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宮廷編

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あのまま、また抱き潰され、僕は意識が飛ぶまで欲を吐き出し続けた。

「ぅ、ん……」

目が覚めると、鳴り響いていた雨音が止んでいることに気がついて顔を上げる。隣には深い眠りについている陛下の姿。

(行かないと!)

あれからどのくらいの時間が経ったのかはわからない。それでも、動かずには居られなかった。陛下を起こさないように細心の注意をはかりながら寝台を出る。部屋を飛び出し、空を見上げれば満天の星空の中に浮かぶ満月と目が合った。

今にも泣きそうな心地のまま、ひたすらに駆ける。不思議なことに部屋の周りには衛兵は居なくて、簡単に白樺の木まで向かうことが出来た。
木の下でじっと空を見つめている想い人の背を視界に映し嬉しくなる。

「静龍様!」
「仔空っ」

彼の胸に飛び込めば、驚きながらもしっかりと受け止めてくれた。嬉しくて……同時に心が酷く苦しい。
陛下から与えられた熱や感覚は、未だに身体を蝕み先程の行為をありありと示している。

「っ……待っていてくれたのですね」
「仔空のためならいつまででも待つさ」
「嬉しいです……」

宝物を扱うように優しく触れられて、心が癒される。唇にキスを落とされると、先程の行為を塗りつぶすように夢中になって舌を絡めた。

「可愛い」

囁きながら、僕の手を取ろうとした静龍様が動きを止める。
視線の先には、陛下に噛まれてしまった手の甲の跡があった。

「なにかあったのか?それに仔空から俺以外の尊者の匂いがする」

言われて、ビクリと肩を跳ねさせた。静龍様の顔を見れば、怒りよりも心配の色が見え隠れしていて、自然と涙が溢れてくる。

手の甲に手巾ハンカチを巻いてくれた静龍様が、泣き出した僕を慰めるように、抱きしめてくれる。その心地良さに目を細めた。

「怖い目にあったのだろう。仔空が話したくないのならなにも聞かない。今はとにかく、ここを離れよう」
「っ、はい」

静龍様に手を引かれ、一歩を踏み出そうとしたとき僕を背に庇うように彼がその場に足を止めた。不思議に思い目の前を見れば、無表情の陛下が立っていて息をのむ。

「まさか、相手がお前とはな」
「陛下……、まさか……」

僕に纏わりつく香りが誰のものか気がついたのか、静龍様に掴まれている手に力が込められたのを感じた。
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