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心の距離

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「いいの~?子ネズミちゃん震えちゃってるけど」

「……チッ」

震える僕を見てライル様が少しだけ威圧を抑えてくれる。

「アズハル行くぞ」

リダ様との話は終わっていないけれど、埒が明かないと思ったのかライル様は自分からリダ様の横を通り過ぎた。

「あらら、怒っちゃったか。ふふ、子ネズミちゃんまたね」

横を通り過ぎる時、リダ様が僕に向かってそう声をかけて来たけれど、ライル様が無視しろと言ってきたから、返事を返さずに顔を背ける。

王妃様やリダ様のお母様のことは僕にはよく分からないし、二人の間に何があったのかも知らない。

ただ、あまり深入してはいけないような気がして、ただライル様の大きな背中を見つめることしか出来なかった。

ライル様に連れられて着いた部屋は、いつも夜伽の時に使っている部屋とは違う場所だった。

部屋に着くと、ライル様は性急に僕をベッドへと押し倒して身動きを封じてくる。

「逃げるつもりだったのか」

低く静かな声音で尋ねられる。

荒々しくもなく、ただ平坦で穏やかな声なのに恐ろしいと思ってしまうのは何故だろう。

「……逃げるつもりなんてありません」

自然と唇が震える。

ライル様に疑われるような行動をした僕が悪いと分かっていても、ライル様に詰め寄られているこの状況が苦しく感じてしまう。

「カイスに何を言われたかは知らないが、お前がこの場所から出ることは一生無理なのだと諦めろ」

「ぼ、僕は……本当にそんなつもりはないんです。ただ、ちゃんと伝えておかないとって……」

「なにを伝える必要がある」

「僕はラ、ライル様の番だって……だから、ここから出るつもりはないって……。ただ、それをカイス様に伝えたくて……」

そこまで言って、涙が目尻から流れ落ちた。

泣いてる理由は自分でもよく分からない。
ただ、信じて欲しいんだ。

「ごめんなさい……」

ごめんなさい、ごめんなさいって涙を流しながら謝り続ける。

僕はライル様のことが好きで、彼の傍にずっと居たい。

でも、僕の行動1つ1つがライル様を怒らせてしまうから、どうしたらいいのか分からないんだ。

怒らせたいわけじゃないし、怖いことをされたい訳でもない。

ただ、彼の穏やかな顔を隣で見ていられればそれだけでいいのに、それすら難しくて、いっその事彼のことを嫌いになれたらって思うこともある。

「お前は謝ってばかりだな」

深いため息がライル様の唇から漏れて、飛散していく。

それにズキリと胸が音を立てた。
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