勇者は魔王!?〜愛を知らない勇者は、魔王に溺愛されて幸せになります〜

天宮叶

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成人編

第二王子救出大作戦!④

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オレオールを腰に差し直したとき、ぱちぱちという音が耳に届いてルーク王子の方を見た。微笑みを浮かべながら、拍手をしてくれているルーク王子。

「いとも簡単に鎖を切るなんて流石だね」
「……あ、ありがとうございます」

なんだか照れくさくて頬をポリポリとかく。牢屋から出てきたルーク王子は、僕の隣に立つと、敬語も敬称も必要ないよと言ってきた。

「じゃあ、お言葉に甘えるねルーク」
「うん。その方が親しみやすい。さあ、行こう。武器庫まで案内するよ」
「出歩いて大丈夫なの?」

逃亡したことがバレたら、また捕まってしまうかもしれないと心配になる。けれど、ルークは気にしていないみたいで、そのまま牢屋の扉を抜けて、上階に向かう階段を進み始めた。

後ろをついて行きながら、ルークのことを観察してみるけれど、やっぱり掴みどころのない人だと思う。優しそうな雰囲気を纏っているのに、抜け目がないような……。それでいて、慈愛に満ちているようにも感じられる。

魔王肯定派の筆頭とも呼べる第二王子はどんな人なのだろうか? とずっと疑問に思っていた。実際に話してみると、気さくで話しやすくもある。

「第二王子様!?」

階段を登っていると、衛兵と鉢合わせてしまい内心焦る。けれど、ルークに焦った様子は見受けられない。

「勇者が俺に会いに来てくれたんだ。そこを通してくれるね?」
「勇者……まさか、その後ろの青年のことですか」
「そうだ。アントニオには知らせなくていい。俺が直接彼をアントニオの元に連れていく」
「しかし……」
「聞こえなかったかな。退けと命令したつもりだったのだけれど」

ルークの顔は僕からは見えない。けれど、後ろからでもビリビリと感じる圧に、なぜかノクスの姿を重ねてしまった。まるで、次代の王を見ているかのようだと思う。

圧に負け、正面から退いた衛兵が僕達にお辞儀をしてくれる。振り返ったルークが僕の手を引き、再び進み始めた。顔には笑顔が戻っている。なんとなく、ルークは幼い頃の僕に似ている気がする。常に笑みを張りつけて、誰にも本心を悟らせようとしない。

何度か衛兵と遭遇したけれど、どれも同じような感じでルークに言い負かされて、道を開けてくれた。あっさりと武器庫に到着すると、中へと入る。オレオールがなにかに反応するようにカタカタと揺れ、僕も惹き付けられるように足を進める。

広い武器庫の奥、一番目立つ中央の壁に飾られている美しい銀の盾に視線が釘付けになった。そっと手に取ると、淡い光が全身を包み込む。オレオールを初めて手にしたときと同じように、力が湧いてくる。

「これで君は完璧な勇者だ」
「第一王子に会いに行かないと」
「まだ、駄目だよ」

制止されて、困惑に眉を寄せる。ルークは僕の両手を取ると、真っ直ぐ意思の強さを感じられる瞳を向けながら、王に会って欲しいと頼んできた。王様ということは、ルークのお父様だ。たしか、病気で床に伏していたはず。

「僕が会ってもいいの?」
「むしろお願いしたい。王は……父上は勇者に会えるのを心待ちにしていたから。それに、父上はもう長くはないんだ」
「……そんなに悪いの?」
「見てもらえればわかるはずだよ」

頷くと、王様の元に案内される。城の最上階の角部屋に辿り着くと、ノックを三回。中からメイドらしき人の声が聞こえてきて、ルークが扉を開けた。
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