身代わりの花は甘やかに溶かされる

天宮叶

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僕の家族

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家族について話した数日後に、アデルバード様と共に家族になってくれると言ってくれている人達の元に会いに行くことになった。

顔を合わせるのは緊張するし、受け入れられなかったらまた怖い思いをするんじゃないかって不安だけど、アデルバード様が守るって言って背中を押してくれたから、震える体を引きずってなんとか馬車に乗り込んだ。

前にも乗ったことのある豪華な馬車。この国に来たときは未来を想像して、不安な気持ちのまま独り、この広い馬車に座っていた。けれど、今日はアデルバード様も一緒だから安心する。

「リュカ、外を見てご覧」

アデルバード様に言われるままに窓の外を見ると、お店がいくつも並んだ大きな通りに人がひしめき合っているのが見えた。この国独特の衣装を着ている彼らの行き交うそこは活気があってとても楽しそうに思える。

「彼等は皆、私の民なんだよ。彼等を守ることが私の仕事だ」
「……どれだけ大変なことなのか僕には想像も出来ません。なにかお手伝い出来たらいいのに……」
「私と結婚すれば、彼等はリュカの守るべき民になる。彼等を守るためにも、もっと逞しくならないといけないな」

うっすらと笑みを浮かべるアデルバード様に、僕は頷き返すことが出来なかった。誰かを助けたり守ったりする立場になることが上手く想像出来なかったから。

アデルバード様は皇帝陛下だから、彼に嫁ぐということは皇后陛下になるということなんだ。それを思うと、僕では到底そんな立場にはなれない気がした。守られてばかりの僕では、このまま彼に嫁いだとしても、きっと足を引っ張るだけだ。

「そうだ、リュカはなにか欲しい物はないのかい?」
「欲しいものですか?」
「新しい衣装でも宝石でもなんでもいいから言ってごらん」
「今与えてもらっているもので充分です……」
「私がなにかしてあげたいんだよ。大事な花人を飾りたいと思うのは天人の性さがのようなものだから気にすることはないよ」

そう言って真っ直ぐに僕のことを見つめてくるアデルバード様に、要らないとはもう言えなくて、頭の中で欲しいものを絞り出してみた。

「……星が欲しい……」

僕だけの一番星、そして、僕を愛してくれる星。
アデルバード様はきっとその星だ。
僕は彼が欲しい。

彼さえ傍にいてくれればそれでいいとすら思う。アデルバード様の綺麗な銀の髪も宝石みたいな瞳も、彼の心すら、全部全部僕だけの宝物に出来たらどんなに幸せなことだろう。

「うーん……流石に空を飛んで星を持ってくることは出来ないな」
「……そう、ですね」

困ったように笑う彼に僕も苦笑いを漏らす。
本物の星じゃなくて、貴方が欲しいんです。なんて言えるわけない。彼は充分過ぎるほど僕に寄り添ってくれているから。

それなのに欲張りな僕はもっと、もっとって彼を求めてしまうんだ。
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