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パーティーにて①
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聖女の着るパーティードレスは白を基調としたものと決まっている。白は聖女の神聖なイメージを象徴するのに便利な色だからだ。
「良くお似合いです」
着替えを手伝ってくれたアンに褒められて、こぼしかけていたため息を飲み込んだ。
「ありがとう」
無理矢理口角を上げてお礼を伝える。
真珠の粉を織り交ぜて作られた真っ白な衣装。ドレープ生地が動くたびに波打ち、まるで天使の羽のようにも見える。男なのに女性のような格好。昔からこんな感じだから慣れてしまった。普段着ですら、女性的なんだから文句を言っても仕方ないしね。
今日は決戦の場である王室パーティーが行われる日だ。婚約破棄のために些細なことでもいいから情報を手に入れたい。
ノック音が聞こえてきて、ソラリスが姿を見せる。護衛騎士として彼も参加するため、正装をしている。ブラックのスーツがスタイルのいいソラリスに良く似合っていて見惚れてしまう。
ソラリスが僕の隣に並んでエスコートをしてくれる場面を想像したら、ドキドキして顔が火照る。
「綺麗です」
「えへへ、ソラリスだってすごく格好いいよ」
今のソラリスは、貴族だと言われても謙遜のないほど様になっている。小さな田舎の村出身だとはとても思えない。本当に貴族だったならよかったのに。
そしたら、ソラリスと結ばれる運命もあったのかもしれない。
「そうだ、丁度よかった。これを返そうと思っていたんだ」
引き出しからブローチを取り出して手渡すと、ソラリスがそっと僕の手にブローチを戻した。不思議に思って首を傾げる。
「これは君が持っていてほしい」
「いいの?」
「いつだって俺は傍にいるという誓の証です」
嬉しくて、綺麗にお化粧してもらったのに涙が出てきそう。ソラリスの前だと、泣き虫になってしまう。
ソラリスの優しさや言葉が、心を何重にも覆って、強固にしてくれるんだ。
「ありがとう。嬉しい」
ブローチを胸元で握りしめて、満面の笑みを浮かべる。ソラリスが微笑みを浮かべながら、空いている僕の手を持って甲に唇を寄せてくれた。
「行きましょう」
ああ、もう。格好良すぎるよ。ソラリスから一秒だって目を離せない。ずっと触れていたい。ソラリスの隣に居たい。でも、それは今はまだ無理だ。
僕達の間にある壁をいつか壊せる日が来るだろうか……。手を離して部屋を出る。その手を握り続けられる日が来ることを、心の底から願っている。
ソラリスは僕の数歩後ろをゆっくりと着いてきてくれた。この距離感が酷くもどかしい
「良くお似合いです」
着替えを手伝ってくれたアンに褒められて、こぼしかけていたため息を飲み込んだ。
「ありがとう」
無理矢理口角を上げてお礼を伝える。
真珠の粉を織り交ぜて作られた真っ白な衣装。ドレープ生地が動くたびに波打ち、まるで天使の羽のようにも見える。男なのに女性のような格好。昔からこんな感じだから慣れてしまった。普段着ですら、女性的なんだから文句を言っても仕方ないしね。
今日は決戦の場である王室パーティーが行われる日だ。婚約破棄のために些細なことでもいいから情報を手に入れたい。
ノック音が聞こえてきて、ソラリスが姿を見せる。護衛騎士として彼も参加するため、正装をしている。ブラックのスーツがスタイルのいいソラリスに良く似合っていて見惚れてしまう。
ソラリスが僕の隣に並んでエスコートをしてくれる場面を想像したら、ドキドキして顔が火照る。
「綺麗です」
「えへへ、ソラリスだってすごく格好いいよ」
今のソラリスは、貴族だと言われても謙遜のないほど様になっている。小さな田舎の村出身だとはとても思えない。本当に貴族だったならよかったのに。
そしたら、ソラリスと結ばれる運命もあったのかもしれない。
「そうだ、丁度よかった。これを返そうと思っていたんだ」
引き出しからブローチを取り出して手渡すと、ソラリスがそっと僕の手にブローチを戻した。不思議に思って首を傾げる。
「これは君が持っていてほしい」
「いいの?」
「いつだって俺は傍にいるという誓の証です」
嬉しくて、綺麗にお化粧してもらったのに涙が出てきそう。ソラリスの前だと、泣き虫になってしまう。
ソラリスの優しさや言葉が、心を何重にも覆って、強固にしてくれるんだ。
「ありがとう。嬉しい」
ブローチを胸元で握りしめて、満面の笑みを浮かべる。ソラリスが微笑みを浮かべながら、空いている僕の手を持って甲に唇を寄せてくれた。
「行きましょう」
ああ、もう。格好良すぎるよ。ソラリスから一秒だって目を離せない。ずっと触れていたい。ソラリスの隣に居たい。でも、それは今はまだ無理だ。
僕達の間にある壁をいつか壊せる日が来るだろうか……。手を離して部屋を出る。その手を握り続けられる日が来ることを、心の底から願っている。
ソラリスは僕の数歩後ろをゆっくりと着いてきてくれた。この距離感が酷くもどかしい
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