12 / 62
似てない双子
②
しおりを挟む
いつも通り図書館に行くと備え付けのテーブル席にセレーネが座っているのが見えて足を止めた。
彼は本を読むでもなくぼーっと窓の外を眺めていて、まるでその姿が1枚の絵のようにも見えて見惚れてしまう。
誘うように彼の香りが俺の方に漂ってきて、この匂いが分かるのが俺だけならいいのにと思ってしまった。
手を繋いで帰った夜、エイデンと2人きりになった彼はどんな会話をしたのだろうか。
邪魔になると思って直ぐに帰ったけれど、俺が帰ったことを寂しいと少しでも思ってくれたかな?
そんなことを思って、でも声をかけるのは戸惑われて、俺はいつも通り委員専用のカウンター席に腰掛けて生徒が本を借りに来るのを待つ。
「精が出ますね~」
声をかけられて顔を上げると目の前に見知った顔が立っていて眉をしかめた。
「……ノアか。何の用だ」
「暇だから遊びに来ちゃったっ」
「オリビアは?」
「ビアは騎士訓練中だよ~」
「お前はいいのか?」
「僕は騎士にはならないからね」
オリビアの双子の弟のノアはそう言ってヘラヘラと笑みを浮かべるとカウンター席の卓上に座って俺が持っていた本を覗きこんできた。
「おい、ここに座るな」
「そんなの読んで楽しい?」
「話を聞け」
「だって座るところないから~」
「あっちにテーブル席があるからそこに行けばいいだろう」
「えー!アルと話したいもーん」
ぶーって頬を膨らませるノアに俺は溜息を吐き出す。
こいつの相手は疲れる。
「あれ?アル居たんだ!」
柔らかくて明るい声が聞こえてきてそちらを見るとセレーネがこちらへと歩いてきているのが目に入って少しだけ慌てた。
ノアと会わせるのはあまり良くない気がしたからだ。
「声かけてくれたら良かったのに~」
にこにこと笑うセレーネに、気づかなくてって答える。手を繋いだことを気にしているのは俺だけなんだろうか……。
少しだけ気まずい気がした。
「セレーネ=ミラー……」
何故かノアがセレーネのことを睨みながら名前を呟いて、それにセレーネがそうだよ?って笑顔で返事を返した。
ノアが1層きつくセレーネを睨みつけて、俺はそれを見て、やっぱりかって思う。
ノアは何故か俺の周りにいる人間を嫌う傾向にある。
オリビアは双子だから大丈夫だけど、少し話しただけのご令嬢にすら敵意むき出しだからいつも困ってしまっていた。
オリビアが俺の好きな人がセレーネだと知っていたならノアもセレーネのことを知っているだろうと思っていたが予想通りだったようだ。
「僕帰る」
「ああ、オリビアによろしく言っておいてくれ」
俺の言葉にノアは何も返事を返えさずに背を向けて歩いていってしまう。それに苦笑いを浮かべると、お話したかったのに~ってセレーネが呟いて、それにも苦笑いをこぼした。
「そうだっ、ねえ、聞いてっ」
「どうしたの?」
「エイデンがね」
ああ……また、エイデンか。
セレーネが楽しげにエイデンの話をし始めて、ついそう思った時、ノアがこっちに早足で戻ってきて俺はそれに首を傾げた。
彼は本を読むでもなくぼーっと窓の外を眺めていて、まるでその姿が1枚の絵のようにも見えて見惚れてしまう。
誘うように彼の香りが俺の方に漂ってきて、この匂いが分かるのが俺だけならいいのにと思ってしまった。
手を繋いで帰った夜、エイデンと2人きりになった彼はどんな会話をしたのだろうか。
邪魔になると思って直ぐに帰ったけれど、俺が帰ったことを寂しいと少しでも思ってくれたかな?
そんなことを思って、でも声をかけるのは戸惑われて、俺はいつも通り委員専用のカウンター席に腰掛けて生徒が本を借りに来るのを待つ。
「精が出ますね~」
声をかけられて顔を上げると目の前に見知った顔が立っていて眉をしかめた。
「……ノアか。何の用だ」
「暇だから遊びに来ちゃったっ」
「オリビアは?」
「ビアは騎士訓練中だよ~」
「お前はいいのか?」
「僕は騎士にはならないからね」
オリビアの双子の弟のノアはそう言ってヘラヘラと笑みを浮かべるとカウンター席の卓上に座って俺が持っていた本を覗きこんできた。
「おい、ここに座るな」
「そんなの読んで楽しい?」
「話を聞け」
「だって座るところないから~」
「あっちにテーブル席があるからそこに行けばいいだろう」
「えー!アルと話したいもーん」
ぶーって頬を膨らませるノアに俺は溜息を吐き出す。
こいつの相手は疲れる。
「あれ?アル居たんだ!」
柔らかくて明るい声が聞こえてきてそちらを見るとセレーネがこちらへと歩いてきているのが目に入って少しだけ慌てた。
ノアと会わせるのはあまり良くない気がしたからだ。
「声かけてくれたら良かったのに~」
にこにこと笑うセレーネに、気づかなくてって答える。手を繋いだことを気にしているのは俺だけなんだろうか……。
少しだけ気まずい気がした。
「セレーネ=ミラー……」
何故かノアがセレーネのことを睨みながら名前を呟いて、それにセレーネがそうだよ?って笑顔で返事を返した。
ノアが1層きつくセレーネを睨みつけて、俺はそれを見て、やっぱりかって思う。
ノアは何故か俺の周りにいる人間を嫌う傾向にある。
オリビアは双子だから大丈夫だけど、少し話しただけのご令嬢にすら敵意むき出しだからいつも困ってしまっていた。
オリビアが俺の好きな人がセレーネだと知っていたならノアもセレーネのことを知っているだろうと思っていたが予想通りだったようだ。
「僕帰る」
「ああ、オリビアによろしく言っておいてくれ」
俺の言葉にノアは何も返事を返えさずに背を向けて歩いていってしまう。それに苦笑いを浮かべると、お話したかったのに~ってセレーネが呟いて、それにも苦笑いをこぼした。
「そうだっ、ねえ、聞いてっ」
「どうしたの?」
「エイデンがね」
ああ……また、エイデンか。
セレーネが楽しげにエイデンの話をし始めて、ついそう思った時、ノアがこっちに早足で戻ってきて俺はそれに首を傾げた。
21
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
それが運命というのなら
藤美りゅう
BL
元不良執着α×元不良プライド高いΩ
元不良同士のオメガバース。
『オメガは弱い』
そんな言葉を覆す為に、天音理月は自分を鍛え上げた。オメガの性は絶対だ、変わる事は決してない。ならば自身が強くなり、番など作らずとも生きていける事を自身で証明してみせる。番を解消され、自ら命を絶った叔父のようにはならない──そう理月は強く決心する。
それを証明するように、理月はオメガでありながら不良の吹き溜まりと言われる「行徳学園」のトップになる。そして理月にはライバル視している男がいた。バイクチーム「ケルベロス」のリーダーであるアルファの宝来将星だ。
昔からの決まりで、行徳学園とケルベロスは決して交わる事はなかったが、それでも理月は将星を意識していた。
そんなある日、相談事があると言う将星が突然自分の前に現れる。そして、将星を前にした理月の体に突然異変が起きる。今までなった事のないヒートが理月を襲ったのだ。理性を失いオメガの本能だけが理月を支配していき、将星に体を求める。
オメガは強くなれる、そう信じて鍛え上げてきた理月だったが、オメガのヒートを目の当たりにし、今まで培ってきたものは結局は何の役にも立たないのだと絶望する。将星に抱かれた理月だったが、将星に二度と関わらないでくれ、と懇願する。理月の左手首には、その時将星に噛まれた歯型がくっきりと残った。それ以来、理月が激しくヒートを起こす事はなかった。
そして三年の月日が流れ、理月と将星は偶然にも再会を果たす。しかし、将星の隣には既に美しい恋人がいた──。
アイコンの二人がモデルです。この二人で想像して読んでみて下さい!
※「仮の番」というオリジナルの設定が有ります。
※運命と書いて『さだめ』と読みます。
※pixivの「ビーボーイ創作BL大賞」応募作品になります。
オメガバース 悲しい運命なら僕はいらない
潮 雨花
BL
魂の番に捨てられたオメガの氷見華月は、魂の番と死別した幼馴染でアルファの如月帝一と共に暮らしている。
いずれはこの人の番になるのだろう……華月はそう思っていた。
そんなある日、帝一の弟であり華月を捨てたアルファ・如月皇司の婚約が知らされる。
一度は想い合っていた皇司の婚約に、華月は――。
たとえ想い合っていても、魂の番であったとしても、それは悲しい運命の始まりかもしれない。
アルファで茶道の家元の次期当主と、オメガで華道の家元で蔑まれてきた青年の、切ないブルジョア・ラブ・ストーリー
【完結】恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話
十海 碧
BL
桐生蓮、オメガ男性は桜華学園というオメガのみの中高一貫に通っていたので恋愛経験ゼロ。好きなのは男性なのだけど、周囲のオメガ美少女には勝てないのはわかってる。高校卒業して、漫画家になり自立しようと頑張っている。蓮の父、桐生柊里、ベータ男性はイケメン恋愛小説家として活躍している。母はいないが、何か理由があるらしい。蓮が20歳になったら母のことを教えてくれる約束になっている。
ある日、沢渡優斗というアルファ男性に出会い、お互い運命の番ということに気付く。しかし、優斗は既に伊集院美月という恋人がいた。美月はIQ200の天才で美人なアルファ女性、大手出版社である伊集社の跡取り娘。かなわない恋なのかとあきらめたが……ハッピーエンドになります。
失恋した美月も運命の番に出会って幸せになります。
蓮の母は誰なのか、20歳の誕生日に柊里が説明します。柊里の過去の話をします。
初めての小説です。オメガバース、運命の番が好きで作品を書きました。業界話は取材せず空想で書いておりますので、現実とは異なることが多いと思います。空想の世界の話と許して下さい。
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
記憶の欠片
藍白
BL
囚われたまま生きている。記憶の欠片が、夢か過去かわからない思いを運んでくるから、囚われてしまう。そんな啓介は、運命の番に出会う。
過去に縛られた自分を直視したくなくて目を背ける啓介だが、宗弥の想いが伝わるとき、忘れたい記憶の欠片が消えてく。希望が込められた記憶の欠片が生まれるのだから。
輪廻転生。オメガバース。
フジョッシーさん、夏の絵師様アンソロに書いたお話です。
kindleに掲載していた短編になります。今まで掲載していた本文は削除し、kindleに掲載していたものを掲載し直しました。
残酷・暴力・オメガバース描写あります。苦手な方は注意して下さい。
フジョさんの、夏の絵師さんアンソロで書いたお話です。
表紙は 紅さん@xdkzw48
運命なんて残酷なだけ
緋川真望
BL
「この人が本当に運命の番ならいいのに」
オメガである透はアルファの婚約者との結婚を間近に控えたある日、知らない男に襲われてむりやり番(つがい)にされてしまう。汚されたΩは家門の恥だと屋敷を追い出され、婚約も破棄され、透はその事件ですべてを失った。
三年後、母の葬儀にこっそり参加した透は参列者のひとりから強烈なアルファのフェロモンを感じ取る。番にされたオメガは番のフェロモンしか感じ取れないはず。透はその男こそ犯人だと思ってナイフで襲いかかるが、互いに発情してしまい激しく交わってしまう。
男は神崎慶という実業家で、自分は犯人ではないと透に訴える。疑いを消せない透に対して「俺が犯人を捕まえてやる。すべて成し遂げた暁には俺と結婚して欲しい」といきなりプロポーズするのだが……。
透の過去は悲惨ですが、慶がものすごいスパダリなのでそこまでつらい展開は無いはずです。
ちゃんとハッピーエンドになります。
(攻めが黒幕だったとかいう闇BLではありません)
【完結】運命の相手は報われない恋に恋してる
grotta
BL
オメガの僕には交際中の「運命の番」がいる。僕は彼に夢中だけど、彼は運命に逆らうようにいつも新しい恋を探している。
◆
アルファの俺には愛してやまない「運命の番」がいる。ただ愛するだけでは不安で、彼の気持ちを確かめたくて、他の誰かに気があるふりをするのをやめられない。
【溺愛拗らせ攻め×自信がない平凡受け】
未熟で多感な時期に運命の番に出会ってしまった二人の歪んだ相思相愛の話。
久藤冬樹(21歳)…平凡なオメガ
神林豪(21歳)…絵に描いたようなアルファ(中身はメンヘラ)
※番外編も完結しました。ゼミの後輩が頑張るおまけのifルートとなります
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる