勇者は魔王!?〜愛を知らない勇者は、魔王に溺愛されて幸せになります〜

天宮叶

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成人編

幸せの願いを(二年後)②ソル編最終話

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「お~、今日はルークも居るんだな」
「ちっ、僕は帰る」

ざわついている室内に聞き覚えのある声が響き、入口の方へと視線を向けた。ザインとアランがこちらへと歩いてきているのが確認できて、笑みが深まる。仕事を終えてすぐに、飛んできてくれたみたいだ。子供達も稽古ができるとわかって嬉しそうにしている。

「やあ、アラン」
「話しかけてくるな」

ルークに話しかけられて、嫌そうに眉をしかめたアラン。でも、ルークはそんなこと気にしていないみたい。アランの手を取って嬉しそうに微笑んでいる。手を振り払ったアランが、逃げるように僕の方へと近づいてきた。

孤児院が設立され、初めてルークとアランが顔を合わせた日から、このやり取りは続いている。どうやら過去にルークを助けてくれた魔族の少年とアランの容姿がそっくりらしく、ルークは度々アランにちょっかいをかけているみたい。

「僕にあいつを近づけるんじゃない」
「ルークは悪い人じゃないのに」

しかめっ面で頼まれて、思わず眉を垂れさせる。アランはルークのことが苦手みたい。二人がはやく仲良くなってくれればいいなって思う。

皆でテーブルを囲いお菓子を食べる。僕が望んでいた温かな時間。辛い境遇にある子供達が、少しでもここを自分の居場所だと思ってくれたなら嬉しい。

お菓子を食べ終えると、子供達はアランとザインについて行き稽古をし始める。僕とノクスは森の様子を見ておきたいからと伝えて、子爵家をあとにした。
待機してくれていたシームルグの背に乗り、広々とした空へと飛ぶ。風が頬を撫で、髪を揺らすと、自分自身が鳥になったような気持ちになる。

「ノクス、僕とっても幸せだよ」

いつの間にか、自然と笑えるようになっている。ノクスと出会って僕の人生は大きく変化した。
笑いあって、はしゃいで、愛し合って、時々は喧嘩する。そんな当たり前で愛おしい日々を、毎日のように嬉しいと思う。穏やかな時間を噛み締める。愛する人と過ごすことがこんなにも特別なのだと知れたのは、ノクスのおかげ。

「ありがとうノクス。これからもよろしくね」
ノクスの手が髪を撫で、頬へと移動する。そして、顎に手を添えられると、背後から顔が近づいてきてキスをされた。

青空と七色の虹彩の狭間で、愛を確かめ合う。本来なら相容れなったはずの僕らは、今や恋人同士。唇が離れると、微笑み合い幸福を共有する。

辺りを見渡せば、僕達が守るべき世界が広がっている。僕だけでは届かない場所も、皆と一緒なら守り切れるって思えるんだ。

「僕、勇者として生まれてこれてよかったな」
「私も同じ気持ちだ」

僕達は勇者であり魔王。だからこそ、上手くいったのかもしれない。

「ピィイイイ!」

高らかなシームルグの鳴き声が大空に響き渡る。ノクスの体温を感じながら、そっと瞳を閉じた。耳を澄まし、世界の瞬きを聞き入れる。

(どうか、僕の愛する人々が幸せに満ちた日々を歩んでいけますように)

祈りを捧げながら思う。きっとこの願いは叶うはずだと。



本編(ソル編)fin.
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