32 / 68
そんな時こそ
①
しおりを挟む
アデルバード様に1ヶ月は勉強をお休みするように言われて、僕はその期間なにをしようかと頭を悩ませていた。
「考え事かい?」
「あ…その…」
今はアデルバード様が使っている部屋にお邪魔させてもらっていて、ベッドに腰掛けて彼の膝の上で抱きしめられている状態だ。
助けて貰った日から、アデルバード様は度々この部屋に僕を連れてきてくれる。それから、一緒に眠って朝を迎えるということを繰り返していた。
自分の気持ちの名前が愛だと知ってから、なぜだか彼といるとむず痒いような、恥ずかしいような気持ちを感じてしまい、緊張してしまうようになった。顔もすぐに赤くなるし、少しだけ泣きたい気持ちにもなる。
抱きしめられている部分から温かな体温を感じると、その部分が酷く熱くなって、なにかが僕の中で頭をもたげるんだ。
それが怖くて、彼から逃げようと腰を浮かした。
「こら、また逃げようとして。悪い子だね」
「……っ、だって……」
「なーに?」
喉仏にキスをされて、そのくすぐったさに更に全身が熱を持った気がする。内側から、アデルバード様を酷く求めるような飢餓感が溢れてきて、自分が自分ではないような気にさせられる。
「……アデルバード様に触れてると……っ……なんだか変なんです」
「なにが変?」
「……身体の奥が……熱い、ん……っ」
話している途中でキスをされて、舌を絡められるとなにもかも白インクを撒き散らしたみたいに真っ白に染って、吹き飛んでしまう。
「舌を出してごらん」
「……っ……ぁ……」
言われた通り恥ずかしさを押し殺しながら微かに舌を前に突き出す。そうすると、アデルバード様が長い指で僕の舌を掴んで弄び始めた。
変な心地に眉を寄せると、彼の指が上顎を撫でてきて身体が跳ねる。彼とのキスでそこが僕の弱い所だと教え込まされたせいなのか、過剰に反応してしまうことに羞恥心が更に増す。
指を引き抜いた彼がもう一度唇を寄せてきた。舌同士を絡ませて息を奪い合うような荒々しい口付けをされる。鳴り響く水音と、かすかに漏れてしまう声を耳に入れながら必死に舌を絡める。
目を薄く開けると、楽しそうに細められた琥珀色の瞳が僕のことを見ていることに気がついて、思わずぎゅっと目を閉じた。
目が合ってしまったことで、彼から与えられる感覚がますますリアルに思えて感度が増す。
アデルバード様が唇を合わせながら、僕の着ているシャツの中に、熱を持った手を滑り込ませてくる。腰や脇腹を撫でられて背筋に痺れが走る。
「……アデルバード様っ」
なんだか未知の領域に足を踏み入れていくような感じがする。
獰猛さの垣間見える瞳から逃げるように、もう一度身体を後ろに引くと、アデルバード様はそれを利用してそのまま僕をベッドへと押し倒した。
柔らかなクッションが背中に当たる感触に、もう逃げられないと悟る。
「アデルバード様っ……」
彼から濃ゆく甘い香りが漏れていて、その匂いと熱に包まれると、自分の中に押しとどめている激情がこじ開けられていくような感覚に陥る。
大きな手が僕の脇腹からどんどんと上へ登っていき、指の腹が僕の胸の突起を掠めた時、ビクリと身体が大きく跳ねてやけに甘ったるい声が口から漏れた。
思わず両手で口を抑えると、僕を見ていたアデルバード様がふって微かに口角を上げて、その後に服の中からすんなりと手を抜いた。
そして、僕の上から退くと抱き起こして、何も無かったみたいにキスをしてくれる。
訳が分からなくて混乱していると、先程の獰猛さを引っ込めた彼は、冗談が過ぎたねって言って謝ってから頭を撫でてきた。
その先が無かったことに安堵したような、でも、寂しくもある複雑な気持ちが胸を覆う。だから、撫でられながら思わず、むうっと唇の先を尖らせた。
「どうしたんだい?」
僕の尖った唇を指でつついてくる彼に、自分でもよく分からないって答える。
「止めたから拗ねてるのかい?」
「! っ違います」
「リュカは可愛いね。こんなに可愛いリュカに手を出せないなんて辛いけれど、まだ婚姻していないから我慢するしかないな」
甘すぎる彼の雰囲気と言葉にかーっと顔が熱くなった。赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて彼の胸に自分から顔を埋める。
そっと抱きしめ返されて、彼がまた「可愛い」って囁きながら僕の背を撫でてくれた。
アデルバード様と婚姻したら、僕は彼に抱かれるのだ。
ただでさえ少しのスキンシップでいっぱいいっぱいなのに、この先に進んだら僕はおかしくなってしまうんじゃないだろうか。
そこまで考えて、アデルバード様におかしくさせられるなら良いかなって思ってしまった。自分の思考に更に羞恥心が増す。
「リュカは温かいな」
項辺りにキスを落としながらアデルバード様が呟く。息が首に当たって、くすぐったさに身悶える。そんな僕の反応が面白かったのか、またわざと息をかけられて、僕はまた身体を震わせてなんとも言えない感覚に晒された。
「……食べてしまいたくなるね」
「……え……っ……」
不穏な言葉を口にしたアデルバード様は僕が返事をする前に、かぷりと僕の首元に噛み付いて、ジュっと音がするくらい強くそこに吸い付いてきた。
「……ん゛……」
痛みに眉を寄せて呻くと、アデルバード様が首から顔を離して、痛くしてごめんって言いながら笑みを浮かべ、僕の唇にキスをしてきた。
恥ずかしがる僕にアデルバード様がもう一度キスをしようとした時、扉のノック音が聴こえてきて二人してぴたりと動きを止める。
「考え事かい?」
「あ…その…」
今はアデルバード様が使っている部屋にお邪魔させてもらっていて、ベッドに腰掛けて彼の膝の上で抱きしめられている状態だ。
助けて貰った日から、アデルバード様は度々この部屋に僕を連れてきてくれる。それから、一緒に眠って朝を迎えるということを繰り返していた。
自分の気持ちの名前が愛だと知ってから、なぜだか彼といるとむず痒いような、恥ずかしいような気持ちを感じてしまい、緊張してしまうようになった。顔もすぐに赤くなるし、少しだけ泣きたい気持ちにもなる。
抱きしめられている部分から温かな体温を感じると、その部分が酷く熱くなって、なにかが僕の中で頭をもたげるんだ。
それが怖くて、彼から逃げようと腰を浮かした。
「こら、また逃げようとして。悪い子だね」
「……っ、だって……」
「なーに?」
喉仏にキスをされて、そのくすぐったさに更に全身が熱を持った気がする。内側から、アデルバード様を酷く求めるような飢餓感が溢れてきて、自分が自分ではないような気にさせられる。
「……アデルバード様に触れてると……っ……なんだか変なんです」
「なにが変?」
「……身体の奥が……熱い、ん……っ」
話している途中でキスをされて、舌を絡められるとなにもかも白インクを撒き散らしたみたいに真っ白に染って、吹き飛んでしまう。
「舌を出してごらん」
「……っ……ぁ……」
言われた通り恥ずかしさを押し殺しながら微かに舌を前に突き出す。そうすると、アデルバード様が長い指で僕の舌を掴んで弄び始めた。
変な心地に眉を寄せると、彼の指が上顎を撫でてきて身体が跳ねる。彼とのキスでそこが僕の弱い所だと教え込まされたせいなのか、過剰に反応してしまうことに羞恥心が更に増す。
指を引き抜いた彼がもう一度唇を寄せてきた。舌同士を絡ませて息を奪い合うような荒々しい口付けをされる。鳴り響く水音と、かすかに漏れてしまう声を耳に入れながら必死に舌を絡める。
目を薄く開けると、楽しそうに細められた琥珀色の瞳が僕のことを見ていることに気がついて、思わずぎゅっと目を閉じた。
目が合ってしまったことで、彼から与えられる感覚がますますリアルに思えて感度が増す。
アデルバード様が唇を合わせながら、僕の着ているシャツの中に、熱を持った手を滑り込ませてくる。腰や脇腹を撫でられて背筋に痺れが走る。
「……アデルバード様っ」
なんだか未知の領域に足を踏み入れていくような感じがする。
獰猛さの垣間見える瞳から逃げるように、もう一度身体を後ろに引くと、アデルバード様はそれを利用してそのまま僕をベッドへと押し倒した。
柔らかなクッションが背中に当たる感触に、もう逃げられないと悟る。
「アデルバード様っ……」
彼から濃ゆく甘い香りが漏れていて、その匂いと熱に包まれると、自分の中に押しとどめている激情がこじ開けられていくような感覚に陥る。
大きな手が僕の脇腹からどんどんと上へ登っていき、指の腹が僕の胸の突起を掠めた時、ビクリと身体が大きく跳ねてやけに甘ったるい声が口から漏れた。
思わず両手で口を抑えると、僕を見ていたアデルバード様がふって微かに口角を上げて、その後に服の中からすんなりと手を抜いた。
そして、僕の上から退くと抱き起こして、何も無かったみたいにキスをしてくれる。
訳が分からなくて混乱していると、先程の獰猛さを引っ込めた彼は、冗談が過ぎたねって言って謝ってから頭を撫でてきた。
その先が無かったことに安堵したような、でも、寂しくもある複雑な気持ちが胸を覆う。だから、撫でられながら思わず、むうっと唇の先を尖らせた。
「どうしたんだい?」
僕の尖った唇を指でつついてくる彼に、自分でもよく分からないって答える。
「止めたから拗ねてるのかい?」
「! っ違います」
「リュカは可愛いね。こんなに可愛いリュカに手を出せないなんて辛いけれど、まだ婚姻していないから我慢するしかないな」
甘すぎる彼の雰囲気と言葉にかーっと顔が熱くなった。赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて彼の胸に自分から顔を埋める。
そっと抱きしめ返されて、彼がまた「可愛い」って囁きながら僕の背を撫でてくれた。
アデルバード様と婚姻したら、僕は彼に抱かれるのだ。
ただでさえ少しのスキンシップでいっぱいいっぱいなのに、この先に進んだら僕はおかしくなってしまうんじゃないだろうか。
そこまで考えて、アデルバード様におかしくさせられるなら良いかなって思ってしまった。自分の思考に更に羞恥心が増す。
「リュカは温かいな」
項辺りにキスを落としながらアデルバード様が呟く。息が首に当たって、くすぐったさに身悶える。そんな僕の反応が面白かったのか、またわざと息をかけられて、僕はまた身体を震わせてなんとも言えない感覚に晒された。
「……食べてしまいたくなるね」
「……え……っ……」
不穏な言葉を口にしたアデルバード様は僕が返事をする前に、かぷりと僕の首元に噛み付いて、ジュっと音がするくらい強くそこに吸い付いてきた。
「……ん゛……」
痛みに眉を寄せて呻くと、アデルバード様が首から顔を離して、痛くしてごめんって言いながら笑みを浮かべ、僕の唇にキスをしてきた。
恥ずかしがる僕にアデルバード様がもう一度キスをしようとした時、扉のノック音が聴こえてきて二人してぴたりと動きを止める。
148
お気に入りに追加
3,357
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!
こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる