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幼少期編
先生ができたので、魔法の特訓頑張ります①
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ベアトリスに着替えさせて貰いながら、オレオールのことを考えていた。ノクスは探してくれると言っていたけれど、オレオールの話を彼から聞くことはなかった。自分から聞くこともしちゃいけない気がして様子を見ている状態。
「お食事をご用意致します」
「ありがとう」
お礼を伝えたけれど、ベアトリスはお辞儀をするだけで、相変わらず必要最低限の会話しかしてくれない。ずっとこの部屋に居るから、外のことはまったくわからない。だからこそ、一番長い時間を共にしているベアトリスとは仲良くなりたいと思っているのに。
(仲良くなれるように頑張らなくちゃっ!)
気合を入れると、椅子に腰かける。ノクスは仕事が忙しいみたいで、最近は顔を出してはくれない。一人で食べるご飯はなんだか味気ないけれど、仕方ないと言い聞かせている。
クリームとフルーツが挟まれたパンに小さくかじりつく。食欲が湧かなくて、なんだか泣きそうだった。子爵家にいた頃にひとりぼっちだったことを思い出してしまう。こんなことで泣くなんてダメだって思うのに、目の前にモヤがかかっていく。
僕は大丈夫……だいじょうぶって唱えながら、無理矢理口角を三日月形に形づくる。
「オースッ!居るか人間!」
涙がこぼれる寸前、元気な男の人の声が部屋の中に飛び込んできて、涙が引っ込んだ。部屋の入口に顔を向ければ、褐色肌にペリドット色の瞳のお兄ちゃんが立っている。ぽかんとしている僕に近づいてきた彼が、ジロジロと隠すことなく見定めるような視線を向けてきた。一頻り見終えると、プッと小さく笑ってから、目の前の席へと腰掛ける。
「話には聞いていたが、本当におチビだな」
「え、と……お兄ちゃん誰?」
「俺はザインってんだ。一応魔王様の側近な」
料理を摘み食いしながら自己紹介してくれるザイン。彼がどうしてここに来たのかは分からないけれど、部屋が一気に賑やかになって、少し寂しさが紛れた。
「あの、僕になにか用なの?」
「別に用なんてないけど。ただ、どんなやつなのか見に来ただけ」
「そうなんだ……。あのっ、ここってやっぱり魔族の領土なの?」
「そんなことも知らないのかよ。ここは魔族の領土内にある中心都市イグナイトに聳え立つ、魔王城の中だぜ」
やっぱりここは魔族の住む場所なんだ。そうだろうとは思っていたから驚きはしない。けれど、少し心細さを感じてもいる。僕はもう人間の住む土地には戻れないかもしれない。特に思い出がある訳でもないし、特別な人がいる訳でもない。でも、やっぱり産まれ育った土地だから寂しさは感じる。
「どんなやつか見に来たけど、警戒する必要もなさそうだな。お前、魔法は使えるのか?」
「うん。でもね、あんまり人前では使いたくないんだ」
「ああ? なんでだよ」
「僕、上手く魔法をコントロールできなくて……」
森で生活していたときは、コントロールが効かなくても誰も傷つける心配はなかった。でも、ザインやベアトリスが居るこの場所で魔法を使うのは怖い。もし、また傷つけてしまったらって思うと、手が震えるんだ。
「ふーん。敵に教えてやるのは癪だけど、お前はまだおチビだし、俺がコントロールの仕方を教えてやるよ」
「え! 本当に?」
嬉しくて話に飛びつくと、ザインがニカッと笑いながら了承してくれた。
「お食事をご用意致します」
「ありがとう」
お礼を伝えたけれど、ベアトリスはお辞儀をするだけで、相変わらず必要最低限の会話しかしてくれない。ずっとこの部屋に居るから、外のことはまったくわからない。だからこそ、一番長い時間を共にしているベアトリスとは仲良くなりたいと思っているのに。
(仲良くなれるように頑張らなくちゃっ!)
気合を入れると、椅子に腰かける。ノクスは仕事が忙しいみたいで、最近は顔を出してはくれない。一人で食べるご飯はなんだか味気ないけれど、仕方ないと言い聞かせている。
クリームとフルーツが挟まれたパンに小さくかじりつく。食欲が湧かなくて、なんだか泣きそうだった。子爵家にいた頃にひとりぼっちだったことを思い出してしまう。こんなことで泣くなんてダメだって思うのに、目の前にモヤがかかっていく。
僕は大丈夫……だいじょうぶって唱えながら、無理矢理口角を三日月形に形づくる。
「オースッ!居るか人間!」
涙がこぼれる寸前、元気な男の人の声が部屋の中に飛び込んできて、涙が引っ込んだ。部屋の入口に顔を向ければ、褐色肌にペリドット色の瞳のお兄ちゃんが立っている。ぽかんとしている僕に近づいてきた彼が、ジロジロと隠すことなく見定めるような視線を向けてきた。一頻り見終えると、プッと小さく笑ってから、目の前の席へと腰掛ける。
「話には聞いていたが、本当におチビだな」
「え、と……お兄ちゃん誰?」
「俺はザインってんだ。一応魔王様の側近な」
料理を摘み食いしながら自己紹介してくれるザイン。彼がどうしてここに来たのかは分からないけれど、部屋が一気に賑やかになって、少し寂しさが紛れた。
「あの、僕になにか用なの?」
「別に用なんてないけど。ただ、どんなやつなのか見に来ただけ」
「そうなんだ……。あのっ、ここってやっぱり魔族の領土なの?」
「そんなことも知らないのかよ。ここは魔族の領土内にある中心都市イグナイトに聳え立つ、魔王城の中だぜ」
やっぱりここは魔族の住む場所なんだ。そうだろうとは思っていたから驚きはしない。けれど、少し心細さを感じてもいる。僕はもう人間の住む土地には戻れないかもしれない。特に思い出がある訳でもないし、特別な人がいる訳でもない。でも、やっぱり産まれ育った土地だから寂しさは感じる。
「どんなやつか見に来たけど、警戒する必要もなさそうだな。お前、魔法は使えるのか?」
「うん。でもね、あんまり人前では使いたくないんだ」
「ああ? なんでだよ」
「僕、上手く魔法をコントロールできなくて……」
森で生活していたときは、コントロールが効かなくても誰も傷つける心配はなかった。でも、ザインやベアトリスが居るこの場所で魔法を使うのは怖い。もし、また傷つけてしまったらって思うと、手が震えるんだ。
「ふーん。敵に教えてやるのは癪だけど、お前はまだおチビだし、俺がコントロールの仕方を教えてやるよ」
「え! 本当に?」
嬉しくて話に飛びつくと、ザインがニカッと笑いながら了承してくれた。
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