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地味な生徒

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図書委員の仕事を終えて寮への道を歩きながらため息をついた。

学生のうちは寮に住む生徒も少なくなく、俺もその1人だ。

学園から割と近い位置に宮殿もあるから、お母様には宮殿から通ったらいいと言われたが、それでは周りに皇太子だと言っているようなものだと拒否して寮に入った。

お母様の深い深いため息を思い出すと苦笑いが漏れる。

皇太子としての仕事は俺の付き人が持ってきてくれるので寮の部屋で行っているし今のところ問題は起きていない。

先程のセレーネのことを思い出しながら、笑顔を見れた嬉しさと好きな人という言葉への嫉妬で感情がぐちゃぐちゃになってしまってつい眉をしかめた。

彼と出会った日のことを考える度、彼は俺の運命の人だと思うのに、顔を合わせて話をした彼は何も感じていない風だった。

俺の勘違いだったのかもしれない。

お父様とお母様は会った瞬間狂わされたようにお互いが惹かれあったのだと言っていて、あの日の俺達も同じだったと確信していたのに……。

あの人達が特別だっただけなんだろう。

俺とセレーネの間には何もありはしないんだ……。

だとしたら、俺が感じた何もかもがまやかしだったのだろうか。

悶々とした気持ちで歩みを進めていると、目の前を1組の生徒が並んで歩いているのが目に入った。

見間違えるはずもない……。

セレーネとエイデンだ。

セレーネがエイデンに何やら楽しげに話しかけていて、それをエイデンが微笑みながら聞いてあげている。

一見するれば本当にお似合いの恋人同士で、俺はぐっと唇を噛んだ。

意気地無しめ。

自分を罵倒しながら、立ち止まってどんどんと前へと進んでいく彼らをただ見つめる。

「……狂わされたのはきっと俺だけだ……」

ゆらゆらと彼の香りが俺を誘うようにこちらへと漂ってくる。

離れていてもわかる、甘いナデシコの様な香りに胸が燃えるように熱くなって、どうしようもなく好きなんだと気持ちを噛み締めた。

「こっちを向いてくれ」

他の男なんか見ないで俺のことを見て欲しい。

聞こえるはずなんかないのに彼の背中に向かって呟いた。

そうしたら、何故か彼の匂いが微かにゆらいで、彼がゆっくりと俺の方に振り返ったんだ。

「……あれ?図書館の……」

彼の可愛らしいよく通る声が俺に話しかけてきて、彼の青い目と視線がぶつかった。

「ん?君って高等部からの編入生でしょ。めっちゃ頭良いって噂の」

それと同時に、エイデンも振り返って俺に話しかけてきたんだ。
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