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心の距離
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ライル様の香りが僕を覆うけれど、いつもの柔らかく包み込むような香りじゃなくて、暗くて怖い怒りを含んだ様な香りだと思った。
「あいつと逃げるつもりだったのか」
ライル様の低い声が僕に早く答えろと催促しているように感じる。
「ち、違います……」
「ならば此処で何をしていた?」
「……それは……」
上手く答えられずに口篭ると、ライル様が頭の上で低く唸ったのが聞こえてきた。
それに恐怖を煽られて更に言葉が出てこなくなる。
「私が此処に来て欲しいとお願いしたのですよ」
「俺の番だと知っていて呼び出したのか?なんのためだ」
「言い訳は致しません。私はアズハルを此処から逃がそうとしたのです。ですが断られてしまいました」
カイス様の告白にライル様は隠すこともなく舌打ちをすると、カイス様の言葉を無視して僕の腕を荒々しく掴むと、カイス様に背を向けて中庭を出た。
「ら、ライル様っ!」
「黙っていろ」
「っ……ごめんなさい」
口癖の様に口から出てくる謝罪に効果は無いような気がする。
そのまま離宮へと戻ると、長い通路をひたすら無言で進んで行った。
「そんなに慌ててどうかしたのかい?」
歩き続けるライル様の前に突然人が現れて、ライル様はまた舌打ちをしながら立ち止まる。それに連動するように僕もライル様に腕を掴まれたまま歩みを止める。
「どけ」
「おー、怖い怖い。その様子だと僕からの贈り物は届いたみたいだね」
白銀の髪をなびかせて、楽しげに笑うその人を見つめながら、何処か彼の顔に疑似感を覚えて内心で首を捻った。
「お前の仕業か。なんの真似だ」
「嫌だなー。折角飼っている子ネズミが逃げようとしてるって教えてあげたのにさ。お礼くらいいないの?」
「リダ、そこをどけ。2度は言わない」
温度差のある2人の言葉を耳に入れながら、彼が第2王子なのだと理解する。
それと同時に、カイス様との話を彼に聞かれていたんだということも分かって、自分の迂闊さに唇を噛み締めた。
「兄上は相変わらず僕に冷たいね。悲しいな」
「思ってもいないことを口に出すな」
「もしかして、まだ昔のことを根に持っているの?もう終わったことでしょう。あの人も王妃も死んだんだから」
「黙れ」
第2王子の言葉を聞いたライル様は低く怖い声でたった一言そう告げた。
Ωの僕は、彼から感じる圧に気圧されてカタカタと身体が震えてしまう。
それなのに、リダ様はただ口元に歪な笑みを浮かべて笑うだけだった。
「あいつと逃げるつもりだったのか」
ライル様の低い声が僕に早く答えろと催促しているように感じる。
「ち、違います……」
「ならば此処で何をしていた?」
「……それは……」
上手く答えられずに口篭ると、ライル様が頭の上で低く唸ったのが聞こえてきた。
それに恐怖を煽られて更に言葉が出てこなくなる。
「私が此処に来て欲しいとお願いしたのですよ」
「俺の番だと知っていて呼び出したのか?なんのためだ」
「言い訳は致しません。私はアズハルを此処から逃がそうとしたのです。ですが断られてしまいました」
カイス様の告白にライル様は隠すこともなく舌打ちをすると、カイス様の言葉を無視して僕の腕を荒々しく掴むと、カイス様に背を向けて中庭を出た。
「ら、ライル様っ!」
「黙っていろ」
「っ……ごめんなさい」
口癖の様に口から出てくる謝罪に効果は無いような気がする。
そのまま離宮へと戻ると、長い通路をひたすら無言で進んで行った。
「そんなに慌ててどうかしたのかい?」
歩き続けるライル様の前に突然人が現れて、ライル様はまた舌打ちをしながら立ち止まる。それに連動するように僕もライル様に腕を掴まれたまま歩みを止める。
「どけ」
「おー、怖い怖い。その様子だと僕からの贈り物は届いたみたいだね」
白銀の髪をなびかせて、楽しげに笑うその人を見つめながら、何処か彼の顔に疑似感を覚えて内心で首を捻った。
「お前の仕業か。なんの真似だ」
「嫌だなー。折角飼っている子ネズミが逃げようとしてるって教えてあげたのにさ。お礼くらいいないの?」
「リダ、そこをどけ。2度は言わない」
温度差のある2人の言葉を耳に入れながら、彼が第2王子なのだと理解する。
それと同時に、カイス様との話を彼に聞かれていたんだということも分かって、自分の迂闊さに唇を噛み締めた。
「兄上は相変わらず僕に冷たいね。悲しいな」
「思ってもいないことを口に出すな」
「もしかして、まだ昔のことを根に持っているの?もう終わったことでしょう。あの人も王妃も死んだんだから」
「黙れ」
第2王子の言葉を聞いたライル様は低く怖い声でたった一言そう告げた。
Ωの僕は、彼から感じる圧に気圧されてカタカタと身体が震えてしまう。
それなのに、リダ様はただ口元に歪な笑みを浮かべて笑うだけだった。
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