45 / 69
成人編
第二王子救出大作戦!④
しおりを挟む
オレオールを腰に差し直したとき、ぱちぱちという音が耳に届いてルーク王子の方を見た。微笑みを浮かべながら、拍手をしてくれているルーク王子。
「いとも簡単に鎖を切るなんて流石だね」
「……あ、ありがとうございます」
なんだか照れくさくて頬をポリポリとかく。牢屋から出てきたルーク王子は、僕の隣に立つと、敬語も敬称も必要ないよと言ってきた。
「じゃあ、お言葉に甘えるねルーク」
「うん。その方が親しみやすい。さあ、行こう。武器庫まで案内するよ」
「出歩いて大丈夫なの?」
逃亡したことがバレたら、また捕まってしまうかもしれないと心配になる。けれど、ルークは気にしていないみたいで、そのまま牢屋の扉を抜けて、上階に向かう階段を進み始めた。
後ろをついて行きながら、ルークのことを観察してみるけれど、やっぱり掴みどころのない人だと思う。優しそうな雰囲気を纏っているのに、抜け目がないような……。それでいて、慈愛に満ちているようにも感じられる。
魔王肯定派の筆頭とも呼べる第二王子はどんな人なのだろうか? とずっと疑問に思っていた。実際に話してみると、気さくで話しやすくもある。
「第二王子様!?」
階段を登っていると、衛兵と鉢合わせてしまい内心焦る。けれど、ルークに焦った様子は見受けられない。
「勇者が俺に会いに来てくれたんだ。そこを通してくれるね?」
「勇者……まさか、その後ろの青年のことですか」
「そうだ。アントニオには知らせなくていい。俺が直接彼をアントニオの元に連れていく」
「しかし……」
「聞こえなかったかな。退けと命令したつもりだったのだけれど」
ルークの顔は僕からは見えない。けれど、後ろからでもビリビリと感じる圧に、なぜかノクスの姿を重ねてしまった。まるで、次代の王を見ているかのようだと思う。
圧に負け、正面から退いた衛兵が僕達にお辞儀をしてくれる。振り返ったルークが僕の手を引き、再び進み始めた。顔には笑顔が戻っている。なんとなく、ルークは幼い頃の僕に似ている気がする。常に笑みを張りつけて、誰にも本心を悟らせようとしない。
何度か衛兵と遭遇したけれど、どれも同じような感じでルークに言い負かされて、道を開けてくれた。あっさりと武器庫に到着すると、中へと入る。オレオールがなにかに反応するようにカタカタと揺れ、僕も惹き付けられるように足を進める。
広い武器庫の奥、一番目立つ中央の壁に飾られている美しい銀の盾に視線が釘付けになった。そっと手に取ると、淡い光が全身を包み込む。オレオールを初めて手にしたときと同じように、力が湧いてくる。
「これで君は完璧な勇者だ」
「第一王子に会いに行かないと」
「まだ、駄目だよ」
制止されて、困惑に眉を寄せる。ルークは僕の両手を取ると、真っ直ぐ意思の強さを感じられる瞳を向けながら、王に会って欲しいと頼んできた。王様ということは、ルークのお父様だ。たしか、病気で床に伏していたはず。
「僕が会ってもいいの?」
「むしろお願いしたい。王は……父上は勇者に会えるのを心待ちにしていたから。それに、父上はもう長くはないんだ」
「……そんなに悪いの?」
「見てもらえればわかるはずだよ」
頷くと、王様の元に案内される。城の最上階の角部屋に辿り着くと、ノックを三回。中からメイドらしき人の声が聞こえてきて、ルークが扉を開けた。
「いとも簡単に鎖を切るなんて流石だね」
「……あ、ありがとうございます」
なんだか照れくさくて頬をポリポリとかく。牢屋から出てきたルーク王子は、僕の隣に立つと、敬語も敬称も必要ないよと言ってきた。
「じゃあ、お言葉に甘えるねルーク」
「うん。その方が親しみやすい。さあ、行こう。武器庫まで案内するよ」
「出歩いて大丈夫なの?」
逃亡したことがバレたら、また捕まってしまうかもしれないと心配になる。けれど、ルークは気にしていないみたいで、そのまま牢屋の扉を抜けて、上階に向かう階段を進み始めた。
後ろをついて行きながら、ルークのことを観察してみるけれど、やっぱり掴みどころのない人だと思う。優しそうな雰囲気を纏っているのに、抜け目がないような……。それでいて、慈愛に満ちているようにも感じられる。
魔王肯定派の筆頭とも呼べる第二王子はどんな人なのだろうか? とずっと疑問に思っていた。実際に話してみると、気さくで話しやすくもある。
「第二王子様!?」
階段を登っていると、衛兵と鉢合わせてしまい内心焦る。けれど、ルークに焦った様子は見受けられない。
「勇者が俺に会いに来てくれたんだ。そこを通してくれるね?」
「勇者……まさか、その後ろの青年のことですか」
「そうだ。アントニオには知らせなくていい。俺が直接彼をアントニオの元に連れていく」
「しかし……」
「聞こえなかったかな。退けと命令したつもりだったのだけれど」
ルークの顔は僕からは見えない。けれど、後ろからでもビリビリと感じる圧に、なぜかノクスの姿を重ねてしまった。まるで、次代の王を見ているかのようだと思う。
圧に負け、正面から退いた衛兵が僕達にお辞儀をしてくれる。振り返ったルークが僕の手を引き、再び進み始めた。顔には笑顔が戻っている。なんとなく、ルークは幼い頃の僕に似ている気がする。常に笑みを張りつけて、誰にも本心を悟らせようとしない。
何度か衛兵と遭遇したけれど、どれも同じような感じでルークに言い負かされて、道を開けてくれた。あっさりと武器庫に到着すると、中へと入る。オレオールがなにかに反応するようにカタカタと揺れ、僕も惹き付けられるように足を進める。
広い武器庫の奥、一番目立つ中央の壁に飾られている美しい銀の盾に視線が釘付けになった。そっと手に取ると、淡い光が全身を包み込む。オレオールを初めて手にしたときと同じように、力が湧いてくる。
「これで君は完璧な勇者だ」
「第一王子に会いに行かないと」
「まだ、駄目だよ」
制止されて、困惑に眉を寄せる。ルークは僕の両手を取ると、真っ直ぐ意思の強さを感じられる瞳を向けながら、王に会って欲しいと頼んできた。王様ということは、ルークのお父様だ。たしか、病気で床に伏していたはず。
「僕が会ってもいいの?」
「むしろお願いしたい。王は……父上は勇者に会えるのを心待ちにしていたから。それに、父上はもう長くはないんだ」
「……そんなに悪いの?」
「見てもらえればわかるはずだよ」
頷くと、王様の元に案内される。城の最上階の角部屋に辿り着くと、ノックを三回。中からメイドらしき人の声が聞こえてきて、ルークが扉を開けた。
18
お気に入りに追加
699
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。


獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる