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離したくない
②〜アデルバード視点〜
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手に持っていた書類を乱雑に卓上に投げると、手帳に今後の予定を書き込んでいるルートヴィヒに視線を向けた。
「リュカのことでなにか進展は?」
「こちらに資料が。どうやら彼は出生届けが出されていないようなのです」
「確かライヒトゥムでは花人が産まれた際は必ず国に報告する義務があるのではなかったか? あの国は子供が少ない上に、花人の人身売買が横行していた時期があったからな」
「ええ……見事に今まで隠していたようですね。世間では美しい一人息子を溺愛する優秀な公爵として有名ですから」
思わず鼻で笑ってしまう。手紙の内容を再び確認すれば、呆れと怒りにも似た感情が湧き出てくる。
リュカを守るためにも婚姻を急がなければならないとは分かっている。そのためにもリュカには本殿に移って貰い、私の近くにいて欲しかったのだが……。やはり私が離宮に移り住むしかなさそうだと考えを巡らせた。
手紙の差出人はロペス公爵。
中には、本物のアデレードを渡す代わりにリュカを返せという内容が、それはそれは丁寧に長々と遠回しに書かれてあった。
調べによれば、ご自慢の一人息子が婚約者のいる王子と婚礼前に契りを交わそうとしてしまったらしく大変な騒動になったらしい。
婚約者であった伯爵家のご令嬢が、王子へ婚約破棄を言い渡したそうだ。王子は婚約破棄はしたくないとご令嬢に謝罪し、あっさりとアデレードを捨てたとか。
勿論責任を取らされたロペス公爵家は領地の1部を没収され、アデレード自身は事の重大さを全くと言っていい程分かっておらず、その後も王子をおいかけてやりたい放題の末、尻拭いに奔走していた公爵
家は信用を失い首が回らなくなって来ているようだ。そこで、高位貴族のオールド家に支援を頼む代わりにリュカを嫁がせようと考えた……と。
本物を差し出せば私がよろこんで飛びつくとでも思ったのだろうな。
「本当にいい度胸をしている」
ぐしゃりと手の中の手紙を握り潰すと、無造作にテーブルの上に転がした。
オールド家の当主といえば異常性癖の持ち主で有名な人物だ。歳は50歳をとうに超えており、噂では娶った妻が何人も暴行された末に亡くなっていると耳にしたこともある。
そんな人間に実の息子を送り出そうとする親の気持ちなど理解したくもない。同時に、リュカをそんな人物の所にやろうとしていることにありえないほどの怒りを感じていた。
侮られたものだと薄ら笑って、ルートヴィヒに隣国の国王に手紙を送るように指示を出した。
内容は勿論抗議文であの腹立たしい公爵家を更に窮地に追いやるくらい簡単なことだ。
「そうだルートヴィヒ、養子の件はどうだ。良さそうな家はあったか」
「はい。こちらにリストが在りますので陛下が直接お選びください」
受け取ると少しだけ気分を良くして、ざっと内容に目を通した。
「リュカのことでなにか進展は?」
「こちらに資料が。どうやら彼は出生届けが出されていないようなのです」
「確かライヒトゥムでは花人が産まれた際は必ず国に報告する義務があるのではなかったか? あの国は子供が少ない上に、花人の人身売買が横行していた時期があったからな」
「ええ……見事に今まで隠していたようですね。世間では美しい一人息子を溺愛する優秀な公爵として有名ですから」
思わず鼻で笑ってしまう。手紙の内容を再び確認すれば、呆れと怒りにも似た感情が湧き出てくる。
リュカを守るためにも婚姻を急がなければならないとは分かっている。そのためにもリュカには本殿に移って貰い、私の近くにいて欲しかったのだが……。やはり私が離宮に移り住むしかなさそうだと考えを巡らせた。
手紙の差出人はロペス公爵。
中には、本物のアデレードを渡す代わりにリュカを返せという内容が、それはそれは丁寧に長々と遠回しに書かれてあった。
調べによれば、ご自慢の一人息子が婚約者のいる王子と婚礼前に契りを交わそうとしてしまったらしく大変な騒動になったらしい。
婚約者であった伯爵家のご令嬢が、王子へ婚約破棄を言い渡したそうだ。王子は婚約破棄はしたくないとご令嬢に謝罪し、あっさりとアデレードを捨てたとか。
勿論責任を取らされたロペス公爵家は領地の1部を没収され、アデレード自身は事の重大さを全くと言っていい程分かっておらず、その後も王子をおいかけてやりたい放題の末、尻拭いに奔走していた公爵
家は信用を失い首が回らなくなって来ているようだ。そこで、高位貴族のオールド家に支援を頼む代わりにリュカを嫁がせようと考えた……と。
本物を差し出せば私がよろこんで飛びつくとでも思ったのだろうな。
「本当にいい度胸をしている」
ぐしゃりと手の中の手紙を握り潰すと、無造作にテーブルの上に転がした。
オールド家の当主といえば異常性癖の持ち主で有名な人物だ。歳は50歳をとうに超えており、噂では娶った妻が何人も暴行された末に亡くなっていると耳にしたこともある。
そんな人間に実の息子を送り出そうとする親の気持ちなど理解したくもない。同時に、リュカをそんな人物の所にやろうとしていることにありえないほどの怒りを感じていた。
侮られたものだと薄ら笑って、ルートヴィヒに隣国の国王に手紙を送るように指示を出した。
内容は勿論抗議文であの腹立たしい公爵家を更に窮地に追いやるくらい簡単なことだ。
「そうだルートヴィヒ、養子の件はどうだ。良さそうな家はあったか」
「はい。こちらにリストが在りますので陛下が直接お選びください」
受け取ると少しだけ気分を良くして、ざっと内容に目を通した。
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