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成人編
仲間はずれは悲しいです②
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食事を終えると、お待ちかねのケーキが運ばれてくる。今日はベアトリスが大好きなチーズケーキ。舌鼓を打ちながら堪能していると、部屋にザインとアランがやってきた。
「会議の時間とっくに過ぎてるっすよ」
「もうそんな時間か」
「どうせお前が魔王様を困らせていたんだろう」
アランに睨まれて、眉を垂れさせる。ザインから資料を受け取ったノクスが、目を通しながら眉間に皺を寄せた。その変化に気がついたけれど、どうしたのかと尋ねることはしない。僕は政務には関われないから。それは昔からの暗黙の了解のようなものだ。
「森に人をやれ。十年前からおかしな行動をしていたが、ついに人間共が動き始めたようだ」
「騎士団から人を派遣します」
「俺も同行するっす。ソル、しばらく訓練は中止な」
「うん。わかったよ」
最近はとくに皆忙しそうだから無理は言えない。人間と魔族の土地の境界線となる森に、数年前から異変が起きていることは僕も知っている。調査を手伝いたいと申し出たこともあったけれど、大人しくしているように言われたから結局僕だけがなにも知らないままだ。
皆大急ぎで森に向かい、ベアトリスも仕事があるからと部屋から出ていき、独りぼっちになってしまった。大きなため息をこぼすと、オレオールがふんっと鼻を鳴らす。
「どうかしたの?」
「いつの時代も人間と魔族は争ってばかりだな」
「……オレオールはどのくらい長い時間世界を見てきたの?」
「我は初代勇者の時代から世界を見てきた。故に、歴史書に綴られた嘘ですら暴くことができる」
嘘? 僕達が知っている歴史に嘘があるということ? 僕には魔族の歴史がわからない。誰も教えてくれないから。
「そういえば、随分昔、シームルグのことでノクスと喧嘩をしていたよね」
「……そうだったか。覚えておらんな」
話をそらされたのだとすぐに気がついた。皆、僕にはなにも教えてくれない。幼い頃はそれでもよかった。でも、今はなにも知らないことが嫌だと思う。
「オレオールの知ってること教えて欲しい」
思い切って聞いてみる。昔の僕なら聞くことはしなかったかもしれない。けれど、僕はもう大人で、守られるだけの人間ではない。
「まだ話す時期ではない」
「オレオール……」
「ソルよ、人はすぐに嘘をつく。得をするための嘘もあれば、自身を守るための嘘もある。ときに、どのような結果になろうとも、真実を隠し大切な物を守ろうとする者もいる。それを覚えておけ」
オレオールの言うことはわかるようでわからない。まるでなにもかもを見透かしているかのような言葉。
「人間と魔族の確執は根深い。今のお前は我になにを望む?」
オレオールと初めて出会ったときも同じことを問われた。あのときはなにもないと答えたんだ。でも、今は違う。
「僕は、大切な物を守りたい。皆と肩を並べて、世界を平和にしていきたい。今、森でなにが起きているのか、人間がなにをしようとしているのかは僕はないよ。でも、古くからある人間と魔族の確執を取り除きたいんだ」
「それが主の願いならば、我は手を貸すだけだ」
「ありがとうオレオール。君は最高の親友だよ」
ノクスが帰ってきたらなにが起きているのかをもう一度聞いてみよう。僕に言えないことがあるのかもしれない。でも、いつまでも子供扱いは嫌なんだ。それに、皆のこと家族だと思っているから、仲間外れにされているこの状況は少しだけ寂しい。
「会議の時間とっくに過ぎてるっすよ」
「もうそんな時間か」
「どうせお前が魔王様を困らせていたんだろう」
アランに睨まれて、眉を垂れさせる。ザインから資料を受け取ったノクスが、目を通しながら眉間に皺を寄せた。その変化に気がついたけれど、どうしたのかと尋ねることはしない。僕は政務には関われないから。それは昔からの暗黙の了解のようなものだ。
「森に人をやれ。十年前からおかしな行動をしていたが、ついに人間共が動き始めたようだ」
「騎士団から人を派遣します」
「俺も同行するっす。ソル、しばらく訓練は中止な」
「うん。わかったよ」
最近はとくに皆忙しそうだから無理は言えない。人間と魔族の土地の境界線となる森に、数年前から異変が起きていることは僕も知っている。調査を手伝いたいと申し出たこともあったけれど、大人しくしているように言われたから結局僕だけがなにも知らないままだ。
皆大急ぎで森に向かい、ベアトリスも仕事があるからと部屋から出ていき、独りぼっちになってしまった。大きなため息をこぼすと、オレオールがふんっと鼻を鳴らす。
「どうかしたの?」
「いつの時代も人間と魔族は争ってばかりだな」
「……オレオールはどのくらい長い時間世界を見てきたの?」
「我は初代勇者の時代から世界を見てきた。故に、歴史書に綴られた嘘ですら暴くことができる」
嘘? 僕達が知っている歴史に嘘があるということ? 僕には魔族の歴史がわからない。誰も教えてくれないから。
「そういえば、随分昔、シームルグのことでノクスと喧嘩をしていたよね」
「……そうだったか。覚えておらんな」
話をそらされたのだとすぐに気がついた。皆、僕にはなにも教えてくれない。幼い頃はそれでもよかった。でも、今はなにも知らないことが嫌だと思う。
「オレオールの知ってること教えて欲しい」
思い切って聞いてみる。昔の僕なら聞くことはしなかったかもしれない。けれど、僕はもう大人で、守られるだけの人間ではない。
「まだ話す時期ではない」
「オレオール……」
「ソルよ、人はすぐに嘘をつく。得をするための嘘もあれば、自身を守るための嘘もある。ときに、どのような結果になろうとも、真実を隠し大切な物を守ろうとする者もいる。それを覚えておけ」
オレオールの言うことはわかるようでわからない。まるでなにもかもを見透かしているかのような言葉。
「人間と魔族の確執は根深い。今のお前は我になにを望む?」
オレオールと初めて出会ったときも同じことを問われた。あのときはなにもないと答えたんだ。でも、今は違う。
「僕は、大切な物を守りたい。皆と肩を並べて、世界を平和にしていきたい。今、森でなにが起きているのか、人間がなにをしようとしているのかは僕はないよ。でも、古くからある人間と魔族の確執を取り除きたいんだ」
「それが主の願いならば、我は手を貸すだけだ」
「ありがとうオレオール。君は最高の親友だよ」
ノクスが帰ってきたらなにが起きているのかをもう一度聞いてみよう。僕に言えないことがあるのかもしれない。でも、いつまでも子供扱いは嫌なんだ。それに、皆のこと家族だと思っているから、仲間外れにされているこの状況は少しだけ寂しい。
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