マニーフェイク・フレンズ

天宮叶

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デート?

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いつも通りの時間に起きて、職場に向かうと店長の車が既に止めてあって相変わらずはやいなーって思いながら車から降りた。

「おはざーす」

「おう、おはよう」

レジ内のお金を確認していた店長が俺に気づいて挨拶を返してくれた。その横を通り過ぎて事務所内のロッカーに荷物を直す。

「昨日ちゃんと休めたか?」

「グッスリっすね」

お互いが背中を向けたままぽつぽつと会話を交わす。

ガガガーーってマネーカウンターに乗せられたお札が数えられる音が会話の後の沈黙を引き裂くように鳴り響く。

昨日はあんなに喋っていた店長は既に仕事モードなのか全然喋らないしいつも通り眉間に皺を寄せてお金と睨めっこしている。

「また飯行こう」

ぽつりと言われた言葉が音のせいでよく聞こえなくて店長の方を振り向いて何か言いましたー?って聞き返すと店長も俺の方を振り返る。

その顔が昨日のプライベートモードの時の店長と同じで驚いた。

「また飯いこうな」

「…、はい、、ぜひ」

俺の返事を聞いた店長はまた俺に背を向けてお金を数え始める。それを見つめながらなんだか調子が狂うなって思う。

早めに導入されている夏物商品の整理をしてから外に出て今日は休みのあみちゃんの代わりに花を出していく。

「明後日か…」

花を見ながら月見さんとの予定が明後日なことにまだまだ先は長いなーってつい思う。

花を出していると端っこに置いてあった1つがポッキリ折れているのに気がついてそれを手に取った。他の花は綺麗に咲き誇っているのにこの花だけがだらんと花弁を下に向けて俯いている。

まるでそれが高校の時に金ヅルだと言われて友達だと認めてもらえていなかった仲間はずれの俺みたいだなってふと思う。

そんなこと思うなんて自分が詩人にでもなった気分になってキモイなーってつぶやく。

たった60円程のこの花は折れたことでその価値すら無くなって、もう売ることは出来ないから捨てるしかないって思うとなんだか可哀想に思えて、花に仲間意識を向けるなんて馬鹿げてるとは思いながらも後で買おうと決めた。

「よしっ、終わりっと」

全ての花を出し終わって折れた花と籠をもって中に入る。籠をバックルームに直してから事務所の隅に花を置いておいた。

「買うのか?」

「折れてるんすけど捨てるの勿体ないなって思って」

「へー、半額でいいぞ」

店長のありがたい申し出にいつもならすぐに飛びつく俺だけど今回だけは悩んだ。

半額で買うのが何故だかこの花にダメなものだって角印を押す行為に感じられてそれが嫌だなって思う。

「元値で買いますよ」

「そうか?なんか今日の星野は変だな。いつもは折れてても買ったりしないだろ」

「あーまあ、なんとなくっすかね」

作業をしながら怪訝そうな顔をする店長に無難な返事を返した。
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