39 / 68
そんな時こそ
⑧
しおりを挟む
一頻り踊り終えた僕たちは、会場に居る数人の人達に声をかけられて、それに対応しながらパーティーを楽しんだ。
ジュディの姿はいつの間にか見えなくなっている。
しばらくして、エレノアも僕もすっかり疲れてしまい、そろそろ帰ろうかと決めて出口へと向かった。
会場から出て、中庭を通っていると女の子の泣く声が聞こえてきて、僕たちは顔を見合わせて、そちらへと足を進める。後ろ姿が見えて目を凝らすと、泣いている女の子の正体がジュディだということに気がついて、思わず足を止めた。
「……アレン……」
ジュディに寄り添うように彼女の涙を拭いてあげているアレン。エレノアがぽつりと彼の名前を呼ぶと、それが聞こえたのかアレンとジュディがこちらに顔を向けてくる。
「……なんの用だ」
「たまたま泣く声が聞こえてきたから来ただけよ。すぐに帰るわ」
対峙したエレノアがそう言って、ジュディの肩に回されているアレンの手をちらりと見る。
エレノアがそれを見て微かに傷付いたようにきゅっと唇を噛んだのがわかった。
僕はエレノアの肩を数回とんとんと指で小突くと、自分の後ろに居るように言ってアレンの前に出る。
「あんたが泣かせたって聞いた」
「彼女から?」
「……ああ。最低だな」
睨みつけてくる彼に僕は笑みを浮かべる。
「彼女からちゃんと詳細は聞いたの?君はあの場に居なかった?居たのならすべて見ていたはずだよね」
「っ、聞いたさ。だが、ジュディは場に不慣れなんだ。エレノアには悪いことをしたと思っているが、大事な恋人を傷つけられたことは許せない」
アレンがじっと僕のことを睨みつけてくる。
「……エレノアのこと嫌ってる訳ではないの?」
彼がエレノアに謝罪するとは思っていなかったから微かに驚く。
だからあえて尋ねてみる。
「……知らねえよ」
目を逸らした彼を見つめながら、二人の間にはなにかあるのかもしれないって思った。
「……アレン、私……」
「っ、とにかく、ジュディに謝ったらどうだ」
なにかを振り切るようにエレノアから目を逸らし、謝罪を求めてくるアレン。そんな彼に、ジュディがぎゅっと縋りついて、私は構いませんからってうるうると瞳を潤ませる。
それを黙って僕の後ろで見ていたエレノアは、泣きそうに震える声で言葉を発する。
「謝ることなんてないわ……」
呟かれた言葉を聞いたアレンがくっきりと眉間に皺を寄せる。
「お前はいつもそうだ。気が強くて、自分が一番正しいと思ってる!忘れてないだろうなっ、お前が先に俺のことを裏切ったんだからな」
「……っ……」
アレンの言葉にエレノアは口をはくはくさせてなにか言い返そうとするけれど、言葉は出てこないのか最後は唇を噛み締めながら俯いてしまった。
「……エレノア行こう。お義父様とお義母様が帰りを待っているよ」
また泣いてしまいそうなエレノアの手を引いて、2人に簡単なお辞儀だけしてその場を離れる。エレノアは隣を黙って着いてきてくれた。
ジュディの姿はいつの間にか見えなくなっている。
しばらくして、エレノアも僕もすっかり疲れてしまい、そろそろ帰ろうかと決めて出口へと向かった。
会場から出て、中庭を通っていると女の子の泣く声が聞こえてきて、僕たちは顔を見合わせて、そちらへと足を進める。後ろ姿が見えて目を凝らすと、泣いている女の子の正体がジュディだということに気がついて、思わず足を止めた。
「……アレン……」
ジュディに寄り添うように彼女の涙を拭いてあげているアレン。エレノアがぽつりと彼の名前を呼ぶと、それが聞こえたのかアレンとジュディがこちらに顔を向けてくる。
「……なんの用だ」
「たまたま泣く声が聞こえてきたから来ただけよ。すぐに帰るわ」
対峙したエレノアがそう言って、ジュディの肩に回されているアレンの手をちらりと見る。
エレノアがそれを見て微かに傷付いたようにきゅっと唇を噛んだのがわかった。
僕はエレノアの肩を数回とんとんと指で小突くと、自分の後ろに居るように言ってアレンの前に出る。
「あんたが泣かせたって聞いた」
「彼女から?」
「……ああ。最低だな」
睨みつけてくる彼に僕は笑みを浮かべる。
「彼女からちゃんと詳細は聞いたの?君はあの場に居なかった?居たのならすべて見ていたはずだよね」
「っ、聞いたさ。だが、ジュディは場に不慣れなんだ。エレノアには悪いことをしたと思っているが、大事な恋人を傷つけられたことは許せない」
アレンがじっと僕のことを睨みつけてくる。
「……エレノアのこと嫌ってる訳ではないの?」
彼がエレノアに謝罪するとは思っていなかったから微かに驚く。
だからあえて尋ねてみる。
「……知らねえよ」
目を逸らした彼を見つめながら、二人の間にはなにかあるのかもしれないって思った。
「……アレン、私……」
「っ、とにかく、ジュディに謝ったらどうだ」
なにかを振り切るようにエレノアから目を逸らし、謝罪を求めてくるアレン。そんな彼に、ジュディがぎゅっと縋りついて、私は構いませんからってうるうると瞳を潤ませる。
それを黙って僕の後ろで見ていたエレノアは、泣きそうに震える声で言葉を発する。
「謝ることなんてないわ……」
呟かれた言葉を聞いたアレンがくっきりと眉間に皺を寄せる。
「お前はいつもそうだ。気が強くて、自分が一番正しいと思ってる!忘れてないだろうなっ、お前が先に俺のことを裏切ったんだからな」
「……っ……」
アレンの言葉にエレノアは口をはくはくさせてなにか言い返そうとするけれど、言葉は出てこないのか最後は唇を噛み締めながら俯いてしまった。
「……エレノア行こう。お義父様とお義母様が帰りを待っているよ」
また泣いてしまいそうなエレノアの手を引いて、2人に簡単なお辞儀だけしてその場を離れる。エレノアは隣を黙って着いてきてくれた。
138
お気に入りに追加
3,359
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!
こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様
冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~
二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。
■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。
■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる