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伝えたかったこと
①
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無事に帰還した俺達をギルドの人達が労ってくれた。どうやら報奨金も出るらしい。俺としてはそんなものなくてもよかったけど、貰えるものは受け取っておくのがいいとダリウスがきちんと受け取っていた。
「すぐに人を派遣して素材回収に向かいます。本当にありがとうございます!」
アリスちゃんがお礼を伝えてくれる。同時に俺のランクがE級からA級にランクアップするということも教えてもらった。
驚きすぎて耳を疑うレベルだ。
「それは流石に上がりすぎじゃ……」
「特別措置だそうですよ。ダークナイトドラゴンはそれだけ危険視されていた魔物でしたので」
「……えぇ……」
だとしても俺には荷が重い気がする……。ダリウスの方に救いの視線を向けてみたら、ニコリと微笑まれてしまった。
これは役に立たないやつだ。
役不足感は否めないけど、A級になれば受けられる依頼も格段に増える。それはすごくありがたい。
「……わかった、手続きするよ」
「はい!冒険者証をお預け頂ければこちらで済ませておきますね。明日には出来ると思います」
「うん。ありがとうな」
冒険者証を渡すと、受付を離れる。
待ってくれていたダリウスと一緒にギルドを出ると、そのまま帰宅することにした。防御魔法を使って疲れたのか身体がやけにだるい。でも、そのぶん達成感は大きかった。
「今日はウサギ肉パーティーだな」
「それは明日にしよう。疲れているだろから、身体を休めた方がいいよ」
「んー、確かにそうだな。大人しく風呂に入って寝ることにする」
屋敷に帰ってくると、すぐに浴室へと向かう。ダリウスは、もう少し詳しい報告書を作って再度ギルドに持っていくために仕事をすると言っていた。
身体を洗い、ゆったりとお風呂に浸かりながらこの世界に来たときのことを思いしていく。最初は戸惑いも多かった。突拍子もないダリウスの強引さに呆れることも沢山あったよな。
「ふぅ~、なんか緊張してきたな」
口から温風を吐き出しながら、肩までお湯に入る。
ダークナイトドラゴンとの戦いは終わったけど、もう一つやらないといけないことがある。
それは、俺の気持ちをダリウスに伝えること。
一緒に冒険して、ぶつかり合って、クリスや皆んなの過去を知った。そんな今だからぶつけられる思いがある。
浴槽を出ると、服を着てダリウスがいる執務室に向かう。屋敷内は静かすぎて、前まではダリウスの心の中を見ているような気がしてた。今はこの静けさもいい物だと思える。
ノックして扉を開けると、ダリウスが視線だけを向けてくれる。笑みを返しながら、椅子に腰かけるダリウスの背後へと回った。
首に腕を回すと、ポンポンっとあやすように手を叩かれる。そんなことにすら胸が温かくなるんだ。
「忙しそうだな」
「そうでもないよ。ギルドへの報告書は作り終えたから、今は子爵としての仕事をしているんだよ」
「ちゃんと子爵様してるんだな」
「ずっと放置していたんだけどね。そろそろしっかりしないといけないと思ってね」
羽根ペンの先が紙の上を滑るのを目で追いながら、頭の中で伝える言葉を整理していく。言いたいことは決まっているんだけどな。
「なあ、ダリウス」
耳元で名前を呼ぶと、手を止めたダリウスが顔をこちらへと向けてくれた。至近距離にある形のいい唇に自分から口付けをする。
「俺と結婚しよう」
顔を離して満面の笑みのまま伝えると、手を止めて固まったダリウスの瞳から涙が一つ流れ出す。泣くとは思わなくて慌てて拭ってやると、羽根ペンを置いたダリウスに突然強く抱きしめられた。
「すぐに人を派遣して素材回収に向かいます。本当にありがとうございます!」
アリスちゃんがお礼を伝えてくれる。同時に俺のランクがE級からA級にランクアップするということも教えてもらった。
驚きすぎて耳を疑うレベルだ。
「それは流石に上がりすぎじゃ……」
「特別措置だそうですよ。ダークナイトドラゴンはそれだけ危険視されていた魔物でしたので」
「……えぇ……」
だとしても俺には荷が重い気がする……。ダリウスの方に救いの視線を向けてみたら、ニコリと微笑まれてしまった。
これは役に立たないやつだ。
役不足感は否めないけど、A級になれば受けられる依頼も格段に増える。それはすごくありがたい。
「……わかった、手続きするよ」
「はい!冒険者証をお預け頂ければこちらで済ませておきますね。明日には出来ると思います」
「うん。ありがとうな」
冒険者証を渡すと、受付を離れる。
待ってくれていたダリウスと一緒にギルドを出ると、そのまま帰宅することにした。防御魔法を使って疲れたのか身体がやけにだるい。でも、そのぶん達成感は大きかった。
「今日はウサギ肉パーティーだな」
「それは明日にしよう。疲れているだろから、身体を休めた方がいいよ」
「んー、確かにそうだな。大人しく風呂に入って寝ることにする」
屋敷に帰ってくると、すぐに浴室へと向かう。ダリウスは、もう少し詳しい報告書を作って再度ギルドに持っていくために仕事をすると言っていた。
身体を洗い、ゆったりとお風呂に浸かりながらこの世界に来たときのことを思いしていく。最初は戸惑いも多かった。突拍子もないダリウスの強引さに呆れることも沢山あったよな。
「ふぅ~、なんか緊張してきたな」
口から温風を吐き出しながら、肩までお湯に入る。
ダークナイトドラゴンとの戦いは終わったけど、もう一つやらないといけないことがある。
それは、俺の気持ちをダリウスに伝えること。
一緒に冒険して、ぶつかり合って、クリスや皆んなの過去を知った。そんな今だからぶつけられる思いがある。
浴槽を出ると、服を着てダリウスがいる執務室に向かう。屋敷内は静かすぎて、前まではダリウスの心の中を見ているような気がしてた。今はこの静けさもいい物だと思える。
ノックして扉を開けると、ダリウスが視線だけを向けてくれる。笑みを返しながら、椅子に腰かけるダリウスの背後へと回った。
首に腕を回すと、ポンポンっとあやすように手を叩かれる。そんなことにすら胸が温かくなるんだ。
「忙しそうだな」
「そうでもないよ。ギルドへの報告書は作り終えたから、今は子爵としての仕事をしているんだよ」
「ちゃんと子爵様してるんだな」
「ずっと放置していたんだけどね。そろそろしっかりしないといけないと思ってね」
羽根ペンの先が紙の上を滑るのを目で追いながら、頭の中で伝える言葉を整理していく。言いたいことは決まっているんだけどな。
「なあ、ダリウス」
耳元で名前を呼ぶと、手を止めたダリウスが顔をこちらへと向けてくれた。至近距離にある形のいい唇に自分から口付けをする。
「俺と結婚しよう」
顔を離して満面の笑みのまま伝えると、手を止めて固まったダリウスの瞳から涙が一つ流れ出す。泣くとは思わなくて慌てて拭ってやると、羽根ペンを置いたダリウスに突然強く抱きしめられた。
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