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駄目だよ
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「……アル……」
リビングのソファーに腰かけてどうしようかと思案していると、セレーネが起きてきてふらふらと身体を揺らしながら俺に近づいてきた。
あと数分もすれば開花期が来るだろうことがはっきりと分かる程に強い香りに眉をしかめる。
好きな子の開花期を前にして自分の中の天人の血が彼と契りを交わせと囁きかけているように感じた。
「セレーネ部屋に戻るんだ」
「……やだっ、アルと一緒にいる……アルいい匂いするから。懐かしい匂い……」
意識が朦朧としているのか、そう言って熱に浮かされた潤んだ瞳で俺の事を見つめてくるセレーネから視線を外す。
「セレーネが行かないなら俺が部屋に居るから、少し寝ていた方がいい。あとで、エイデンを呼ぶから」
「……やだっ!」
「ちょっ、セレーネっ」
突然セレーネが俺に抱きついてきて、その瞬間ぶわりと部屋中にセレーネの花の香りが充満した。開花期が始まったことが分かって、同時にドクリと自身の胸の鼓動が早くなったように感じた。
つーっと一筋額から汗が零れる。
今すぐ彼を自分のモノにしたいと、そればかりが脳内を支配し始めて、俺に抱きついているセレーネに手を伸ばしかけてグッとその手で握り拳を作った。
耐えろ……。
「セレーネ離れるんだ」
「やだ……アル……っ、」
あろうことかセレーネが俺に口付けをしようとしてきて、俺は慌てて自分の手で彼の唇を覆ってそれを阻止した。
「……んん!」
もごもごと口を動かして、なんで?って目で訴えてくるセレーネに、駄目だよって言い聞かせる。
開花期でおかしくなった状態でこんなことしてもセレーネは後悔するだけだ。
「……俺はエイデンじゃない」
「……ん、知ってるよっ」
俺の手を引き剥がしたセレーネがそう言ってまた同じように顔を近づけてくるから、俺は仕方なく彼を拘束するとソファーに押し倒してその手に、自身の首に付けていたネクタイを巻き付けた。
抵抗して暴れ回るセレーネに、落ち着いてって何度も言い聞かせる。
その言葉はまるでセレーネではなくて自分に言い聞かせているようにも感じて、グッと歯を食いしばって、ソファーに横たわるセレーネから身体を離した。
俺を誘うように、全身にセレーネの香りがまとわりついてくる。
「アルっ、苦しいっ……助けてっ、」
「……もう少しだけ耐えて欲しい……」
生憎と花人用の薬は持ち合わせていない上に、あれは高価すぎてこの学園にも置いていない。
セレーネが持っていないかとも思ったけれど手ぶらな上に、あの様子だと開花期が来るのはもう少し先の予定だったのかもしれない。
「くそっ……なんで……」
どうして開花期が早まったんだ……。
「アルっ、アル!」
涙を流しながら何度も俺の名前を呼んでくるセレーネが見ていられなくて、我慢しろって自分に言い聞かせながらセレーネの頭をそっと撫でてあげる。
「……はぁ……アルが欲しいっ……」
「……駄目だ」
好きな子から求められているのに、俺はそれに応えてあげることができない。
「……アルっ」
「セレーネ、君が好きなのはエイデンだ。エイデンのことを思い浮かべて、少し寝た方がいい」
「……やだあっ、アル……」
嫌だと首を振るセレーネを見つめながら、どうしたらいいのか頭を悩ませた。
オリビアかノアが来てくれれば、あの2人はノーマルだから助けを呼べるが、生憎アイツらがここに来るのは決まって週末。
俺は微かに溜息を漏らすと、もう一度セレーネの髪を優しく撫でてやろうと手を伸ばした。
そうしたらセレーネが突然ソファーから身体を乗り出して、俺の上に覆い被さるようにソファーから落ちてきた。
「……っ」
痛みに呻きつつ衝撃で閉じていた目を開けると、目の前にセレーネの綺麗な顔が現れて不味いと思った時には、彼が俺の唇に自分の唇を合わせいた。
リビングのソファーに腰かけてどうしようかと思案していると、セレーネが起きてきてふらふらと身体を揺らしながら俺に近づいてきた。
あと数分もすれば開花期が来るだろうことがはっきりと分かる程に強い香りに眉をしかめる。
好きな子の開花期を前にして自分の中の天人の血が彼と契りを交わせと囁きかけているように感じた。
「セレーネ部屋に戻るんだ」
「……やだっ、アルと一緒にいる……アルいい匂いするから。懐かしい匂い……」
意識が朦朧としているのか、そう言って熱に浮かされた潤んだ瞳で俺の事を見つめてくるセレーネから視線を外す。
「セレーネが行かないなら俺が部屋に居るから、少し寝ていた方がいい。あとで、エイデンを呼ぶから」
「……やだっ!」
「ちょっ、セレーネっ」
突然セレーネが俺に抱きついてきて、その瞬間ぶわりと部屋中にセレーネの花の香りが充満した。開花期が始まったことが分かって、同時にドクリと自身の胸の鼓動が早くなったように感じた。
つーっと一筋額から汗が零れる。
今すぐ彼を自分のモノにしたいと、そればかりが脳内を支配し始めて、俺に抱きついているセレーネに手を伸ばしかけてグッとその手で握り拳を作った。
耐えろ……。
「セレーネ離れるんだ」
「やだ……アル……っ、」
あろうことかセレーネが俺に口付けをしようとしてきて、俺は慌てて自分の手で彼の唇を覆ってそれを阻止した。
「……んん!」
もごもごと口を動かして、なんで?って目で訴えてくるセレーネに、駄目だよって言い聞かせる。
開花期でおかしくなった状態でこんなことしてもセレーネは後悔するだけだ。
「……俺はエイデンじゃない」
「……ん、知ってるよっ」
俺の手を引き剥がしたセレーネがそう言ってまた同じように顔を近づけてくるから、俺は仕方なく彼を拘束するとソファーに押し倒してその手に、自身の首に付けていたネクタイを巻き付けた。
抵抗して暴れ回るセレーネに、落ち着いてって何度も言い聞かせる。
その言葉はまるでセレーネではなくて自分に言い聞かせているようにも感じて、グッと歯を食いしばって、ソファーに横たわるセレーネから身体を離した。
俺を誘うように、全身にセレーネの香りがまとわりついてくる。
「アルっ、苦しいっ……助けてっ、」
「……もう少しだけ耐えて欲しい……」
生憎と花人用の薬は持ち合わせていない上に、あれは高価すぎてこの学園にも置いていない。
セレーネが持っていないかとも思ったけれど手ぶらな上に、あの様子だと開花期が来るのはもう少し先の予定だったのかもしれない。
「くそっ……なんで……」
どうして開花期が早まったんだ……。
「アルっ、アル!」
涙を流しながら何度も俺の名前を呼んでくるセレーネが見ていられなくて、我慢しろって自分に言い聞かせながらセレーネの頭をそっと撫でてあげる。
「……はぁ……アルが欲しいっ……」
「……駄目だ」
好きな子から求められているのに、俺はそれに応えてあげることができない。
「……アルっ」
「セレーネ、君が好きなのはエイデンだ。エイデンのことを思い浮かべて、少し寝た方がいい」
「……やだあっ、アル……」
嫌だと首を振るセレーネを見つめながら、どうしたらいいのか頭を悩ませた。
オリビアかノアが来てくれれば、あの2人はノーマルだから助けを呼べるが、生憎アイツらがここに来るのは決まって週末。
俺は微かに溜息を漏らすと、もう一度セレーネの髪を優しく撫でてやろうと手を伸ばした。
そうしたらセレーネが突然ソファーから身体を乗り出して、俺の上に覆い被さるようにソファーから落ちてきた。
「……っ」
痛みに呻きつつ衝撃で閉じていた目を開けると、目の前にセレーネの綺麗な顔が現れて不味いと思った時には、彼が俺の唇に自分の唇を合わせいた。
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