囚われの白夜〜狼王子は身代わり奴隷に愛を囁く〜

天宮叶

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悩みと提案

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屋敷に戻ることを想像すると、途端に身体が震えだす。

身体を好き勝手にされる恐怖や、生きるか死ぬかのギリギリを突き進む不安が僕を襲う。

途端にライル様に会いたくなった。
彼に会うと怖いと思いながらも胸の奥が温かくなるんだ。

幸せだと思える。

ライル様に触れられて感じる熱が、僕をグズグズに溶かして包み込む感覚を、ずっと味わっていたいと思ってしまう。

「こんなの変だよ」

僕達は会ったばかりなのに、そんな風に思うなんておかしいって分かってるんだ。それでも、動き出した気持ちはどうやっても止められない気がした。

「深刻そうな顔をしてどうかした?」

「!、アラン」

話しかけられて振り返ると、アランが茶器を手に抱えて部屋に戻ってきていた。

「悩み事なら相談に乗るよ」

アランがテーブルにグラスと茶器を置くと、その中にハーブの香りのする濃ゆいお茶を注ぐ。続いて、中にハーブの葉をそのまま入れると温かいまま僕の前に置いてくれた。

爽やかな香りが少しだけ不安を和らげてくれる。

「僕……」

アランにライル様のことを相談してもいいのだろうか……。

彼がライル様に拒否されて怒っていたのを知っているから尚更言い出しづらく、口ごもってしまう。

「ライル様のこと?」

そんな僕の心情を察したのか、アランが自分から話を切り出してくれた。

「その……」

「別に僕のことは気にしなくていいよ。ライル様のことを好きなわけじゃないから。あの時は、このまま相手にされなかったら家に返されるんじゃないかって不安で……叩いたりしてごめんね」

アランが僕の左頬を見つめながら申し訳なさそうな顔を、浮かべる。

そんな彼に慌てて、大丈夫だと伝えた。

差程痛くはなったし、奴隷の身分であれば暴力は日常茶飯事だから。
それに、もう頬からは痛みを感じない。

「僕、ライル様とどうなりたいのかな」

「それはアズハルにしか分からないけど、ライル様の態度を見てたらアズハルは好かれてると思うよ」

「そうなのかな……。よく分からないんだ。ライル様は優しいけど、すぐ怒るし、怖いって思う時もあるんだ……」

「まあ、確かに。ライル様って威圧感はあるよね。でもさ、あんなにアズハルに執着してるって凄く特別なことだと思うな」

そう言って笑みを浮かべるアランに、か細い声で感謝の言葉を伝えた。

「アズハルはもっと自信を持たないと!貴族なんだから堂々としてなよ。あれ?そういえばアズハルってどこから来たんだ?家名を名乗ってなかったよね?」

「え、その……」

純粋な疑問をぶつけてくるアランになんと返せばいいのか頭を悩ませる。
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