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図書委員の仕事が終わって、セレーネと共に広間へと向かった。

いつもは生徒で賑わっているそこは遅い時間のためなのか人は居なくてダンスを練習するのに丁度いい。

「えーと、教えるって言ったけど僕教えるの下手くそなんだよね……」

うーんって頭を抱えているセレーネが可愛らしくて思わず笑みが溢れてくる。

「よしっ!とりあえず踊ろうっ。そうしたら多分、分かると思う!アルは頭が良いから」

「ふっ、分かった。よろしく先生」

「まかせてよ!」

ふんって胸を張るセレーネはやっぱり可愛い。

漏れてくる笑みを抑えられないままセレーネが差し出してきた手に笑いながら手を重ねた。

子供体温の彼は触れるだけで全身が暖まる気がする。笑いとドキドキと少しの緊張、全てが今はただ愛おしいと感じる。

「えーと、最初はこうっ!」

「こうかい?」

指示された通りステップを踏めばセレーネがうんうんって頷いてくれる。

俺よりも頭一個分以上も背の低い彼が動く度にふわふわと揺れるくせっ毛に思わず触れたくなった。彼の香りが俺を包み込んで、それだけで幸せだと思えるんだから俺は単純だ。

「アルなんだか上手すぎない?」

「ん~、そうかな?」

「そうだよっ」

もしかして踊れる?

って頬を膨らませながら聞いてくるセレーネに俺はもう我慢できずに、ふはって吹き出して笑ってしまった。

そんな俺の事をセレーネがますますじとりとした瞳で見つめてくるから可愛すぎてイタズラしたくなる。

「セレーネ」

「……なーに」

「好きだよ」

「へっ、わっ」

ぐっとセレーネの腰を抱いて、ダンスの動きを早めるとセレーネが不機嫌そうな顔を崩してその顔がみるみる驚きに染まっていった。

彼をリードしながら広間をクルクルと自由に踊ると彼も俺の動きに段々と合わせてきて、俺の目の前をくるりとセレーネが回る。

この広い場所に2人きり、セレーネも楽しくなったのか笑い合いながらひたすら踊りを楽しんだ。

今この瞬間だけはこの世界は俺たちだけのモノで、きっと楽しいって心は通じ合っている。

ああ、本当にそれだけで泣きたくなるくらい嬉しいんだ。

セレーネが好きなんだ。

「楽しいね」

ふわりとセレーネが俺の事だけを見て笑ってくれたから俺は何故か涙が出そうになってそれを我慢しながら、そうだねって笑みを返した。

このダンスの様にクルクルと変わるセレーネの表情が好きだ。勿論、少しだけ幼さのある綺麗な顔も、柔らかな声も、無邪気で素直な性格も全てを愛してる。

今、俺の腕の中にいる彼が本当の意味で俺の腕の中に飛び込んできてくれたならどれだけ嬉しいだろう。

「わあっ!」

そんなことを考えているとセレーネが足をもつれさせて転けそうになった。

それを慌てて支えると、後数センチの距離に彼の顔が来てその瞬間時が止まった様な錯覚を覚えた。
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