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成人編

さようなら愛おしい人④

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扉を一枚くぐれば、浴室が顔を出す。自ら脱ごうとするノクスを制して、代わりに脱がしてあげる。ノクスも僕のシャツのボタンをゆっくりと外してくれる。裸になると、引き寄せられて首元に吸いつかれた。

どうして……。そんなことをされると、求められていると勘違いしてしまう。腰に回された腕も、鍛え抜かれた身体も、すべてが密着しているこの状況で、ノクスはまた僕にキスをする。
そのまま横向きに抱えられると、広い浴室の中に連れていかれた。僕を膝に乗せたまま、お湯を被る。

「洗ってやろう」
「ノクス、ん……」

角度を変えながら何度もキスをされる。この行為に意味はあるのかな? ねえ、ノクス、
今なにを考えているの? この瞬間だけは、僕のことを一人の人間として愛してくれないかな。
優しく丁寧に全身を洗われながら、時折、乳首や首元の感じる場所を刺激される。気持ちよくて声を上げれば、愛おしげに名前を呼ばれて心臓の鼓動が壊れてしまいそうな程にはやくなった。

「ノクスっ、すき……」

ふやけた眼差しで見つめながら思いを伝える。けれど、同じ言葉が返ってくることは決してない。返事の代わりに、キスをされて、立ち上がり始めた昂りを刺激される。気持ちよさに喘げば、口に指が入ってきて舌を刺激された。更に声が漏れる。浴室内にあられもない声が反響し、恥ずかしさに瞳をうるませた。

もっと触ってほしい。でもね、本当は好きだって言ってくれるだけで満たされるんだよ。そんな本音は喉奥に留まったまま。

「ノクスっ、ぁ、のくすぅ……好きっ……好きだよぉ」
「っ、ソル……」

まるで僕の声を聞きたくないって言うみたいに、噛み付くようなキスをされる。きっとノクスは困っているんだよね。だって、君は魔王様だから。魔王と勇者は決して思いを交わすことはできない。歴史にもそう刻まれている。

だから、今日だけはノクスのことを独占してもいいでしょう。すべてが終われば、この腕の中には帰らないと誓うから。
乳首を舐められると、自然と身体に力が入る。むず痒いような感覚がもどかしくて、自分から昂りをノクスの腹に押し当てる。

「触って……」

切ない吐息が、浴室内の熱気によって白いモヤへと変化する。汗ばむ肌はしっとりと吸い付き、お互いに密着するたび、離れ難いほどの心地良さを感じるんだ。
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