18 / 69
幼少期編
弱さを認める心③(幼少期編最終話)
しおりを挟む
部屋に帰り着くと、ザインにお礼を伝える。去っていくザインを見送ってから、ベッドへとダイブし、ため息をこぼす。
「眠っているのか?」
「ノクス!」
部屋に戻ってきたノクスに声をかけられて跳ね起きる。駆け寄って思わず抱きつくと、少し屈んだノクスの逞しい腕が抱き締め返してくれる。
「どうかしたのか?」
「あのね、僕のことノクスに聞いて欲しいんだ」
過去のことを話すのは怖い。でも、ノクスになら話せる気がする。それに、きっと僕の背中を押すことが出来るのはノクスだけ。
「聞こう。おいで」
いつもみたいに抱えられて、そのままベッドサイドへとノクスが腰掛ける。膝の上に乗せられた状態で、後ろから抱き締められた。大丈夫だよって言われてるみたいで、安心する。一度、大きく深呼吸をして、過去のことをポツポツと話し始めた。
お兄様のこと、お母様とお父様に虐げられていたことも。本当は愛されたかったことや、もっと長い時間をお兄様と過ごしたかったこと。
いっぱい、沢山の寂しいや悲しいを我慢していた。誰にも打ち明けられなくて、辛くて苦しかったんだ。僕の心を守れるのは自分だけだった。
「街に行くと、僕と同じ歳くらいの子が両親と手を繋いで歩いているんだ。羨ましくて、少し嫉妬してた。でも、こんな気持ち持っちゃダメだって思ってたんだよ」
「我慢しなくてもいい。そう思うことは自然なことなのだから」
「……僕、本当はすごく寂しがりなんだ。独りは怖い。森に居たときもすごく不安だった。でも、弱い自分を認められなかったんだ。無理して大人みたいに我慢強いフリをしてみても、やっぱり、ダメみたい……」
ノクスの手の甲を雫が滑り落ちる。愛して。僕の傍にいてよ。寂しいんだ。
「私になにかしてやれることはあるだろうか」
僕の顔にかかる髪を耳にかけてくれながら、囁かれた言葉に欲が顔を出す。
「……なんでもいい?」
「言ってみろ」
いいのかな……。一瞬戸惑う。でも、今だけは甘えさせて欲しい。
「嘘でいいから、僕のこと好きって言って欲しい。恋愛感情じゃなくてもいい、同情でもいいんだ。ただ、誰かに好きだと言われたい。その誰かがノクスだったらいいなって、思っちゃったんだ」
こんなこと言っても困らせるってわかってるよ。数秒の間のあと、ノクスが微かに身じろいだ気がした。広くて大きな身体が、覆い被さるように僕をすっぽりと包む。
「私はソルのことが好きだ。ソルの思いと形は違うかもしれない。それでも、好きだという感情に嘘はない」
「……っ……ありがとうっ」
両手で顔を覆ってひたすら涙を流す。初めて、僕という存在を認められた気がした。ずっと求めていたものは、すぐ近くにあって、でもまだ遠くもある。欲が膨れていく。何度だって思い知らされる。やっぱり僕はノクスのことが好きだって。
彼の隣にいるために、もっともっと強くならないといけない。アランが教えてくれたことは、まだはっきりとは理解できない。でも、ここで挫けることだけはしたくないんだ。
「ノクス、僕ゆっくり大人になるよ」
「ああ……そうしたらいい」
自分のペースで成長していこう。沢山の時間があるんだから、焦る必要なんてないんだよね。
「話を聞いてくれてありがとう。あのね、おとぎ話の続きを聞きたいな」
「先に食事にしよう。それから湯浴みをして、おとぎ話はそれからだ」
「はーい!」
元気よく手を上げる。そんな僕のことを、ノクスが目を細めて嬉しそうに見つめてくる。欲を言うなら、その瞳に微かでいいから僕への熱を宿して欲しい。でも、それは今は口には出さない。大人になってからのお楽しみに取っておくんだ。
「眠っているのか?」
「ノクス!」
部屋に戻ってきたノクスに声をかけられて跳ね起きる。駆け寄って思わず抱きつくと、少し屈んだノクスの逞しい腕が抱き締め返してくれる。
「どうかしたのか?」
「あのね、僕のことノクスに聞いて欲しいんだ」
過去のことを話すのは怖い。でも、ノクスになら話せる気がする。それに、きっと僕の背中を押すことが出来るのはノクスだけ。
「聞こう。おいで」
いつもみたいに抱えられて、そのままベッドサイドへとノクスが腰掛ける。膝の上に乗せられた状態で、後ろから抱き締められた。大丈夫だよって言われてるみたいで、安心する。一度、大きく深呼吸をして、過去のことをポツポツと話し始めた。
お兄様のこと、お母様とお父様に虐げられていたことも。本当は愛されたかったことや、もっと長い時間をお兄様と過ごしたかったこと。
いっぱい、沢山の寂しいや悲しいを我慢していた。誰にも打ち明けられなくて、辛くて苦しかったんだ。僕の心を守れるのは自分だけだった。
「街に行くと、僕と同じ歳くらいの子が両親と手を繋いで歩いているんだ。羨ましくて、少し嫉妬してた。でも、こんな気持ち持っちゃダメだって思ってたんだよ」
「我慢しなくてもいい。そう思うことは自然なことなのだから」
「……僕、本当はすごく寂しがりなんだ。独りは怖い。森に居たときもすごく不安だった。でも、弱い自分を認められなかったんだ。無理して大人みたいに我慢強いフリをしてみても、やっぱり、ダメみたい……」
ノクスの手の甲を雫が滑り落ちる。愛して。僕の傍にいてよ。寂しいんだ。
「私になにかしてやれることはあるだろうか」
僕の顔にかかる髪を耳にかけてくれながら、囁かれた言葉に欲が顔を出す。
「……なんでもいい?」
「言ってみろ」
いいのかな……。一瞬戸惑う。でも、今だけは甘えさせて欲しい。
「嘘でいいから、僕のこと好きって言って欲しい。恋愛感情じゃなくてもいい、同情でもいいんだ。ただ、誰かに好きだと言われたい。その誰かがノクスだったらいいなって、思っちゃったんだ」
こんなこと言っても困らせるってわかってるよ。数秒の間のあと、ノクスが微かに身じろいだ気がした。広くて大きな身体が、覆い被さるように僕をすっぽりと包む。
「私はソルのことが好きだ。ソルの思いと形は違うかもしれない。それでも、好きだという感情に嘘はない」
「……っ……ありがとうっ」
両手で顔を覆ってひたすら涙を流す。初めて、僕という存在を認められた気がした。ずっと求めていたものは、すぐ近くにあって、でもまだ遠くもある。欲が膨れていく。何度だって思い知らされる。やっぱり僕はノクスのことが好きだって。
彼の隣にいるために、もっともっと強くならないといけない。アランが教えてくれたことは、まだはっきりとは理解できない。でも、ここで挫けることだけはしたくないんだ。
「ノクス、僕ゆっくり大人になるよ」
「ああ……そうしたらいい」
自分のペースで成長していこう。沢山の時間があるんだから、焦る必要なんてないんだよね。
「話を聞いてくれてありがとう。あのね、おとぎ話の続きを聞きたいな」
「先に食事にしよう。それから湯浴みをして、おとぎ話はそれからだ」
「はーい!」
元気よく手を上げる。そんな僕のことを、ノクスが目を細めて嬉しそうに見つめてくる。欲を言うなら、その瞳に微かでいいから僕への熱を宿して欲しい。でも、それは今は口には出さない。大人になってからのお楽しみに取っておくんだ。
34
お気に入りに追加
700
あなたにおすすめの小説


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる