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幸せの在り方
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話を終えてラルと2人部屋を出ると、ラルはオスマン様に会いに行くからと僕とは逆方向へと歩みを進めた。
その後ろ姿にもう一度心の中で別れを告げて、僕も彼女に背を向けて歩き出す。
「エスメラルダ様」
「ダリウスさん」
目の前から歩いてきたダリウスさんが僕の姿を見て声をかけてくれた。
立ち止まると彼を真っ直ぐに見上げて、お疲れ様ですって挨拶をする。
「火傷の跡は本当に消えてしまったのですね」
「……ええ。これで良かったのか僕にはまだ分かりません」
「……私はそれで良かったのだと思います。貴方には明るい道が似合うと思うから」
ダリウスさんは前みたいに口元に浅く笑みを浮かべながらそう答えてくれた。
「ありがとうございます」
それに返す言葉を僕はこれしか思い浮かばない。
そんな僕の手を取ってダリウスさんが僕の目の前に片足を上げて跪く。
「御婚約を心からお喜び申し上げます。ずっと伝えられずに居ましたが、ようやく決心がつきました」
「……ダリウスさん」
「これからは貴方のことも私に守らせて欲しいのです。どうか私にお二人の未来を導く手助けをさせて欲しい」
「……ぼ、僕……」
好きだったのだと彼は前に僕に伝えてくれた。
その想いが彼にまだ残っていたとしても、僕はそれに応えることは出来ない。
だから、僕は笑みを浮かべた。
「よろしくお願いします」
そうして、僕の手を取る彼の手に自身のもう片方の手を重ねる。
そんな僕の手に彼が忠誠の口付けを落とす。
あの日、起こった悲劇を忘れることはないのだと思う。
きっとそれはダリウスさんも同じだ。
火傷が消えてしまった様に、過去の傷が消えてしまうことはないけれど、少しずつ縫い合わせるようにあの日のことを過去のことだと思える日が来たら本当の意味でダリウスさんと笑い合える日が来るのだろうか。
未来のことは分からないけれど、今僕が伝えられる精一杯を彼にあげたいと思った。
「ねえ、ダリウスさん。あの日、クッキーをくれてありがとう。あの時は食べることが出来なかったけれどいつかまた食べさせて欲しいな」
「っ……ええ、勿論です」
「それから……」
跪く彼の前に僕も膝を着いて、視線を合わせると彼の瞳を真っ直ぐに見返す。
「僕のことを好きになってくれてありがとう。貴方のその心を間違いだなんて思わないで欲しい。ずっと伝えられなくてごめんなさい」
ダリウスさんの瞳が揺れて、一筋目尻から涙が溢れ落ちる。
その涙を拭うことは僕には出来なかった。
その後ろ姿にもう一度心の中で別れを告げて、僕も彼女に背を向けて歩き出す。
「エスメラルダ様」
「ダリウスさん」
目の前から歩いてきたダリウスさんが僕の姿を見て声をかけてくれた。
立ち止まると彼を真っ直ぐに見上げて、お疲れ様ですって挨拶をする。
「火傷の跡は本当に消えてしまったのですね」
「……ええ。これで良かったのか僕にはまだ分かりません」
「……私はそれで良かったのだと思います。貴方には明るい道が似合うと思うから」
ダリウスさんは前みたいに口元に浅く笑みを浮かべながらそう答えてくれた。
「ありがとうございます」
それに返す言葉を僕はこれしか思い浮かばない。
そんな僕の手を取ってダリウスさんが僕の目の前に片足を上げて跪く。
「御婚約を心からお喜び申し上げます。ずっと伝えられずに居ましたが、ようやく決心がつきました」
「……ダリウスさん」
「これからは貴方のことも私に守らせて欲しいのです。どうか私にお二人の未来を導く手助けをさせて欲しい」
「……ぼ、僕……」
好きだったのだと彼は前に僕に伝えてくれた。
その想いが彼にまだ残っていたとしても、僕はそれに応えることは出来ない。
だから、僕は笑みを浮かべた。
「よろしくお願いします」
そうして、僕の手を取る彼の手に自身のもう片方の手を重ねる。
そんな僕の手に彼が忠誠の口付けを落とす。
あの日、起こった悲劇を忘れることはないのだと思う。
きっとそれはダリウスさんも同じだ。
火傷が消えてしまった様に、過去の傷が消えてしまうことはないけれど、少しずつ縫い合わせるようにあの日のことを過去のことだと思える日が来たら本当の意味でダリウスさんと笑い合える日が来るのだろうか。
未来のことは分からないけれど、今僕が伝えられる精一杯を彼にあげたいと思った。
「ねえ、ダリウスさん。あの日、クッキーをくれてありがとう。あの時は食べることが出来なかったけれどいつかまた食べさせて欲しいな」
「っ……ええ、勿論です」
「それから……」
跪く彼の前に僕も膝を着いて、視線を合わせると彼の瞳を真っ直ぐに見返す。
「僕のことを好きになってくれてありがとう。貴方のその心を間違いだなんて思わないで欲しい。ずっと伝えられなくてごめんなさい」
ダリウスさんの瞳が揺れて、一筋目尻から涙が溢れ落ちる。
その涙を拭うことは僕には出来なかった。
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