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宮廷編
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連れてこられたのは、珠蘭様の屋敷から遠く離れた場所だった。自分がどこにいるのかもわからず、なされるがまま服を脱がされる。ぼんやりとする意識では抵抗することも出来ず、されるがままになってしまう。裸の状態で柔らかな羽毛布団の敷かれた寝台へと寝かせられると、陛下も濡れた衣服を脱ぎ捨てて、僕の上へと馬乗りになった。
「っ、や……」
力の入らない手で胸を押し、逃げようと試みる。
「運命などおとぎ話の類だと思っていたが……まさか実在するとはな。っ、気を抜くと意識を持っていかれそうだ」
「……うん、めい?」
長い黒髪が顔の横へと流れ落ち、唇が届きそうな距離に整いすぎて冷たくも感じられる顔が近づく。静龍様のものとは違う、切れ長の漆黒の瞳に熱を感じて、怖くなる。
陛下が喋る度に、口元から鋭い犬歯が覗き、咄嗟に身を後ろへと下げた。
「逃げるな」
腕を掴まれて、引き寄せられる。触れられた部分がやけに熱く感じ、瞬間、目の前の彼が欲しいと強く望んでしまう。
「あ、なにこれっ……」
違う……僕は静龍様に会わないといけないのに……。
香期のせいでこんなことを思うのだろうか?
自分自身が怖い。上手くまとまらない感情が涙となって溢れてくる。
「っ……泣くな。私を見ろ!」
「やだっ、離して……っ、やだぁ」
首を何度も横に振り抵抗する。
「なぜ拒む?私は皇帝だ。皇帝と運命の番だと聞けば、他の者なら飛んで喜ぶはず」
「違う……僕の運命の人は貴方じゃない……っ」
初めて出会ったのに、陛下を見た瞬間引き寄せられるような感覚を覚えた。それが運命だというのなら、そんな安い運命なんて僕は信じたくない。
目の前の彼が欲しいと心が動きそうになる。それでも、少しずつ冷静さを取り戻せているのは、ひとえに静龍様との約束があるからだった。
「なら、試してやろう」
「やっ、んんっ……」
唇が重ねられ、激しく舌を絡められる。甘さなんて一欠片もないはずの行為に酔いしれてしまいそうになるのはなぜなのだろう。
唾液が口から溢れ、こぼれ落ちる。それを舌先で舐めとった陛下が、犬歯をむきだしにして笑みを浮かべた。
「ふやけきった顔をしているぞ。はぁ……っ、大口を叩いたのだ。もう少し根性を見せてみろっ」
陛下の額から一つ汗が流れたのが見えた。
雨の湿気ので、真夏ということもあり室内はやけに蒸し熱いからだろう。
昂りを握りこまれ、上下に動かされるだけで簡単に白濁が腹を濡らす。信じられないほどの快楽がビリビリと背筋を通り抜け、なにも考えられなくなってしまいそうだ。
「ああっ、ゃ、怖いっ、やだっ」
「暴れるなっ……!」
思わず陛下へと背を向けると、首に手が回され、そのまま後ろから昂りを刺激されてしまう。グチュリと卑猥な音が鼓膜に届き、怖いのに気持ちよくて、おかしくなってしまいそうだった。
触れてくる陛下の手の熱さから早く逃れたい。
助けを求めて、前へと手を伸ばす。指先は空を切り、敷かれた布へと食い込む。どうしてこんなことになったんだろう。
どうして……。静龍様会いたい……。
「誰のことを考えている」
「あっ……」
背に覆いかぶさられ、耳元で問いかけられた。
舌先が、耳たぶを掠め、息がかかるとその刺激だけで腰が揺れる。嫌なはずなのに、少しずつ脳内が溶かされていく。身も心も預けてしまいたい衝動が、意志や想いを塗りつぶしていく気がして恐怖が目の前を覆う。
「私は自身の所有物になったものに手をつけられるのが好きではない」
「誰のことも、考えてなど、いませんっ」
彼の所有物になった覚えもない。それなのに、支配されてしまいたいと、自身の中の芳者の血がざわつく。
「……はぁ、気に食わないな」
微かに怒りを含んだ、湿っぽいため息が鼓膜を揺らした。
長い指が、濡れそぼった蜜孔へと簡単に挿入される。内壁を指の腹で擦られると、もっと欲しいのだと訴えるように下半身に力がはいり、指を締め付ける。
「っ、や……」
力の入らない手で胸を押し、逃げようと試みる。
「運命などおとぎ話の類だと思っていたが……まさか実在するとはな。っ、気を抜くと意識を持っていかれそうだ」
「……うん、めい?」
長い黒髪が顔の横へと流れ落ち、唇が届きそうな距離に整いすぎて冷たくも感じられる顔が近づく。静龍様のものとは違う、切れ長の漆黒の瞳に熱を感じて、怖くなる。
陛下が喋る度に、口元から鋭い犬歯が覗き、咄嗟に身を後ろへと下げた。
「逃げるな」
腕を掴まれて、引き寄せられる。触れられた部分がやけに熱く感じ、瞬間、目の前の彼が欲しいと強く望んでしまう。
「あ、なにこれっ……」
違う……僕は静龍様に会わないといけないのに……。
香期のせいでこんなことを思うのだろうか?
自分自身が怖い。上手くまとまらない感情が涙となって溢れてくる。
「っ……泣くな。私を見ろ!」
「やだっ、離して……っ、やだぁ」
首を何度も横に振り抵抗する。
「なぜ拒む?私は皇帝だ。皇帝と運命の番だと聞けば、他の者なら飛んで喜ぶはず」
「違う……僕の運命の人は貴方じゃない……っ」
初めて出会ったのに、陛下を見た瞬間引き寄せられるような感覚を覚えた。それが運命だというのなら、そんな安い運命なんて僕は信じたくない。
目の前の彼が欲しいと心が動きそうになる。それでも、少しずつ冷静さを取り戻せているのは、ひとえに静龍様との約束があるからだった。
「なら、試してやろう」
「やっ、んんっ……」
唇が重ねられ、激しく舌を絡められる。甘さなんて一欠片もないはずの行為に酔いしれてしまいそうになるのはなぜなのだろう。
唾液が口から溢れ、こぼれ落ちる。それを舌先で舐めとった陛下が、犬歯をむきだしにして笑みを浮かべた。
「ふやけきった顔をしているぞ。はぁ……っ、大口を叩いたのだ。もう少し根性を見せてみろっ」
陛下の額から一つ汗が流れたのが見えた。
雨の湿気ので、真夏ということもあり室内はやけに蒸し熱いからだろう。
昂りを握りこまれ、上下に動かされるだけで簡単に白濁が腹を濡らす。信じられないほどの快楽がビリビリと背筋を通り抜け、なにも考えられなくなってしまいそうだ。
「ああっ、ゃ、怖いっ、やだっ」
「暴れるなっ……!」
思わず陛下へと背を向けると、首に手が回され、そのまま後ろから昂りを刺激されてしまう。グチュリと卑猥な音が鼓膜に届き、怖いのに気持ちよくて、おかしくなってしまいそうだった。
触れてくる陛下の手の熱さから早く逃れたい。
助けを求めて、前へと手を伸ばす。指先は空を切り、敷かれた布へと食い込む。どうしてこんなことになったんだろう。
どうして……。静龍様会いたい……。
「誰のことを考えている」
「あっ……」
背に覆いかぶさられ、耳元で問いかけられた。
舌先が、耳たぶを掠め、息がかかるとその刺激だけで腰が揺れる。嫌なはずなのに、少しずつ脳内が溶かされていく。身も心も預けてしまいたい衝動が、意志や想いを塗りつぶしていく気がして恐怖が目の前を覆う。
「私は自身の所有物になったものに手をつけられるのが好きではない」
「誰のことも、考えてなど、いませんっ」
彼の所有物になった覚えもない。それなのに、支配されてしまいたいと、自身の中の芳者の血がざわつく。
「……はぁ、気に食わないな」
微かに怒りを含んだ、湿っぽいため息が鼓膜を揺らした。
長い指が、濡れそぼった蜜孔へと簡単に挿入される。内壁を指の腹で擦られると、もっと欲しいのだと訴えるように下半身に力がはいり、指を締め付ける。
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