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成人編
初勝利①
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目を覚ましたとき、一番最初に見るのがノクスならいいのにと常々思っていた。成長と共に、一緒に眠ることは少なくなっていき、今は毎日別々の場所で眠っている。
昔は簡単に与えられていた物を手にするのがこんなにも難しいことだと知ったのはこの歳になってからだった。
僕の横で静かに眠っているノクスの唇にそっとキスをする。人生の中で、なによりも幸せな時間。こうやってノクスに触れることができる人間が僕だけならいいのに。欲望は少しずつ大きくなっていき、今や歯止めなんて効かなくなってきている。
「まだ寝ていろ」
「……うん」
胸に抱き込まれて顔が熱くなる。耳を刺激する鼓動を聞いていると、少しだけ泣きたい気持ちにもなってくるんだ。幸せすぎて怖くなる。
「森はどうだった?」
「……お前は気にしなくていい」
「僕だけ仲間外れなんて嫌なんだよ」
「……最近、頻繁に境界線を超えて人間が紛れ込んでくるが大したことはない」
「そう……」
やっぱり詳しくは教えてくれないみたいだ。僕に言えないことがあるのか、人間の僕には関係ないと思われているのか。嫌な考えが頭を過る。
ノクスはそんな人じゃない。人間と魔族の垣根を超えて、僕を守ってくれているじゃないか。きっと話してくれないのには理由があるんだよね。
「人間と魔族はどうして争ってばかりなのかな」
和解できる道はきっと存在するはずなんだ。
「歴史書によると、かつては人間と魔族は助け合って暮らしていたそうだ。人間の中に魔法を使うことができる者が産まれるのも、人間と魔族が共存していた名残だろう」
ノクスの言葉に驚いて顔を上げれば、真剣な色を宿した瞳と視線が交わる。
「当時、森は存在せず好きなようにお互いの領土を行き来していたらしい。だが、ある日とある村で魔族と人間の子がいがみ合い、魔族の子が人間の子に怪我を負わせてしまった。その小さな火種は、やがて人間と魔族の間に争いを産み、当時の国王であった初代勇者の死をもって戦争は終結した」
「勇者……人間が負けたということ?」
「そうだ。初代魔王はこれ以上の争いを避けるため、領土の境界線に巨大な森を生み出し、魔王の膨大な魔力によって生み出された森には魔獣が住み着くようになったのだ」
初めて聞いた魔族の歴史。人間の歴史書とは随分と違う。人間の歴史書には魔族のことを残虐非道な種族であり、一連の戦争は全て魔族が悪いのだと綴られていた。
昔は簡単に与えられていた物を手にするのがこんなにも難しいことだと知ったのはこの歳になってからだった。
僕の横で静かに眠っているノクスの唇にそっとキスをする。人生の中で、なによりも幸せな時間。こうやってノクスに触れることができる人間が僕だけならいいのに。欲望は少しずつ大きくなっていき、今や歯止めなんて効かなくなってきている。
「まだ寝ていろ」
「……うん」
胸に抱き込まれて顔が熱くなる。耳を刺激する鼓動を聞いていると、少しだけ泣きたい気持ちにもなってくるんだ。幸せすぎて怖くなる。
「森はどうだった?」
「……お前は気にしなくていい」
「僕だけ仲間外れなんて嫌なんだよ」
「……最近、頻繁に境界線を超えて人間が紛れ込んでくるが大したことはない」
「そう……」
やっぱり詳しくは教えてくれないみたいだ。僕に言えないことがあるのか、人間の僕には関係ないと思われているのか。嫌な考えが頭を過る。
ノクスはそんな人じゃない。人間と魔族の垣根を超えて、僕を守ってくれているじゃないか。きっと話してくれないのには理由があるんだよね。
「人間と魔族はどうして争ってばかりなのかな」
和解できる道はきっと存在するはずなんだ。
「歴史書によると、かつては人間と魔族は助け合って暮らしていたそうだ。人間の中に魔法を使うことができる者が産まれるのも、人間と魔族が共存していた名残だろう」
ノクスの言葉に驚いて顔を上げれば、真剣な色を宿した瞳と視線が交わる。
「当時、森は存在せず好きなようにお互いの領土を行き来していたらしい。だが、ある日とある村で魔族と人間の子がいがみ合い、魔族の子が人間の子に怪我を負わせてしまった。その小さな火種は、やがて人間と魔族の間に争いを産み、当時の国王であった初代勇者の死をもって戦争は終結した」
「勇者……人間が負けたということ?」
「そうだ。初代魔王はこれ以上の争いを避けるため、領土の境界線に巨大な森を生み出し、魔王の膨大な魔力によって生み出された森には魔獣が住み着くようになったのだ」
初めて聞いた魔族の歴史。人間の歴史書とは随分と違う。人間の歴史書には魔族のことを残虐非道な種族であり、一連の戦争は全て魔族が悪いのだと綴られていた。
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