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いつも通り図書館のカウンター席でセレーネの話に耳を傾けているとそろそろ行われる学園の舞踏会についての話になった。

年に一度、学園の大広間を使い行われる舞踏会は学生の交流を兼ねた大きな催しで、毎年皇帝陛下と皇后陛下も顔を見せに来るらしい。

編入生の俺は今年が初めての舞踏会だ。

「アルは誰と踊るか決まった?」

「まだだよ。セレーネは?」

僕も決まってない、ってセレーネがゆるく首を振ってその後俺達の間に微妙な空気が流れ始めた。お互いの心を探り合う様なその空気感に何故か妙に緊張してしまう。

「……良かったら、俺のパートナーになってくれない?」

先に口を開いたのは俺だった。

彼とになってから数ヶ月経ったけれど特にこれといって何かある訳でもなくて、普段通りの日常を過ごしていた。

ただ俺は少しだけ前よりも積極的にセレーネにアプローチするようにしている。

彼には俺の気持ちもバレているし今更隠していても無駄だと思ったからだ。それに、やっぱりセレーネに俺の事を意識して欲しかった。

俺の誘いにセレーネは考える素振りをした後に、返事は待って欲しいって言ってきた。

その答えに、分かったって返す。

セレーネは今もエイデンのことを思っているんだと、こういう時に思い知らされる。それでも、アプローチは続けていた。

いつか俺の方に少しでも気持ちを傾けてくれるって信じたいんだ。

「アルはダンスは踊れる?僕、教えてあげようか??」

「……え……あ、」

突然の申し出に困惑して首を傾げると、セレーネもそんな俺の様子に不思議そうに首を傾げた。

「……あ……もしかして貴族じゃなくてもダンスくらい習うのかな?……その、馬鹿にした訳じゃないんだよっ」

ハッとなにかに気がついたセレーネが慌てて弁解してきて、俺はその言葉で前に自分が平民だと嘘をついていることを思い出した。

ただ、幼い頃に出会ったのは自分だと伝えているから貴族だとバレているとばかり思っていて驚く。

「……俺は……」

初めは貴族だと訂正しようかとも思ったし、オリビアやノアに教えて貰ったと言おうかとも思いもしたけれど、そこで自分の下心がムクムクと湧いてきた。

「……教えて、貰えるならありがたい……」

素直に貴族だと明かせばいいものを目の前の美味しい餌に満々と釣られてしまう自分が情けなくもある。

だって、ダンスを習うとなればセレーネに触れることが出来るんだ……そんなの、釣られないわけない。

俺の返事にセレーネがぱあっと嬉しそうに顔を綻ばせて、じゃあ仕事が終わったら広間に行こう!って誘ってくれた。

俺はそれに対して、罪悪感と楽しみで複雑な感情のまま分かったって返事をした。
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