21 / 68
僕の家族
②
しおりを挟む
穏やかな沈黙が僕たちの間を支配していた。
お互いなにかを話すでもなく、ただぼーっと流れる景色を見つめ続ける。
どのくらい経ったのか曖昧になり始めた頃、ようやく目的の場所である、エーデルシュタイン公爵の邸が見えてきた。穏やかだった心がざわつき始め、緊張が全身を支配する。
「大丈夫」
アデルバード様が僕の手に自分の手を添えて、視線を合わせながら励ましてくれるから、弱気になっている心を奮い立たせて、目の前に聳え立つ大きな邸を見返した。
馬車が止まると、エスコートされる形で馬車から降り、門の前で僕達を出迎えてくれたメイドさんに案内され、邸へと向かった。
「本当にお兄様がお越しになられたわっ!!」
美しく手入れされた中庭を歩きながら、咲き誇る花々を見て心を落ち着かせていると、邸の方から小さな影がこちらへと走り寄って来るのがわかった。立ち止まり、影がこちらに辿り着くのを待つ。
徐々に近づいてくると、それが14歳くらいの女の子だとわかる。
「エマっ!!その方がお義兄様!?」
女の子が、メイドさんへと声をかけた。
「お嬢様、皇帝陛下の御前ではしたないですよ」
「あらっ、私ったら。我らが太陽で在らせられる皇帝陛下に、エレノア=エーデルシュタインがご挨拶申し上げますわ」
先程の慌ただしさはなりを潜めて、華やかなピンクのドレスの端を持ち美しいカーテシーをした彼女に目を奪われた。明るいブロンドの髪にヴァイオレットのこぼれそうな程に大きな丸い瞳と、眩しいほどに整った顔つき。真っ白で透けるような肌に、
華奢な見た目は見る者の庇護欲をそそるのに、先程の元気な姿が印象に残っているからなのか、とても勝気な子に思えた。
「エレノア、紹介させてくれ。リュカだ」
「存じ上げておりますわ。だって私のお義兄様になる方ですもの!」
エレノアさんに手を取られて、ぐいぐいと邸の方に連れていかれる。視線でアデルバード様に助けを求めると、行っておいでと口パクで言われて、おずおずと彼女に引っ張られながら邸の方へ一緒に向かった。
お互いなにかを話すでもなく、ただぼーっと流れる景色を見つめ続ける。
どのくらい経ったのか曖昧になり始めた頃、ようやく目的の場所である、エーデルシュタイン公爵の邸が見えてきた。穏やかだった心がざわつき始め、緊張が全身を支配する。
「大丈夫」
アデルバード様が僕の手に自分の手を添えて、視線を合わせながら励ましてくれるから、弱気になっている心を奮い立たせて、目の前に聳え立つ大きな邸を見返した。
馬車が止まると、エスコートされる形で馬車から降り、門の前で僕達を出迎えてくれたメイドさんに案内され、邸へと向かった。
「本当にお兄様がお越しになられたわっ!!」
美しく手入れされた中庭を歩きながら、咲き誇る花々を見て心を落ち着かせていると、邸の方から小さな影がこちらへと走り寄って来るのがわかった。立ち止まり、影がこちらに辿り着くのを待つ。
徐々に近づいてくると、それが14歳くらいの女の子だとわかる。
「エマっ!!その方がお義兄様!?」
女の子が、メイドさんへと声をかけた。
「お嬢様、皇帝陛下の御前ではしたないですよ」
「あらっ、私ったら。我らが太陽で在らせられる皇帝陛下に、エレノア=エーデルシュタインがご挨拶申し上げますわ」
先程の慌ただしさはなりを潜めて、華やかなピンクのドレスの端を持ち美しいカーテシーをした彼女に目を奪われた。明るいブロンドの髪にヴァイオレットのこぼれそうな程に大きな丸い瞳と、眩しいほどに整った顔つき。真っ白で透けるような肌に、
華奢な見た目は見る者の庇護欲をそそるのに、先程の元気な姿が印象に残っているからなのか、とても勝気な子に思えた。
「エレノア、紹介させてくれ。リュカだ」
「存じ上げておりますわ。だって私のお義兄様になる方ですもの!」
エレノアさんに手を取られて、ぐいぐいと邸の方に連れていかれる。視線でアデルバード様に助けを求めると、行っておいでと口パクで言われて、おずおずと彼女に引っ張られながら邸の方へ一緒に向かった。
143
お気に入りに追加
3,357
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!
こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる