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愛の裏返し
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何故かライル様は酷く怒っているように見える。
怒りによる圧に心が押し潰されそうになって1歩下がると、後ろにいたカイス様にぶつかってしまった。
僕を支えるように肩を掴んだカイス様にお礼を伝えると、そんな僕達のことを見ていたライル様がいっそう険しい表情を浮かべる。
「俺の番に触れるな」
「番、ですか?この子はまだこちらに来たばかりでは??」
カイス様の問にライル様はなにも答えない。
二人の間にぴりぴりとした空気が流れていて、怖くて身体を震わせるとカイス様が大丈夫だと囁いてくれる。
「アズハルこちらに来い」
ライル様が発した底冷えのするような低い声に恐怖を覚えて僕の足はぴくりとも動いてくれなくて、更に彼をイラつかせてしまった気がした。
どうしてライル様はこんなにも怒っているんだろう……。
分からない。
何がいけなかった?どうすればいい?
「ご、ごめんなさい」
とにかく謝らないと……。
そうしないと罰を受けるかも……。
謝らないと……早くはやく、はやく……。
「なにをっ!?」
カイス様の声が聞こえたけれど、僕の頭の中は謝罪のことでいっぱいでその声に反応を示すことは出来なかった。
ゆっくりと硬い床に跪いて、額を付ける。
経験から、こうすれば物凄く酷い罰は受けないと知っているから。
「も、申し訳ありません。ぼ、ぼ、……僕……ライル様を怒らせてしまいました。謝罪します。ですから、怒りをお納めに……」
跪いて頭を垂れる僕を上から見下ろしながらライル様が微かに舌打ちをしたのが聞こえてきて、ぐっと唇を噛み締める。
こんな時、僕にはこの方法しか思い浮かばなくて、他にどうしたらいいのかも分からないから後はもうライル様に身を委ねるしかない。
目を閉じて罰が下されるのを待っていると、突然身体が抱き抱えられて、苛立ちの含んだ様な香りが僕を包み込んだ。
「カイス、お前が俺の右腕でありこの国の宰相という立場だからこそ今回は見逃すことを忘れるな」
「ライル様っ、彼をお離し下さい!」
「黙れ。二度と俺の許可なしにアズハルに触れることは許さない」
カイス様にそう告げて、元居た部屋へと戻っていくライル様に抱き抱えられたまま、どうしてこうなったのかと考えてしまう。
「ラ、ライル様……」
「……あの様なことはするな」
「……え……?」
もしかして謝罪のことだろうか?
でも……
「……ライル様は僕に怒っておられるのですよね……。だから……謝罪をしないとって……僕にはああするしか選択肢が無かったから……」
怒りによる圧に心が押し潰されそうになって1歩下がると、後ろにいたカイス様にぶつかってしまった。
僕を支えるように肩を掴んだカイス様にお礼を伝えると、そんな僕達のことを見ていたライル様がいっそう険しい表情を浮かべる。
「俺の番に触れるな」
「番、ですか?この子はまだこちらに来たばかりでは??」
カイス様の問にライル様はなにも答えない。
二人の間にぴりぴりとした空気が流れていて、怖くて身体を震わせるとカイス様が大丈夫だと囁いてくれる。
「アズハルこちらに来い」
ライル様が発した底冷えのするような低い声に恐怖を覚えて僕の足はぴくりとも動いてくれなくて、更に彼をイラつかせてしまった気がした。
どうしてライル様はこんなにも怒っているんだろう……。
分からない。
何がいけなかった?どうすればいい?
「ご、ごめんなさい」
とにかく謝らないと……。
そうしないと罰を受けるかも……。
謝らないと……早くはやく、はやく……。
「なにをっ!?」
カイス様の声が聞こえたけれど、僕の頭の中は謝罪のことでいっぱいでその声に反応を示すことは出来なかった。
ゆっくりと硬い床に跪いて、額を付ける。
経験から、こうすれば物凄く酷い罰は受けないと知っているから。
「も、申し訳ありません。ぼ、ぼ、……僕……ライル様を怒らせてしまいました。謝罪します。ですから、怒りをお納めに……」
跪いて頭を垂れる僕を上から見下ろしながらライル様が微かに舌打ちをしたのが聞こえてきて、ぐっと唇を噛み締める。
こんな時、僕にはこの方法しか思い浮かばなくて、他にどうしたらいいのかも分からないから後はもうライル様に身を委ねるしかない。
目を閉じて罰が下されるのを待っていると、突然身体が抱き抱えられて、苛立ちの含んだ様な香りが僕を包み込んだ。
「カイス、お前が俺の右腕でありこの国の宰相という立場だからこそ今回は見逃すことを忘れるな」
「ライル様っ、彼をお離し下さい!」
「黙れ。二度と俺の許可なしにアズハルに触れることは許さない」
カイス様にそう告げて、元居た部屋へと戻っていくライル様に抱き抱えられたまま、どうしてこうなったのかと考えてしまう。
「ラ、ライル様……」
「……あの様なことはするな」
「……え……?」
もしかして謝罪のことだろうか?
でも……
「……ライル様は僕に怒っておられるのですよね……。だから……謝罪をしないとって……僕にはああするしか選択肢が無かったから……」
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