17 / 62
駄目だよ
③
しおりを挟む
セレーネの柔らかい唇の感触を感じて、理性が吹っ飛びそうになるのを目をぐっと閉じて我慢すると、彼の両肩に手を掛けて彼を引き離した。
「やだっ」
嫌だ嫌だと駄々っ子のように首を振るセレーネを抑えて、俺はしっかりと彼の顔を見ると、強い声で彼の名前を呼んだ。
「セレーネ、こっちを見ろ!」
「……っ」
俺の声に反応してセレーネがビクリと身体を跳ねさせる。
開花期に入った影響ではぁはぁと浅く呼吸を繰り返すセレーネは酷く辛そうで、どうにかしてやりたいと思うけれど、その役目は俺じゃないんだ。
「セレーネ、君が好きなのはエイデンだろう。そうだね?」
「……ぼ、僕っ……」
「違う?」
声を少しだけ和らげて問えばセレーネがポロリと涙を零して、僕はエイデンが好きって答えてくれた。
「ならこんなことしたらダメだ。絶対後悔する」
「……っ、だって……苦しいっ」
「……」
「苦しいよお……エイデンにいくら気持ちを伝えたって応えてくれないっ、僕はエイデンのことが好きなのにっ……でも、でもっ……アルは優しいから……ふっ……うぅ……」
顔を真っ赤にして苦しいって吐露するセレーネの背中を撫でてやりながら、俺は自分の心を落ち着かせるために1度だけ深呼吸をした。
セレーネの言葉は俺にとって刃のように鋭く重いから、受け止めるのに準備が必要なんだ。
「……セレーネ、俺はエイデンの代わりにはなれない。どんなにセレーネが今苦しくて、楽な方に逃げたくても俺は今の君を受け入れることは出来ないんだよ」
「……っ……アル……」
「……苦しいよね……。その苦しさを俺はよく知ってる。でも、俺は助けてあげられない。俺はエイデンじゃないから」
「……アルっ、ごめんなさいっ……」
そう言って泣きじゃくるセレーネをひたすら撫でてあげながら、俺は唇を噛み締める。
セレーネが苦しいように俺も胸が苦しくて、ギリギリの所で踏みとどまっている理性と胸の苦しさでどうにかなってしまいそうだった。
「アル~、遊びに来たよ」
その時、部屋の扉が開いてノアとオリビアが部屋に入ってきた。
「アル、いる~?って……なにしてんの?」
「アステルに、セレーネ様!?えっ、なんだ!??どういう状況なんだっ」
慌てる2人に、セレーネが開花期に入ったと伝えると2人が状況を直ぐに把握してくれて、とりあえず俺からセレーネを離してくれた。
俺は情けないことに腰が抜けてしまっていて、セレーネも苦しそうに胸を抑えている。
「とりあえずアルが外に出た方がいいね。セレーネ様はここに居てもらうしかないよ。外に出したら危険だ」
「……わかった……すまないが肩を貸してくれ」
オリビアがセレーネをベッドに連れて行って、ノアが俺に肩を貸してくれた。
「中から鍵をかけろ」
俺の指示にオリビアが頷いて、それを確認してから俺とノアは急いで部屋から出た。
「……噛んじゃえばよかったのに」
部屋を出て廊下を進んでいるとノアがそう小さく呟いて、俺はそんなことする訳ないだろって返事を返した。
「……どうして?好きなんでしょ」
「……好きだからこそだろ」
「僕なら噛むよ」
「俺はそんなにずるい人間にはなれないんだ。分かるだろ?」
はぁって息を吐き出すと、ノアがまた小さく分かりたくないって呟いたのが聞こえてきた。
「やだっ」
嫌だ嫌だと駄々っ子のように首を振るセレーネを抑えて、俺はしっかりと彼の顔を見ると、強い声で彼の名前を呼んだ。
「セレーネ、こっちを見ろ!」
「……っ」
俺の声に反応してセレーネがビクリと身体を跳ねさせる。
開花期に入った影響ではぁはぁと浅く呼吸を繰り返すセレーネは酷く辛そうで、どうにかしてやりたいと思うけれど、その役目は俺じゃないんだ。
「セレーネ、君が好きなのはエイデンだろう。そうだね?」
「……ぼ、僕っ……」
「違う?」
声を少しだけ和らげて問えばセレーネがポロリと涙を零して、僕はエイデンが好きって答えてくれた。
「ならこんなことしたらダメだ。絶対後悔する」
「……っ、だって……苦しいっ」
「……」
「苦しいよお……エイデンにいくら気持ちを伝えたって応えてくれないっ、僕はエイデンのことが好きなのにっ……でも、でもっ……アルは優しいから……ふっ……うぅ……」
顔を真っ赤にして苦しいって吐露するセレーネの背中を撫でてやりながら、俺は自分の心を落ち着かせるために1度だけ深呼吸をした。
セレーネの言葉は俺にとって刃のように鋭く重いから、受け止めるのに準備が必要なんだ。
「……セレーネ、俺はエイデンの代わりにはなれない。どんなにセレーネが今苦しくて、楽な方に逃げたくても俺は今の君を受け入れることは出来ないんだよ」
「……っ……アル……」
「……苦しいよね……。その苦しさを俺はよく知ってる。でも、俺は助けてあげられない。俺はエイデンじゃないから」
「……アルっ、ごめんなさいっ……」
そう言って泣きじゃくるセレーネをひたすら撫でてあげながら、俺は唇を噛み締める。
セレーネが苦しいように俺も胸が苦しくて、ギリギリの所で踏みとどまっている理性と胸の苦しさでどうにかなってしまいそうだった。
「アル~、遊びに来たよ」
その時、部屋の扉が開いてノアとオリビアが部屋に入ってきた。
「アル、いる~?って……なにしてんの?」
「アステルに、セレーネ様!?えっ、なんだ!??どういう状況なんだっ」
慌てる2人に、セレーネが開花期に入ったと伝えると2人が状況を直ぐに把握してくれて、とりあえず俺からセレーネを離してくれた。
俺は情けないことに腰が抜けてしまっていて、セレーネも苦しそうに胸を抑えている。
「とりあえずアルが外に出た方がいいね。セレーネ様はここに居てもらうしかないよ。外に出したら危険だ」
「……わかった……すまないが肩を貸してくれ」
オリビアがセレーネをベッドに連れて行って、ノアが俺に肩を貸してくれた。
「中から鍵をかけろ」
俺の指示にオリビアが頷いて、それを確認してから俺とノアは急いで部屋から出た。
「……噛んじゃえばよかったのに」
部屋を出て廊下を進んでいるとノアがそう小さく呟いて、俺はそんなことする訳ないだろって返事を返した。
「……どうして?好きなんでしょ」
「……好きだからこそだろ」
「僕なら噛むよ」
「俺はそんなにずるい人間にはなれないんだ。分かるだろ?」
はぁって息を吐き出すと、ノアがまた小さく分かりたくないって呟いたのが聞こえてきた。
22
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説
僕の罪と君の記憶
深山恐竜
BL
——僕は17歳で初恋に落ちた。
そしてその恋は叶った。僕と恋人の和也は幸せな時間を過ごしていたが、ある日和也から別れ話を切り出される。話し合いも十分にできないまま、和也は交通事故で頭を打ち記憶を失ってしまった。
もともと和也はノンケであった。僕は恋仲になることで和也の人生を狂わせてしまったと負い目を抱いていた。別れ話をしていたこともあり、僕は記憶を失った和也に自分たちの関係を伝えなかった。
記憶を失い別人のようになってしまった和也。僕はそのまま和也との関係を断ち切ることにしたのだが……。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー
葉月
BL
オメガバース。
成瀬瑞稀《みずき》は、他の人とは違う容姿に、幼い頃からいじめられていた。
そんな瑞稀を助けてくれたのは、瑞稀の母親が住み込みで働いていたお屋敷の息子、晴人《はると》
瑞稀と晴人との出会いは、瑞稀が5歳、晴人が13歳の頃。
瑞稀は晴人に憧れと恋心をいただいていたが、女手一人、瑞稀を育てていた母親の再婚で晴人と離れ離れになってしまう。
そんな二人は運命のように再会を果たすも、再び別れが訪れ…。
お互いがお互いを想い、すれ違う二人。
二人の気持ちは一つになるのか…。一緒にいられる時間を大切にしていたが、晴人との別れの時が訪れ…。
運命の出会いと別れ、愛する人の幸せを願うがあまりにすれ違いを繰り返し、お互いを愛する気持ちが大きくなっていく。
瑞稀と晴人の出会いから、二人が愛を育み、すれ違いながらもお互いを想い合い…。
イケメン副社長秘書α×健気美人訳あり子連れ清掃派遣社員Ω
20年越しの愛を貫く、一途な純愛です。
二人の幸せを見守っていただけますと、嬉しいです。
そして皆様人気、あの人のスピンオフも書きました😊
よければあの人の幸せも見守ってやってくだい🥹❤️
また、こちらの作品は第11回BL小説大賞コンテストに応募しております。
もし少しでも興味を持っていただけましたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
王太子専属閨係の見る夢は
riiko
BL
男爵家のシンは、親に売られて王都に来た。
売られた先はこの国最大の相手!? 王子の閨係というお仕事に就いたのだった。
自分は王子が婚約者と結婚するまでの繋ぎの体だけの相手……だったはずなのに、閨係なのに一向に抱いてもらえない。そして王子にどんどん惹かれる自分に戸惑う。夢を見てはいけない。相手はこの国の王太子、自分はただの男娼。
それなのに、夢を見てしまった。
王太子アルファ×閨担当オメガ
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語、お楽しみいただけたら幸いです!
君の番として映りたい【オメガバース】
さか【傘路さか】
BL
全9話/オメガバース/休業中の俳優アルファ×ライター業で性別を隠すオメガ/受視点/
『水曜日の最初の上映回。左右から見たら中央あたり、前後で見たら後ろあたり。同じ座席にあのアルファは座っている』
ライター業をしている山吹は、家の近くのミニシアターで上映料が安い曜日に、最初の上映を観る習慣がある。ある時から、同じ人物が同じ回を、同じような席で見ている事に気がつく。
その人物は、俳優業をしている村雨だった。
山吹は昔から村雨のファンであり、だからこそ声を掛けるつもりはなかった。
だが、とある日。村雨の忘れ物を届けたことをきっかけに、休業中である彼と気晴らしに外出をする習慣がはじまってしまう。
※小説の文章をコピーして無断で使用したり、登場人物名を版権キャラクターに置き換えた二次創作小説への転用は一部分であってもお断りします。
無断使用を発見した場合には、警告をおこなった上で、悪質な場合は法的措置をとる場合があります。
自サイト:
https://sakkkkkkkkk.lsv.jp/
誤字脱字報告フォーム:
https://form1ssl.fc2.com/form/?id=fcdb8998a698847f
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる