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再会①
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神殿の大広間に用意された椅子へと腰かける。朝から奉仕活動を行ったあと、着替えをして護衛騎士を選ぶためにここに呼ばれた。
意地汚い貴族の相手をさせられてすごくむしゃくしゃしている。断って帰ってこようとも思ったけれど、またノワール様に怒鳴られるのも嫌で渋々力を使うしかなかった。ため息がこぼれそうになる。強気なフリをしているけれど、怖がりは昔から変わっていない。
「聖女様、護衛騎士候補を連れてまいりました。騎士団長直々に選定された候補ですので、誰を選んでも心配はいらないかと」
オスカー様が大広間へと入ってくる。その後ろに三名の騎士が続いていた。ふと、一番後ろに並んでいる騎士へと視線が向く。眩く燃えるような紅の髪に、精悍な顔つきの騎士。少しタレ目がちな鋭い瞳は珍しい緋色。真っ黒な騎士服に身を包む均衡のとれた身体は、遠目からでも鍛えられていることがわかる。
ふと、大好きだった幼馴染の姿が重なって見えた。そんなはずない……。違うとわかっているのに、見れば見るほどに似ている気がする。彼から目が離せなかった。全員が目の前に並んで、一人ずつ挨拶を始める。なのに、誰の声も耳に入ってはこない。
僕の視線は、真っ直ぐにこちらを見据えている緋色の瞳から一ミリもそれない。
何度も妄想していた。彼が成長したらどんな姿になるだろうかと。変わらなかった背は追い抜かれているんだろうな、とか。大人の色気が出てすごく格好よくなっているだろうな、とか。想像の中でしか会えなかった彼が、もしも今目の前に現れたとしたら僕はどうするんだろうなんて考えていた。
「ソラリスです」
艶やかで低いお腹に響くような声。真っ直ぐに僕の姿を映しだす瞳に吸い込まれてしまいそう。無意識のうちに立ち上がっていた。
「聖女様?」
オスカー様が声をかけてきたけれど、その声は意識の外に追いやられる。階段をゆっくりと降りていく。高揚感が胸の中を支配していた。全身が喜びに震え、熱くなっていく。
やっぱり僕よりずっと背が高い。彼の目の前で立ち止まると、恐る恐る伸ばした手を彼が握り返してくれた。温かな手だ。彼も少しだけ緊張しているのか、震えている。
「ソラリス。僕の騎士は君だけだ」
そうでしょう?
涙声で指名する。微笑みを浮かべたソラリスが膝を着いて、手の甲に忠誠の口付けを落としてくれた。
ソラリスは僕に嘘をつかない。ずっと信じていたよ。嬉しくて、胸が高鳴って、一筋涙がこぼれ落ちる。彼に触れられるとこんなにも幸せだと思える。
突然の指名に、周りがどよめいている。
オスカー様が僕達の近くまで来ると、頷いてくれる。
きっと僕の気持ちが伝わったんだ。
「ソラリス、君は聖女様に選ばれた。しっかりと仕えなさい」
「はい。俺が聖女様を命を賭してお守りします。決して傷つけたりはしません」
オスカー様の言葉に、立ち上がったソラリスがはっきりと応えてくれる。まるで生涯の誓いでもされたような心地になって、顔が熱くなった。こんな気持ちを感じるのはソラリスにだけだ。
意地汚い貴族の相手をさせられてすごくむしゃくしゃしている。断って帰ってこようとも思ったけれど、またノワール様に怒鳴られるのも嫌で渋々力を使うしかなかった。ため息がこぼれそうになる。強気なフリをしているけれど、怖がりは昔から変わっていない。
「聖女様、護衛騎士候補を連れてまいりました。騎士団長直々に選定された候補ですので、誰を選んでも心配はいらないかと」
オスカー様が大広間へと入ってくる。その後ろに三名の騎士が続いていた。ふと、一番後ろに並んでいる騎士へと視線が向く。眩く燃えるような紅の髪に、精悍な顔つきの騎士。少しタレ目がちな鋭い瞳は珍しい緋色。真っ黒な騎士服に身を包む均衡のとれた身体は、遠目からでも鍛えられていることがわかる。
ふと、大好きだった幼馴染の姿が重なって見えた。そんなはずない……。違うとわかっているのに、見れば見るほどに似ている気がする。彼から目が離せなかった。全員が目の前に並んで、一人ずつ挨拶を始める。なのに、誰の声も耳に入ってはこない。
僕の視線は、真っ直ぐにこちらを見据えている緋色の瞳から一ミリもそれない。
何度も妄想していた。彼が成長したらどんな姿になるだろうかと。変わらなかった背は追い抜かれているんだろうな、とか。大人の色気が出てすごく格好よくなっているだろうな、とか。想像の中でしか会えなかった彼が、もしも今目の前に現れたとしたら僕はどうするんだろうなんて考えていた。
「ソラリスです」
艶やかで低いお腹に響くような声。真っ直ぐに僕の姿を映しだす瞳に吸い込まれてしまいそう。無意識のうちに立ち上がっていた。
「聖女様?」
オスカー様が声をかけてきたけれど、その声は意識の外に追いやられる。階段をゆっくりと降りていく。高揚感が胸の中を支配していた。全身が喜びに震え、熱くなっていく。
やっぱり僕よりずっと背が高い。彼の目の前で立ち止まると、恐る恐る伸ばした手を彼が握り返してくれた。温かな手だ。彼も少しだけ緊張しているのか、震えている。
「ソラリス。僕の騎士は君だけだ」
そうでしょう?
涙声で指名する。微笑みを浮かべたソラリスが膝を着いて、手の甲に忠誠の口付けを落としてくれた。
ソラリスは僕に嘘をつかない。ずっと信じていたよ。嬉しくて、胸が高鳴って、一筋涙がこぼれ落ちる。彼に触れられるとこんなにも幸せだと思える。
突然の指名に、周りがどよめいている。
オスカー様が僕達の近くまで来ると、頷いてくれる。
きっと僕の気持ちが伝わったんだ。
「ソラリス、君は聖女様に選ばれた。しっかりと仕えなさい」
「はい。俺が聖女様を命を賭してお守りします。決して傷つけたりはしません」
オスカー様の言葉に、立ち上がったソラリスがはっきりと応えてくれる。まるで生涯の誓いでもされたような心地になって、顔が熱くなった。こんな気持ちを感じるのはソラリスにだけだ。
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