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お母様からの報告が来るまで俺もセレーネも落ち着かない日々を過ごしていた。
寮の部屋に戻るとタイミングを見計らったかのようにノアが部屋に入ってきて、一通の手紙を俺に差し出してきた。

宛名はお母様のもの。

直ぐに開封すると、中を確認して1度小さく息を吐き出す。

「なんて?」

「セレーネと一緒に宮殿に来るようにと」

「上手くいくといいね」

「ノアがそんなことを言うなんて珍しいな。セレーネのことを嫌っていたろ?」

そう言ってノアに視線を向けると、ノアはそっぽを向きながら、別に…って小さく答えにもないってない返事を返してくる。

「ありがとう」

「ふんっ……僕帰るっ」

「ああ」

そそくさと部屋から出ていくノアの後ろ姿を見つめながら、相変わらず素直じゃないなってまた笑いがこぼれてきた。

ノアもエイデンと過ごすうちに少しだけ心境の変化があったのかもしれない。

椅子に腰掛けるともう一度手紙の内容を確認してみる。

ミラー公爵夫妻は婚約については乗り気の様だと書かれているけれどお父様はやはり渋っているらしい。

格別お母様に甘いお父様がそこまで反対するということは、誘拐事件は相当お父様にとって許し難い事件だったということだろう。

どうやったら説得出来るのだろうか……。

公爵夫人が罪人だと知った日からセレーネはあまり元気がない。1度公爵家に帰ってみるとも言っていたけれど、まだ帰郷の目処は立って居ないようだった。

「……セレーネ……」

明日、セレーネに会ったらこのことを話して、心配ないよって抱きしめてあげよう。

そうしないと自身の心も落ち着かない気がした。

もしも……、どうやっても認めて貰えない時は何をしてでもセレーネと共にいよう。

何年も抱えてきたこの重い気持ちはそう簡単には変えられないから、きっと皇太子とセレーネどちらを選ぶかと聞かれれば俺は迷わずセレーネを選ぶ。

こんなことをセレーネに言ったら嫌われてしまうかもしれない。

それでも、きっと俺はそうするだろう。

俺にとってセレーネと共にいる日々は何にも変え難い宝物の様なモノだから。

暗い気持ちをなんとか奮い立たせて、お父様に会ったら何を言うか思考を巡らせる。

俺がセレーネを支えないと。
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