囚われの白夜〜狼王子は身代わり奴隷に愛を囁く〜

天宮叶

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悩みと提案

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目を覚ますとライル様の整った顔が目の前にあって驚いてしまった。

「ん……起きたのか」

「おはよう、ございます」

薄く目を開けて掠れた声で話しかけてきたライル様がなんだか色っぽくてドキリとしてしまう。

起き上がったライル様は僕のことを一撫ですると、上着を羽織ってベッドから降りた。

「俺は政務があるから今はかまってやれない。部屋で大人しくしていろ」

「……はい」

寂しいと思ってしまったけれど、引き止めるなんて我儘は出来ないから、大人しくライル様の言葉に頷いておく。

僕の返事を確認して、部屋を出ていったライル様を見送ってからダルい身体を動かして僕も服を着直した。

そのままよたよたと部屋を出て自室へと向かう。

まだ寝ていてもいいのかもしれないけれど、行為の跡の残るあの場所に1人で居ると、もっと寂しさを感じてしまいそうで結局自室に戻るのが1番だと思った。

「アズハル!どうしたんだ、ふらふらじゃないか!」

「カイス様」

途中、カイス様と鉢合わせてしまい話しかけられて足を止める。

「ライル様に酷い仕打ちを受けているのかい?」

心配してるみたいに僕の顔を覗き込んで眉を寄せるカイス様に、僕はゆるく首を横に振ってみせた。

「本当に酷いことはされていないの?今もとても辛そうだ」

「嫌なことはされていません。ライル様はとてもお優しいんです」

真っ直ぐに彼の瞳を見返して答えればカイス様は、そうか……と小さく呟くと、おもむろに僕の両手を取って少しだけ戸惑いがちにある提案をしてくれた。

「もしも君がこの場所から抜け出したいと思うのなら私が手を貸すよ」

「僕は……」

カイス様の提案に焦る。

そんなことをライル様に聞かれてしまったらカイス様も僕もタダでは済まされないのではないか?

それに彼にそこまでしてもらう理由が僕には見当たらない。

「……お気持ちは嬉しいのですが、僕なら大丈夫です」

「っ、……もしも気持ちが変わったら、明後日月が登る頃に中庭に来てくれないだろうか」

彼の言葉に僕は、行かないとも行くとも答えられなくて、無言のまま眉を寄せて彼を見つめることしか出来ず、困ってしまう。

その時、コツコツと誰かの足音が聞こえてきて、僕は慌ててお辞儀をするとそのままカイス様の横を通り過ぎた。
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