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いざっ、出動!
④
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ダンジョン内には相変わらず魔物の姿は見当たらない。進みやすくて楽だけど、それが逆に不穏な雰囲気を作り出している。
「相変わらず静かだよな」
石を蹴ると、辺りに跳ねる音が反響した。魔物が居ればもっと賑やかなはずだけど。水の流れる音と靴音だけが鼓膜を揺らす。
簡単に一階層を突破して階段を降りていく。
「魔物が居ないのもダークナイトドラゴンのせいなんだよな」
「ダークナイトドラゴンはダンジョン内の魔物を食べているようでね。最下層には魔物の死体が多く転がっていたよ。だからこそ強い力を得たのだろうけれど……」
「食べるものがなくなったらどうするだろうな」
「地上に出てくるだろうね。その前に倒してしまわないといけない」
もしもダークナイトドラゴンが地上に出てきたら……。想像して思わず眉をしかめる。今倒しておかないと、また祭事のときのようなことが起きてしまう。
そうならないためにも、最善を尽くそう。
体力温存のためにゆっくりと進んでいく。ダンジョン内は本当に綺麗で、魔物が居ない今は観光スポットにもなりそうなくらいだ。でも、悠長に観光してる暇もない。
休憩を挟みつつ順調に進んでいく。
最下層へ繋がる階段の前まで来ると、前に感じた強い威圧感に圧倒されそうになる。
「準備はいいかい」
心配げに目尻を垂れさせた青い瞳が俺の表情を伺ってくる。それに頷き返すと、大きく一歩を踏み出した。
階段を靴が蹴る音だけが響いている。チラホラと足元に獣の骨の残骸が散らばっていた。話に聞いた通り、ダークナイトドラゴンが魔物を食べてしまっているようだ。
「壁?」
光の壁が現れて足を止めた。天井すら見えないほどの大きな空間を壁が覆っている。その壁の奥に魔法で作られた紐で拘束された、巨大な生物の影がうっすらと見える。多分あれがダークナイトドラゴンだ。
「魔道具で簡易的な障壁を作っているんだ。あと数日もすれば壊れてしまうだろうね」
「ずっと閉じ込めておくことはできないんだな」
拳を握りしめる。緊張はない。少しの恐怖と、ダリウスが傍に居てくれる安心感が胸を覆っている。
「合図のあと、魔道具を停止させるよ。そうしたら戦闘開始だ」
「了解」
武器を構えて、戦闘態勢に入った。
「行くよ!」
ダリウスの合図で障壁が消えると、拘束されていたダークナイトドラゴンの咆哮が最下層内に響く。その振動で、床や壁が揺れている。
前に出たダリウスに向かって防御壁を作る。それを纏ったまま、ダリウスが剣を抜き、大きく前へと前進した。
ダークナイトドラゴンの尻尾がダリウス目掛けて振り下ろされる。剣に魔力を込めたダリウスが横薙ぎすると、固い鱗に覆われた尻尾が弾き返された。
「グオオオオ!!!」
剣の刃ように鋭い鱗が舞い上がり弧を描く。まるで桜が散るようにダリウスに向かって鱗刃が飛ばされる。それを剣や魔法を使い避けながら、少しずつ前へと進んでいく。時折交わしきれない鱗もあったけれど、ダリウスには傷一つついていないようだ。
俺も応戦したいけど、どう見ても参加できるような感じではない。だから、防御壁が消えないように魔法をかけ続ける。これくらいしかできないのが歯がゆくもある。
「はぁ!」
ダリウスが腕めがけて剣を振る。風魔法の付与された切っ先が固い鱗を破り傷をつけた。すかさず相手からの攻撃が飛んでくる。大きな爪がダリウスを襲うも、ダリウスに届くことなく弾かれる。防御壁の効果だ。一瞬ダークナイトドラゴンが怯むと、上へ大きく飛び上がったダリウスが腕を切る。
たまらず飛び上がろうとしたダークナイトドラゴンの羽に、ダリウスが氷魔法で作った散弾を浴びせた。弾は翼膜を貫き、ダークナイトドラゴンは中途半端に飛び上がった状態で地面へと落下する。すかさずダリウスが首元めがけて剣を振った。
その瞬間だった。
「相変わらず静かだよな」
石を蹴ると、辺りに跳ねる音が反響した。魔物が居ればもっと賑やかなはずだけど。水の流れる音と靴音だけが鼓膜を揺らす。
簡単に一階層を突破して階段を降りていく。
「魔物が居ないのもダークナイトドラゴンのせいなんだよな」
「ダークナイトドラゴンはダンジョン内の魔物を食べているようでね。最下層には魔物の死体が多く転がっていたよ。だからこそ強い力を得たのだろうけれど……」
「食べるものがなくなったらどうするだろうな」
「地上に出てくるだろうね。その前に倒してしまわないといけない」
もしもダークナイトドラゴンが地上に出てきたら……。想像して思わず眉をしかめる。今倒しておかないと、また祭事のときのようなことが起きてしまう。
そうならないためにも、最善を尽くそう。
体力温存のためにゆっくりと進んでいく。ダンジョン内は本当に綺麗で、魔物が居ない今は観光スポットにもなりそうなくらいだ。でも、悠長に観光してる暇もない。
休憩を挟みつつ順調に進んでいく。
最下層へ繋がる階段の前まで来ると、前に感じた強い威圧感に圧倒されそうになる。
「準備はいいかい」
心配げに目尻を垂れさせた青い瞳が俺の表情を伺ってくる。それに頷き返すと、大きく一歩を踏み出した。
階段を靴が蹴る音だけが響いている。チラホラと足元に獣の骨の残骸が散らばっていた。話に聞いた通り、ダークナイトドラゴンが魔物を食べてしまっているようだ。
「壁?」
光の壁が現れて足を止めた。天井すら見えないほどの大きな空間を壁が覆っている。その壁の奥に魔法で作られた紐で拘束された、巨大な生物の影がうっすらと見える。多分あれがダークナイトドラゴンだ。
「魔道具で簡易的な障壁を作っているんだ。あと数日もすれば壊れてしまうだろうね」
「ずっと閉じ込めておくことはできないんだな」
拳を握りしめる。緊張はない。少しの恐怖と、ダリウスが傍に居てくれる安心感が胸を覆っている。
「合図のあと、魔道具を停止させるよ。そうしたら戦闘開始だ」
「了解」
武器を構えて、戦闘態勢に入った。
「行くよ!」
ダリウスの合図で障壁が消えると、拘束されていたダークナイトドラゴンの咆哮が最下層内に響く。その振動で、床や壁が揺れている。
前に出たダリウスに向かって防御壁を作る。それを纏ったまま、ダリウスが剣を抜き、大きく前へと前進した。
ダークナイトドラゴンの尻尾がダリウス目掛けて振り下ろされる。剣に魔力を込めたダリウスが横薙ぎすると、固い鱗に覆われた尻尾が弾き返された。
「グオオオオ!!!」
剣の刃ように鋭い鱗が舞い上がり弧を描く。まるで桜が散るようにダリウスに向かって鱗刃が飛ばされる。それを剣や魔法を使い避けながら、少しずつ前へと進んでいく。時折交わしきれない鱗もあったけれど、ダリウスには傷一つついていないようだ。
俺も応戦したいけど、どう見ても参加できるような感じではない。だから、防御壁が消えないように魔法をかけ続ける。これくらいしかできないのが歯がゆくもある。
「はぁ!」
ダリウスが腕めがけて剣を振る。風魔法の付与された切っ先が固い鱗を破り傷をつけた。すかさず相手からの攻撃が飛んでくる。大きな爪がダリウスを襲うも、ダリウスに届くことなく弾かれる。防御壁の効果だ。一瞬ダークナイトドラゴンが怯むと、上へ大きく飛び上がったダリウスが腕を切る。
たまらず飛び上がろうとしたダークナイトドラゴンの羽に、ダリウスが氷魔法で作った散弾を浴びせた。弾は翼膜を貫き、ダークナイトドラゴンは中途半端に飛び上がった状態で地面へと落下する。すかさずダリウスが首元めがけて剣を振った。
その瞬間だった。
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