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成人編

過去との再会②

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荷物を肩にかけ、オレオールを腰に挿すと、音を立てないようにしながら獣舎を目指す。夜の魔王城は、暗く物悲しい。せつない気持ちが心を満たす。慣れ親しんだ通路を抜け、獣舎へと辿り着くと、シームルグのいる鳥籠へと向かう。
階段を登り、最上階で息を吐き出すと、足を進めようとして誰かが鳥籠の前に立っていることに気がついた。

「ああ、やはり来ましたか」
「ルキ……」

枯葉色の穏やかな双眸が細められた。近づけば、にこりと微笑まれる。

「ここ何日か、あなたが来るような気がしていたので此処で待っていたのですが、正解でしたね」
「……僕……」

なんと答えるか迷い口篭ると、ルキが僕に手綱を手渡してくれた。シームルグに騎乗する際に使うものだ。僕が成長したように、シームルグもあっという間に成長を遂げ、今や立派な大鳥になっている。ルキの言葉通り、背に乗ることだってできるようになった。

「行くのでしょう」
「っ……止めないの?」
「本音では止めたいです。ですが、貴方は外の世界を見るべき人だ。ですから、今夜のことを僕は知らなかったことに」
「……ありがとう」

ルキはとても穏やかな人。アランが厳しいぶん、彼は僕に優しかった。シームルグに乗る練習も彼がつききっりで見てくれたっけ。
手渡された手綱を握りしめて、シームルグに近づくと、僕に気がついて甘えたように擦り寄ってきてくれる。

「シームルグ、僕を外の世界に連れて行ってくれるかい?」
「ピィイイ!」

返事をするように高らかに鳴くシームルグを撫でると、鳥籠から出して、背に股がった。ルキは本当に止める気はないようで、優しい瞳を向けながら見送ってくれる。

「ルキ、僕は必ず夢を叶えるよ! だから、見守っていて欲しい」
「ええ、見守っています」

ルキに微笑み返すと、シームルグに飛ぶようにお願いする。大風が頬を撫で、その冷たさに微かな身震いをした。夜の闇の中を、七色の虹彩と共に飛んでいく。シームルグが羽ばたく度に、空にかかる雲が掻き消える。

満点の星が目の前を瞬いているのを見つめていると、段々と視界がぼやけてきた。涙の雨が空を舞う。

振り向けば、大きな魔王城の全体を見ることが出来る。僕はあの場所しか知らない。魔王城での生活がすべてだったから。でも、これからは自分の足で広い世界を進んでいくしかないんだ。
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