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幼少期編
弱さを認める心③(幼少期編最終話)
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部屋に帰り着くと、ザインにお礼を伝える。去っていくザインを見送ってから、ベッドへとダイブし、ため息をこぼす。
「眠っているのか?」
「ノクス!」
部屋に戻ってきたノクスに声をかけられて跳ね起きる。駆け寄って思わず抱きつくと、少し屈んだノクスの逞しい腕が抱き締め返してくれる。
「どうかしたのか?」
「あのね、僕のことノクスに聞いて欲しいんだ」
過去のことを話すのは怖い。でも、ノクスになら話せる気がする。それに、きっと僕の背中を押すことが出来るのはノクスだけ。
「聞こう。おいで」
いつもみたいに抱えられて、そのままベッドサイドへとノクスが腰掛ける。膝の上に乗せられた状態で、後ろから抱き締められた。大丈夫だよって言われてるみたいで、安心する。一度、大きく深呼吸をして、過去のことをポツポツと話し始めた。
お兄様のこと、お母様とお父様に虐げられていたことも。本当は愛されたかったことや、もっと長い時間をお兄様と過ごしたかったこと。
いっぱい、沢山の寂しいや悲しいを我慢していた。誰にも打ち明けられなくて、辛くて苦しかったんだ。僕の心を守れるのは自分だけだった。
「街に行くと、僕と同じ歳くらいの子が両親と手を繋いで歩いているんだ。羨ましくて、少し嫉妬してた。でも、こんな気持ち持っちゃダメだって思ってたんだよ」
「我慢しなくてもいい。そう思うことは自然なことなのだから」
「……僕、本当はすごく寂しがりなんだ。独りは怖い。森に居たときもすごく不安だった。でも、弱い自分を認められなかったんだ。無理して大人みたいに我慢強いフリをしてみても、やっぱり、ダメみたい……」
ノクスの手の甲を雫が滑り落ちる。愛して。僕の傍にいてよ。寂しいんだ。
「私になにかしてやれることはあるだろうか」
僕の顔にかかる髪を耳にかけてくれながら、囁かれた言葉に欲が顔を出す。
「……なんでもいい?」
「言ってみろ」
いいのかな……。一瞬戸惑う。でも、今だけは甘えさせて欲しい。
「嘘でいいから、僕のこと好きって言って欲しい。恋愛感情じゃなくてもいい、同情でもいいんだ。ただ、誰かに好きだと言われたい。その誰かがノクスだったらいいなって、思っちゃったんだ」
こんなこと言っても困らせるってわかってるよ。数秒の間のあと、ノクスが微かに身じろいだ気がした。広くて大きな身体が、覆い被さるように僕をすっぽりと包む。
「私はソルのことが好きだ。ソルの思いと形は違うかもしれない。それでも、好きだという感情に嘘はない」
「……っ……ありがとうっ」
両手で顔を覆ってひたすら涙を流す。初めて、僕という存在を認められた気がした。ずっと求めていたものは、すぐ近くにあって、でもまだ遠くもある。欲が膨れていく。何度だって思い知らされる。やっぱり僕はノクスのことが好きだって。
彼の隣にいるために、もっともっと強くならないといけない。アランが教えてくれたことは、まだはっきりとは理解できない。でも、ここで挫けることだけはしたくないんだ。
「ノクス、僕ゆっくり大人になるよ」
「ああ……そうしたらいい」
自分のペースで成長していこう。沢山の時間があるんだから、焦る必要なんてないんだよね。
「話を聞いてくれてありがとう。あのね、おとぎ話の続きを聞きたいな」
「先に食事にしよう。それから湯浴みをして、おとぎ話はそれからだ」
「はーい!」
元気よく手を上げる。そんな僕のことを、ノクスが目を細めて嬉しそうに見つめてくる。欲を言うなら、その瞳に微かでいいから僕への熱を宿して欲しい。でも、それは今は口には出さない。大人になってからのお楽しみに取っておくんだ。
「眠っているのか?」
「ノクス!」
部屋に戻ってきたノクスに声をかけられて跳ね起きる。駆け寄って思わず抱きつくと、少し屈んだノクスの逞しい腕が抱き締め返してくれる。
「どうかしたのか?」
「あのね、僕のことノクスに聞いて欲しいんだ」
過去のことを話すのは怖い。でも、ノクスになら話せる気がする。それに、きっと僕の背中を押すことが出来るのはノクスだけ。
「聞こう。おいで」
いつもみたいに抱えられて、そのままベッドサイドへとノクスが腰掛ける。膝の上に乗せられた状態で、後ろから抱き締められた。大丈夫だよって言われてるみたいで、安心する。一度、大きく深呼吸をして、過去のことをポツポツと話し始めた。
お兄様のこと、お母様とお父様に虐げられていたことも。本当は愛されたかったことや、もっと長い時間をお兄様と過ごしたかったこと。
いっぱい、沢山の寂しいや悲しいを我慢していた。誰にも打ち明けられなくて、辛くて苦しかったんだ。僕の心を守れるのは自分だけだった。
「街に行くと、僕と同じ歳くらいの子が両親と手を繋いで歩いているんだ。羨ましくて、少し嫉妬してた。でも、こんな気持ち持っちゃダメだって思ってたんだよ」
「我慢しなくてもいい。そう思うことは自然なことなのだから」
「……僕、本当はすごく寂しがりなんだ。独りは怖い。森に居たときもすごく不安だった。でも、弱い自分を認められなかったんだ。無理して大人みたいに我慢強いフリをしてみても、やっぱり、ダメみたい……」
ノクスの手の甲を雫が滑り落ちる。愛して。僕の傍にいてよ。寂しいんだ。
「私になにかしてやれることはあるだろうか」
僕の顔にかかる髪を耳にかけてくれながら、囁かれた言葉に欲が顔を出す。
「……なんでもいい?」
「言ってみろ」
いいのかな……。一瞬戸惑う。でも、今だけは甘えさせて欲しい。
「嘘でいいから、僕のこと好きって言って欲しい。恋愛感情じゃなくてもいい、同情でもいいんだ。ただ、誰かに好きだと言われたい。その誰かがノクスだったらいいなって、思っちゃったんだ」
こんなこと言っても困らせるってわかってるよ。数秒の間のあと、ノクスが微かに身じろいだ気がした。広くて大きな身体が、覆い被さるように僕をすっぽりと包む。
「私はソルのことが好きだ。ソルの思いと形は違うかもしれない。それでも、好きだという感情に嘘はない」
「……っ……ありがとうっ」
両手で顔を覆ってひたすら涙を流す。初めて、僕という存在を認められた気がした。ずっと求めていたものは、すぐ近くにあって、でもまだ遠くもある。欲が膨れていく。何度だって思い知らされる。やっぱり僕はノクスのことが好きだって。
彼の隣にいるために、もっともっと強くならないといけない。アランが教えてくれたことは、まだはっきりとは理解できない。でも、ここで挫けることだけはしたくないんだ。
「ノクス、僕ゆっくり大人になるよ」
「ああ……そうしたらいい」
自分のペースで成長していこう。沢山の時間があるんだから、焦る必要なんてないんだよね。
「話を聞いてくれてありがとう。あのね、おとぎ話の続きを聞きたいな」
「先に食事にしよう。それから湯浴みをして、おとぎ話はそれからだ」
「はーい!」
元気よく手を上げる。そんな僕のことを、ノクスが目を細めて嬉しそうに見つめてくる。欲を言うなら、その瞳に微かでいいから僕への熱を宿して欲しい。でも、それは今は口には出さない。大人になってからのお楽しみに取っておくんだ。
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