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困り顔
③
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何もわからず複雑な心情のままセレーネと2人、人の輪の中に戻ると他生徒たちが一気にこちらへと押し寄せてきて囲まれてしまった。
「あのっ、皇太子様ですか!!」
「……ああ、そうだよ」
「噂では聞いていたけど本当に皇太子様がこの学園にいらっしゃったなんて!お姿を見ないですけど普段はなにを?」
「皇太子の仕事があって中々学園には来れなくてね」
「セレーネ様とはいつから交流を?」
次から次に投げかけられる質問に一つ一つ答えていると、セレーネが俺のことをじっと見つめているのに気がついて彼へと視線を向けた。
「どうしたんだい?」
「……う、ううん、なんでもない。それより、皆あんまり彼のこと困らせないであげてね。それに陛下へ挨拶が済んでない人は行かないと」
暗い表情から一転して明るい声で俺や周りに声をかけ始めたセレーネは何処か無理をしているようにも感じて心配になった。
周りの生徒達はセレーネに促される形で渋々俺達から離れると、挨拶を済ませてない生徒達は陛下の方へと歩いていき始める。それを確認してやっと解放されたと安堵の息を吐き出した。
「ありがとう。助かったよ」
「やっぱり皇太子様は人気者だね」
「……やめてくれ」
イタズラっ子みたいに意地悪な笑みを浮かべてセレーネがそんなことを言ってくるからなんだか恥ずかしくて顔を逸らした。やっぱり人に囲まれるのはあまり好きではない。
溜息を吐き出すと、それを見たセレーネがそっと俺の腕に手を回して寄り添ってくれた。青い水晶のような円な瞳が真っ直ぐに俺を見つめながら、僕が居るから大丈夫って言ってくれてその言葉を聞いて何故か凄く泣きたくなった。
セレーネが傍に居てくれる。
その言葉を彼の口から聞けることが本当に嬉しくて、幸せだと思う。
「ありがとう」
お父様とお母様のことも皇太子だということも一旦忘れて今はこの舞踏会を楽しもう。そうじゃないと折角セレーネが傍に居てくれるのに彼に失礼だ。
「あっ、音楽が流れ始めたよ」
「踊ろうか」
陛下達への挨拶が終わったのか舞踏会の音楽が流れ始めて、生徒達が次々と曲に合わせて踊り始める。俺達もその輪の中に混ざって笑い合いながら踊り出す。
少しづつ変化していく曲調に合わせてひたすら踊り明かす。この瞬間だけは俺達は2人だけの世界に潜ることが出来るんだ。
「セレーネ愛してる」
誰にも聞こえないように、そっとセレーネの耳元に唇を近づけて囁いた。
そうすればセレーネが一気に顔を赤くして、潤んだ瞳で俺の事を見てくれるんだ。
「……ばかっ」
「ふっ、かわいい」
君がずっと俺のことを好きでいてくれるなら馬鹿でもいいって本気で思った。
「あのっ、皇太子様ですか!!」
「……ああ、そうだよ」
「噂では聞いていたけど本当に皇太子様がこの学園にいらっしゃったなんて!お姿を見ないですけど普段はなにを?」
「皇太子の仕事があって中々学園には来れなくてね」
「セレーネ様とはいつから交流を?」
次から次に投げかけられる質問に一つ一つ答えていると、セレーネが俺のことをじっと見つめているのに気がついて彼へと視線を向けた。
「どうしたんだい?」
「……う、ううん、なんでもない。それより、皆あんまり彼のこと困らせないであげてね。それに陛下へ挨拶が済んでない人は行かないと」
暗い表情から一転して明るい声で俺や周りに声をかけ始めたセレーネは何処か無理をしているようにも感じて心配になった。
周りの生徒達はセレーネに促される形で渋々俺達から離れると、挨拶を済ませてない生徒達は陛下の方へと歩いていき始める。それを確認してやっと解放されたと安堵の息を吐き出した。
「ありがとう。助かったよ」
「やっぱり皇太子様は人気者だね」
「……やめてくれ」
イタズラっ子みたいに意地悪な笑みを浮かべてセレーネがそんなことを言ってくるからなんだか恥ずかしくて顔を逸らした。やっぱり人に囲まれるのはあまり好きではない。
溜息を吐き出すと、それを見たセレーネがそっと俺の腕に手を回して寄り添ってくれた。青い水晶のような円な瞳が真っ直ぐに俺を見つめながら、僕が居るから大丈夫って言ってくれてその言葉を聞いて何故か凄く泣きたくなった。
セレーネが傍に居てくれる。
その言葉を彼の口から聞けることが本当に嬉しくて、幸せだと思う。
「ありがとう」
お父様とお母様のことも皇太子だということも一旦忘れて今はこの舞踏会を楽しもう。そうじゃないと折角セレーネが傍に居てくれるのに彼に失礼だ。
「あっ、音楽が流れ始めたよ」
「踊ろうか」
陛下達への挨拶が終わったのか舞踏会の音楽が流れ始めて、生徒達が次々と曲に合わせて踊り始める。俺達もその輪の中に混ざって笑い合いながら踊り出す。
少しづつ変化していく曲調に合わせてひたすら踊り明かす。この瞬間だけは俺達は2人だけの世界に潜ることが出来るんだ。
「セレーネ愛してる」
誰にも聞こえないように、そっとセレーネの耳元に唇を近づけて囁いた。
そうすればセレーネが一気に顔を赤くして、潤んだ瞳で俺の事を見てくれるんだ。
「……ばかっ」
「ふっ、かわいい」
君がずっと俺のことを好きでいてくれるなら馬鹿でもいいって本気で思った。
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