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花の行方
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馬車に揺られてどのくらい経っただろうか。
外はすっかり暗くなっていて、ここがどこなのか見当もつかない。
降りるように促されて、通された場所は簡素だけれどしっかりと手入れの行き届いた貴族の別荘のような場所だった。
「さっさと歩いてよね」
「……ここはどこ」
「お父様が用意してくれた場所。迎えが来るまではこんな貧乏臭い場所に居ないといけないと思うと最悪」
やっぱりロペス公爵家全体が絡んでいるんだ……。
「……兄さんはジュダ王子と恋仲だったのにどうして……」
「婚約者気取りのクソ女に嵌められて、僕は今や社交界でも笑いものだよ。ああ、思い出すだけでイライラしてきた」
後ろを歩いていた僕を、振り返ったアデレード兄さんが突然手で押してきた。よろけて尻もちをつくと兄さんが楽しそうにクスクスと笑う。
「お前が居なくなってから八つ当たりできる人間が居なくなって寂しかったんだよ」
「……変わらないね」
この人は本当に昔からなにも変わらない。
彼の美しさやハキハキとした物言いを羨ましいと思っていたこともあったけれど、今はなぜだかそうは思えない。
「お前は随分小綺麗になったものだね。上等な服に手入れされた肌。本当にムカつくよっ!」
「……っ……」
前髪を鷲掴みされて痛みに呻くと、アデレード兄さんは楽しげに笑い始めた。
まるで鬱憤を晴らすように僕に暴力を振るってくる彼は、なにかに追い詰められているようにも見える。
「リュカ様っ!!」
ラセットさんが僕を助けようと動くけれど、手を縛られた状態で男たちに捕らえられていてそれは叶わない。
「ねえ、リュカいいことを教えてあげる」
「……なに」
彼から聞かされるいいことが本当に良かったことなんて1度もない。
「お前はお父様の本当の子じゃないって知っていた?」
「……」
「その顔は知らなかったって顔だね。お前の本当の父親はアイザック=ロペス。お父様の実の兄だよ。平民出身のメイドと恋に落ちたけど、お前が腹に居ることすら知らずに流行病で簡単に死んじゃったんだって!あはっ、本当におかしい。お前を産んで母親も死んで、身寄りのないお前でもなにかの役に立つかもしれないって育ててやったのがお父様!そんなことも知らず、嫁がされるって決まった日に、愛はどこにあるのかなんて聞くんだものっ、ほんっっとうにおかしかったよ」
「……」
「あれれ~?悲しすぎて言葉も出ない??」
彼はきっと僕が悲しんでいると思っているし、僕の悲しむ顔を見たくてこんな話をしてきたのだと思う。
けれど、僕にとって今の話は本当にいいことだと思えた。
本当の親がもうどこにも居ないとわかってとても悲しいけれど、今までどうしてあんなにも冷たくされていたのか理由がはっきりとして、逆にスッキリとした気持ちになっていた。あんな人が本当の親じゃなくて良かったとも思った。
それに……
「悲しまないよ」
「はあ?」
「僕にはもう別の家族が居るから。今更そんなことを聞かされたって全然悲しくなんてない。それに貴方のことも、もう兄とは呼ばない」
「お前、なにを調子に乗ってるの!」
思い切り頬を打たれる。
髪を掴まれて何度も何度も顔を叩かれて、口の中が切れたのか血の味もしてくる。
外はすっかり暗くなっていて、ここがどこなのか見当もつかない。
降りるように促されて、通された場所は簡素だけれどしっかりと手入れの行き届いた貴族の別荘のような場所だった。
「さっさと歩いてよね」
「……ここはどこ」
「お父様が用意してくれた場所。迎えが来るまではこんな貧乏臭い場所に居ないといけないと思うと最悪」
やっぱりロペス公爵家全体が絡んでいるんだ……。
「……兄さんはジュダ王子と恋仲だったのにどうして……」
「婚約者気取りのクソ女に嵌められて、僕は今や社交界でも笑いものだよ。ああ、思い出すだけでイライラしてきた」
後ろを歩いていた僕を、振り返ったアデレード兄さんが突然手で押してきた。よろけて尻もちをつくと兄さんが楽しそうにクスクスと笑う。
「お前が居なくなってから八つ当たりできる人間が居なくなって寂しかったんだよ」
「……変わらないね」
この人は本当に昔からなにも変わらない。
彼の美しさやハキハキとした物言いを羨ましいと思っていたこともあったけれど、今はなぜだかそうは思えない。
「お前は随分小綺麗になったものだね。上等な服に手入れされた肌。本当にムカつくよっ!」
「……っ……」
前髪を鷲掴みされて痛みに呻くと、アデレード兄さんは楽しげに笑い始めた。
まるで鬱憤を晴らすように僕に暴力を振るってくる彼は、なにかに追い詰められているようにも見える。
「リュカ様っ!!」
ラセットさんが僕を助けようと動くけれど、手を縛られた状態で男たちに捕らえられていてそれは叶わない。
「ねえ、リュカいいことを教えてあげる」
「……なに」
彼から聞かされるいいことが本当に良かったことなんて1度もない。
「お前はお父様の本当の子じゃないって知っていた?」
「……」
「その顔は知らなかったって顔だね。お前の本当の父親はアイザック=ロペス。お父様の実の兄だよ。平民出身のメイドと恋に落ちたけど、お前が腹に居ることすら知らずに流行病で簡単に死んじゃったんだって!あはっ、本当におかしい。お前を産んで母親も死んで、身寄りのないお前でもなにかの役に立つかもしれないって育ててやったのがお父様!そんなことも知らず、嫁がされるって決まった日に、愛はどこにあるのかなんて聞くんだものっ、ほんっっとうにおかしかったよ」
「……」
「あれれ~?悲しすぎて言葉も出ない??」
彼はきっと僕が悲しんでいると思っているし、僕の悲しむ顔を見たくてこんな話をしてきたのだと思う。
けれど、僕にとって今の話は本当にいいことだと思えた。
本当の親がもうどこにも居ないとわかってとても悲しいけれど、今までどうしてあんなにも冷たくされていたのか理由がはっきりとして、逆にスッキリとした気持ちになっていた。あんな人が本当の親じゃなくて良かったとも思った。
それに……
「悲しまないよ」
「はあ?」
「僕にはもう別の家族が居るから。今更そんなことを聞かされたって全然悲しくなんてない。それに貴方のことも、もう兄とは呼ばない」
「お前、なにを調子に乗ってるの!」
思い切り頬を打たれる。
髪を掴まれて何度も何度も顔を叩かれて、口の中が切れたのか血の味もしてくる。
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