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宮廷編

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ただ気持ちよさに身を任せることが出来たのならどれほど楽だろうか……。

そんな考えが過り、思わず唇を噛み締める。
気持ちよくなんてなってやるものかっ。声を押し殺し、与えられる快感に耐え続ける。静龍様との行為を少しずつ黒で塗りつぶされていく。

増やされた指が、一点を掠めると、大きく背が仰け反り、簡単に欲を吐き出してしまった。

「やっ、そこはやめてっ」
「ここがいいのだろう。素直になれ」
「やだっ、あっ、あ、やあっ」

陛下の昂りがなんの前触れもなく、簡単に僕の中へと挿入される。圧倒的な質量と、一擦りの感覚だけで、僕はまた出したばかりの白濁をトロリと溢れさせた。

「気を抜くとっ、持っていかれそうだ…くそっ」

荒い口調ながらも、腰の動きは丁寧で気遣いが感じられる。それが余計、彼の冷静さを物語っているように感じられて、僕だけが熱に侵されているのだと自覚させられる。静龍様への罪悪感で吐きそうなのに、もっと欲しいと思ってしまう浅ましい本能に抗えない。

「あぅ、あ、そこ、やぁ」
「っ、甘いな」
「んっ、ちゅ……あ、ん」

恋人のように、初対面の相手と口付けを交わし体を繋げる。溢れてくる涙を舌先で舐め取られ、ぎゅっと目を閉じた。

快楽を求め、少しずつ早くなっていく腰使い。翻弄され、身を捩れば、腰を掴まれて逃げられなくされる。

「お前は、私のものだ……ようやく見つけた私だけの……っ」
「やあっ、ん~~!」

一際激しく腰が打ち付けられ、中に欲が吐き出される。
その瞬間、項へと陛下の歯が突き立てられそうになり、咄嗟に手で項を庇った。

噛んでほしい……。

本能は叫んでいる。でも、それは僕の意思ではない。
項を噛むことの意味を、今は少しだけ理解出来る。
手の甲に犬歯が食込み、痛みに眉を寄せ呻き声をあげる。その声を聞き、陛下が顔を離した。

「まだ抗うかっ……」
「ぅ、僕には、愛する人がいるのです」
「……よくも、私の前でそんなことが言えたものだ」

ギラつく漆黒の瞳に微かな怒りを感じ取ったものの、否定するつもりはなかった。彼は皇帝陛下だ。気に食わなければ簡単に僕を殺すことだってできるだろう。

それでも、この思いだけは否定したくない。
体を暴かれようと、殺されてしまおうとも、静龍様への気持ちは決して揺るがないから。

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