だけはしたらだめだからな」
「うん! 大丈夫だよ。僕にはソラリスっていう騎士様がついているから」
満面の笑みで答える。ソラリスがいればなんだって平気だと思えるんだ。笑顔の僕を見てソラリスも微笑みを向けてくれる。すごく甘い表情。今すぐキスして欲しいって思ってしまう。でも、今はダメだよね……。
「キスしてほしそうな顔をしてる」
唇に指がそわされて、顔が熱くなった。やっぱり僕ってわかりやすいのかな。顔が近づいてくる。頭ではこんなのダメだってわかっているんだ。いくら嫌いだとしても、僕はノワール様の婚約者だから。それでも、気持ちが抑えられない。
薄くて形のいい唇が壊れ物を扱うみたいに触れてきて、すぐに離れた。たったそれだけの触れ合いに胸を掻き乱される。
「行こう。居ないとバレたらフィーが怒られてしまう」
「……うん」
本当はもっと触れ合っていたい。この先へ進みたい。ソラリスと番になりたいんだ。感情ばかりが溢れてくる。唇に先程の余韻がまだ残っていて、そっと指を持っていく。切なくて甘酸っぱいような心地がした。
ソラリスはずるいと思う。いつも僕の心をかき乱すんだ。どんどん深みにはまっていく。どれだけ僕達の恋愛に壁があったとしても、好きだって気持ちには抗えない。
会場に戻ると、僕のことを見つけたノワール様が早足に近づいてきた。僕の後に控えているソラリスを見て眉を寄せる。
「大人しくしていろと言っただろう」
「少し疲れてしまったので別室で休んでいました」
苦しい言い訳だ。追及されたら嘘をつき通すのは無理だろう。
「……まあいい。お前は先に神殿に戻っていろ」
凍り付くような鋭い流し目が一瞬だけこちらを見て、そらされた。
「……わかりました」
ノワール様にしてはあっさりと追求をやめてくれる。助かったけれど、少し不気味にも感じてしまう。もしかしたら流石の彼も、人の目がある場所では派手なことはできないのかもしれない。
(本当はこの場でヒューズ伯爵様に挨拶ができればよかったのだけれど、無理そうだね)
でも、収穫はあった。今日のところは我慢しよう。帰ったら今後のことについても考えないといけない。
やばいと思った瞬間、耳元で囁かれて誰かに手を引かれた。赤髪が視界に映り、安堵感が胸を覆う。そのまま近くの出入口から外に連れ出される。危機一髪でノワール様にはバレていなかったようで、追いかけられることはなかった。
「はぁ、ソラリスありがとう」
「念の為見張っていてよかった」
「ごめんね。助かったよ」
ソラリスが居てくれて本当によかった。未だに胸が嫌な音を立てている。バレていたらノワール様になにをされてしまったかわからない。落ち着かせるために、胸元を手で軽く叩く。
「それで、なにかいい情報は手に入ったのか?」
「うん。あのね、僕、ヒューズ伯爵様に会いに行こうと思う」
「前王妃様であるクレア様のご実家のか? 会いに行くにしても、勝手に神殿を抜け出すことはできないうえに、ノワール様の婚約者であるフィーの話を聞いてくれるかどうか……」
その通りだ。でも、伯爵に助けを乞う他に方法が浮かばないのも事実だ。それに、ツテがない訳ではない。
「伯爵様に掛け合うための心当たりがあるから、そこをあたってみようと思う」
たしかオスカー様はヒューズ伯爵様と交流があったはずだ。
「……そうか。何度も言うけれど無理だけはしたらだめだからな」
「うん! 大丈夫だよ。僕にはソラリスっていう騎士様がついているから」
満面の笑みで答える。ソラリスがいればなんだって平気だと思えるんだ。笑顔の僕を見てソラリスも微笑みを向けてくれる。すごく甘い表情。今すぐキスして欲しいって思ってしまう。でも、今はダメだよね……。
「キスしてほしそうな顔をしてる」
唇に指がそわされて、顔が熱くなった。やっぱり僕ってわかりやすいのかな。顔が近づいてくる。頭ではこんなのダメだってわかっているんだ。いくら嫌いだとしても、僕はノワール様の婚約者だから。それでも、気持ちが抑えられない。
薄くて形のいい唇が壊れ物を扱うみたいに触れてきて、すぐに離れた。たったそれだけの触れ合いに胸を掻き乱される。
「行こう。居ないとバレたらフィーが怒られてしまう」
「……うん」
本当はもっと触れ合っていたい。この先へ進みたい。ソラリスと番になりたいんだ。感情ばかりが溢れてくる。唇に先程の余韻がまだ残っていて、そっと指を持っていく。切なくて甘酸っぱいような心地がした。
ソラリスはずるいと思う。いつも僕の心をかき乱すんだ。どんどん深みにはまっていく。どれだけ僕達の恋愛に壁があったとしても、好きだって気持ちには抗えない。
会場に戻ると、僕のことを見つけたノワール様が早足に近づいてきた。僕の後に控えているソラリスを見て眉を寄せる。
「大人しくしていろと言っただろう」
「少し疲れてしまったので別室で休んでいました」
苦しい言い訳だ。追及されたら嘘をつき通すのは無理だろう。
「……まあいい。お前は先に神殿に戻っていろ」
凍り付くような鋭い流し目が一瞬だけこちらを見て、そらされた。
「……わかりました」
ノワール様にしてはあっさりと追求をやめてくれる。助かったけれど、少し不気味にも感じてしまう。もしかしたら流石の彼も、人の目がある場所では派手なことはできないのかもしれない。
(本当はこの場でヒューズ伯爵様に挨拶ができればよかったのだけれど、無理そうだね)
でも、収穫はあった。今日のところは我慢しよう。帰ったら今後のことについても考えないといけない。
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